従業員の心と身体の“健康”を重要な経営資源として捉え、その増進に全社的に取り組む「ウェルネス経営」。まだ多くの人が聞き慣れないであろうこの経営スタイルを、大手企業を巻き込みながら推進しているのが、創業からわずか3年のベンチャー企業であるFiNCだ。10月8日には、ソフトバンクやANA、ネスレ日本、みずほ証券など発起人20社で、「ウェルネス経営協議会」を12月に発足することも発表した。
FiNCでは、遺伝子検査や血液検査、生活習慣アンケートなどを分析して、最適なダイエットプランを提案してくれるスマートフォン向けのサービス「FiNCダイエット家庭教師」を提供している。料金は60日間で約10万円と高額ではあるが、専門家によるマンツーマンのサポートが受けられたり、体質に合わせたパーソナルサプリメントが届いたりと、その内容は一般的なヘルスケアサービスとは一線を画している。
それもそのはず。同社の代表取締役社長CEOである溝口勇児氏は、高校在学中からスポーツクラブのトレーナーとして、プロ野球選手やプロバスケットボール選手など数百人のトップアスリートの体づくりに携わってきた、体質改善のプロだからだ。自身の経験から高品質なサービスにこだわってきた溝口氏は、FiNCのソリューションやウェルネス経営によって、どのような世界を描いているのだろうか。
想定以上だと思います。プロダクトもそうですが、何より自分が想像していた仲間の形とはまったく違っています。これだけ社内でも社外でも、優秀かつ実績豊富な人間が自分の周りを固めてくれているイメージはなかったので、そういう意味で想定以上だなと。創業から言っていることは変わっていませんが、それに対する実現可能性というか、やれるだろうなという感情は日増しに高まっていますね。
ユーザーは、いまは個人と法人で半々くらいですが、これからは法人が逆転していくと思います。法人のニーズとしては、従業員が健康になることで生産性や企業イメージが上がるなど、従業員の帰属意識を高めることを目的に導入されているところが多いように感じます。一方、個人の方はコンプレックスを解消したいという方と、より若々しくいたいとか、かっこ良くありたいとか、自分を磨きたいという方がいて、そこは割と両極端ですね。
僕はゴールから逆算するという考え方をしていて、自分の感情で人は選びません。イエスマンを近くに置いたほうが、自分の感情としてはやりやすいかもしれませんし、ストレスも感じないでしょう。ただ、それではとてもゴールには近づかない。ゴールから逆算したときに、その人物がいることといないことで、どちらが実現可能性が上がるかということですね。
特に幹部やアドバイザーについては、自分が到達したいとか叶えたいと思っている世界を知っている人であることが、重要だと思っています。世の中のルールを変えた経験があるとか、兆単位の時価総額の会社でトップマネジメントを経験していたりとか、そういったいろいろな世界をみてきた人というのは、1つの基準です。
彼らとのコミュニケーションですが、僕は誰に対しても遠慮がない性格なので、立場が下でも上でもコミュニケーションの形は変わらないですね。分からないことははっきり「分からない」と言いますし、納得できないことは「納得できない」と言うようにしています。ただ一方で、彼らは僕よりも広い視点で物事を見ている可能性もあるので、どこかで自分自身の価値観が凝り固まっていて、間違ってるんじゃないかと思うようにはしています。
リンクアンドモチベーションさんは、FiNCのソリューションによって平均で2キロ痩せたと聞きました。痩せたいと思った人だけに絞ったのではなく、全社員でそういう結果になっていますので、効果は非常に大きいと思っています。日本交通さんでは、健康診断に引っかかった人たちを対象に取り組みましたが、30人のうち1人を除いて、全員に大きな効果が出たという報告はいただいています。
まずは、先行して導入していただいている企業を大切にして、サービスを改善しながら8~9月くらいから(ウェルネス経営の)普及に努めてきたのですが、私たちは自社で営業チームを持っているわけではありませんので、リンクアンドモチベーションさんなどパートナーの方たちに広げていただいているフェーズです。結構、上手くいきそうな感じはありますね。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」