2014年5月、ソニーがPC事業を日本産業パートナーズ(JIP)に譲渡すると発表したことは記憶に新しい。その2カ月後の7月1日に始動した新会社「VAIO株式会社」が1周年を迎えた。
VAIOは8月19日、新社長の就任会見を開き、1年の振り返りと今後の戦略について説明した。
VAIOは6月に経営体制の変更を発表。商社出身の大田義実氏が代表取締役および執行役員社長に就任している。なお、前代表取締役社長の関取高行氏は取締役副会長だ。
大田義実氏は、自身の就任の経緯について「大学卒業後、30年に渡り商社勤めをしてきた。エネルギー関係、リテール関係、光関係の営業、融資、財務、経営企画を経験した。海外は、オーストラリアに5年半いた。ブラジルの社長や中国地区の総代表を務めた経験も持つ。会社を辞めて外に出たいという気持ちがあり、VAIOが3社目。どの場合も株主からスカウトされている。今回も同じ」と説明した。
また、経営方針については「私がモットーとする会社経営はシンプルで、いいものを伸ばし、悪いものを直す。VAIOはいい点も悪い点もはっきりしているから再建できると確信した。ソニー時代から培った高い技術力とブランド力があって、注目の高い会社。やりがいを感じた」と語る。
大田氏はこの1年のVAIOを振り返り、「1年目はゼロからの創業など会社の外枠、インフラ作りに費やしてきた。商品ラインアップも技術を結集し、3つのラインをそろえた。これからの1年は、それをもとに会社の中身=稼ぐ力を作って行く。2016年以降に飛躍をしていきたい」と語った。
VAIOの強みは、(1)設計と製造技術(2)経験豊かな人材(3)ブランド──の3つだと大田氏は分析する。
2015年、実現しなければならないのは「自立と発展」とし、3つの強みを生かして事業を伸ばしていくとした。
ここでいう自立とは、「VAIO 1社の意志で、設計/製造から販売、サポートまで一気通貫した体制を持ち、継続的に利益を上げていくこと」という。
この自立に向けて、体制を整えるとともに収益責任を持つ組織へ移行し、社員一人一人の意識改革が必要だと説明した。
ソニー時代から続く“モノ作り機能”は持っていたものの、販売はソニーマーケティングが行っていた。「これではいけない。自立のために自分で販売までやらなければならない」として、新たに自前の営業部を設立した。
「大企業の一事業部門であったという意識を捨てて、コミットメントを持っていかないと会社の自立・発展はない」とし、従来の設計、製造、品証を行う「商品ユニット制」に、売上げ責任と設計の技術者を「技術営業部隊」として営業現場に加え、さらに売上げ責任を持たせた「ビジネスユニット制」に変えていくとした。
技術部隊は、長野県の安曇野にある事業所で開発をしている。技術営業部の体制について「安曇野から常駐を数名送り、そのほかイベントがある時やお客様のアポイントがあるたびに安曇野から(東京などに)呼ぶ。自分の作ったモノがどうして売れないのか、どう売れているのかを技術者に知ってもらうこと。それによってお客様の声を聞き、何が悪かったのか。それを次の商品企画に生かせる。(このプランを)設計者に声を掛けたら多数手があがった。非常に嬉しく思っている」と語った。
なお、商品力と販売力を強化し、PCにおいてはむやみに規模を追わない方針だ。「PCは、生産性・創造性を高める最高の道具。競争が厳しいゾーンでわれわれは戦わない。従って数の追求はしない。得意なゾーンで戦っていく」と大田氏は明言した。
PC事業は今後伸びるかといえば「そうは考えていない」とし、今後の大きな成長が望めない今、会社の存続とリスク分散のためにPC以外の柱を作る必要があると説明する。PC以外の事業を“新規事業”と位置付け、2017年にはPC事業と新規事業の割合を1対1にしていく方針だ。
現在、安曇野の工場には、ソニー時代に安曇野でAIBOを作った人や製造設備も残っており、その技術を生かした受託製造を行っているという。ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)、ゲーム、IoTなどを手がけており、その中から新規事業の芽を見付けて育てて行くと説明する。
安曇野で受託製造している例として、富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi」を挙げ、「Palmiが成功したので次の協働について話が始まっている」と明かした。
また同日、9月よりPC事業で海外に進出することを発表した。第1弾として選んだのは、米国とブラジルだ。これまでは国内市場向けのPCビジネスのみに専念してきたが今後は海外も視野に入れ、さらなる事業の拡大を目指す。
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