スマートフォンネイティブが見ている世界

知りたいことはすべて「検索」--知らないことが怖い子どもたち - (page 2)

知らない場所は「怖いから行かない」

 高校一年生女子のB音は、初めて行く場所については必ず念入りに検索しないと気が済まないという。「心配性なのですべて把握しておきたい。トイレとかランチできる場所とかコンビニの場所とか」。そんなB音は、外出する時はいつもあれこれ持参するので大荷物になってしまうという。

 場所だけでなく、初めてすることについても徹底的に検索して、口コミサイトやブログ、Twitterなどで情報を集める。「情報が足りなくて不安な時には、心配だから行かない。新しいことは別にやらなくてもいい」。

 B音は、事故や突然のハプニングなどで予定通りに行かないとパニックになってしまうそうだ。「この間は工事でバス停の場所が移動していて、本当にどうしようかと思った。ネットで検索してもすぐに見つからなくて叫びそうだった。怖いので、いつでもスマホは手放せない。調べたり聞いたりできなくなったら何もできないと思う」。

インターネットは「情報源として欠かせない」

 新聞通信調査会の「第7回 メディアに関する全国世論調査」(2014年)によると、「情報源として欠かせないメディアは」という問いに対して、「インターネット」と答えた割合は、18~19歳は71.8%、20代は75.2%、30代は68.5%と、若い層で極めて高かった。

 一方で「情報が信頼できるメディアは」という問いに対しては、10代でNHKテレビが59.0%、新聞が39.7%、民放テレビが24.4%、インターネットが20.5%となっていた。10代にとってインターネットは、内心では「信頼できない」という思いがあるものの、情報源として欠かせないメディアとなっているのだ。


「情報源として欠かせない」とした人の割合

 中学2年男子C則はWikipediaを愛読している。Wikipediaに書かれていることは大部分を信じているようで、話の中に「Wikipediaでは」という言葉が頻繁に登場する。

 私が「Wikipediaの信頼性は研究対象にもなっているけれど、誰でも編集できるから、考えが偏っていることや間違いが記述されることも多い。参考になることも多いけれど、情報のソースとしては信頼性が足りない」というと、「でも、世間に隠されている情報が得られることも多い。Wikipediaでは情報源があるものじゃなきゃ認められないはずだし、まったく根拠がなかったらそもそも載らないと思う」と答えていた。

 「100%信頼できるわけではない」とは思いつつ、知りたい時にはインターネットに頼る。さらに、検索結果についてはほぼ信頼してしまっているというのが実際のところのようだ。

ネットでは得られない情報は多い

 中高生たちは、どんなことでもスマホで手に入ると考えているかのような節がある。さらに、いつも手にしているスマホで検索すれば大まかな情報が手に入るので、情報で武装していないと不安に思うようだ。

 しかし、実際はスマホや検索で入手できる情報はまだまだ限られており、リアルでしか得られない情報は多い。情報が古くなっていたり、そもそもインターネットには出ていない情報であることも多いのだ。

 たとえば友人に関する情報は、ネットではなく、直接話をして得るべきだ。ネットによって情報にアクセスしやすくなったことは確かだが、今後も、あらゆることがネット上で把握できるようになることはないだろう。

 スマホを通してのみ世界に接しているとたどり着けない情報は多い。時にはスマホを置いて、自分で飛び込んで調べてみる、質問して話を聞いてみることが大切ではないだろうか。特に中高生には、体験を通して学んだり、感じたりすることを大切にしてほしいと願う。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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