4月7~8日に新経済連盟の主催で開催された「新経済サミット2015」。第1日目の「世界を担う日本発のIoT グローバルマーケットで日本企業はどのように戦うのか。」と題したセッションには、注目を集めるハードウェアベンチャー企業3社の経営者と、IoT(モノのインターネット)に関する政策を検討している経産省と総務省の担当者が登壇した。モデレーターは、ABBALabの最高経営責任者(CEO)である小笠原治氏が務めた。
ネットワークに接続するモノが爆発的に増え、それを利活用するサービスの範囲が広がろうとする中で、グローバルマーケットで日本企業はどのように戦うのか議論を繰り広げた。
このセッションには、先進的なモノ作りで注目を集めるハードウェアベンチャーの3人の若手経営者が登壇した。
Cerevoは、スマートフォンから制御できる電源タップ「OTTO」などユニークな家電製品をグローバルに販売しているメーカーで、パナソニックの元エンジニアである岩佐琢磨氏が代表取締役を務める。
イクシーのCEOで共同創業者である近藤玄大氏は、ソニーの元エンジニアで、高いデザイン性をそなえ低コストな筋電義手「handiii」の開発を進めており、プロトタイプでありながら、多くのアワードを受賞している。
ベンチャーキャピタルファンドであり、大手企業のオープンイノベーションのサポートも行うWiL。西條晋一氏は、その共同創業者でジェネラルパートナーで、自身もサイバーエージェントで、新規事業の立ち上げに携わり、5社以上の代表取締役社長を務めてきた人物である。WiLは、2014年12月にソニーと共同でスマートロック事業を行う合弁会社を設立している。
セッションで3社の経営者は、日本のでモノ作りの優位点を次のように述べた。
まずは「日本製品は品質が優れている」という日本ブランドが確立していこと。これは、先人が長年にわたって提供してきた多数の製品と、その実績によって培われたものだ。もうひとつは、このような製品を支える優れたエンジニアの数が他国と比べて圧倒的に多いこと。これが、ハードウェアベンチャーの設計力を下支えしており、エンジニアたちがこだわりをもってモノ作りをしてくれるおかげで、高品質な製品に仕上がるという。最後に、日本で設計して、アジアで製造できるという環境が整っていること。アメリカやヨーロッパと比べれば、時差も小さく、効率よく開発できるという。
これらのメリットが相まって、日本のハードウェアベンチャーは、優れた製品を生み出しやすくなっているというのだ。
そして、モノ作りで世界に挑戦する場合は、言語の壁が低くくなる。モノの良し悪しは見れば分かるので、よい製品であれば、ネットを通じて世界中から購入される。実際にCerevoでは、すでに世界27カ国で製品の販売実勢があるという。
一方で、日本ならではのデメリットもあるようだ。たとえば、Amazon.comであれば、ホームオートメーションのカテゴリに4000点ほど商品が並んでおり、それをサポートしたり補完する製品が登場するなど、エコシステムも充実している。
日本では、販売網やそれをサポートするエコシステムの構築に時間がかかるなど、非力に感じるそうだ。また、政策の面でも、省庁間が縦割りになっていたり、規格についても何を選べばいいかわかりにくかったりと、グローバルと比較すると立ち遅れているように見えるという。
このセッションには、規格や政策を作る側の人間として、総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 標準化推進官である山野哲也氏、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長である佐野究一郎氏も参加した。
経産省で通信の規格化などを担当する佐野氏は、IoTによるビッグデータの利活用やIoT時代の政策のあり方などの検討に携わっているという。ドイツが2011年に提唱した産学官共同のアクションプラン「Industrie 4.0」、アメリカでGeneral Electric(GE)やCisco Systemsなどが中心となって2014年3月に設立されたIoTの団体「Industrial Internet Consortium」などを紹介。日本でも産業競争力会議の検討課題のひとつとして政策のあり方を検討中で「IoTがビジネスモデルとして花開くのはこれから。ベンチャー企業には多くのチャンスがあるだろう」と述べた。
総務省で有線や無線など通信分野の規格策定などを担当する山野氏は、IoT社会では、膨大な数のノードが設置されることになり、そこから発生するデータをコアのネットワークで処理仕切れるのかといった課題があると説明した。そして「グローバルの標準化は、one M2Mで進めているが、日本はインフラが整備されており、ある意味で、とてもよい実証フィールドになっている。今後5年間でどのような研究開発をやっていくべきか検討していきたい」と述べた。
IoTがある種のバズワードに成りつつあるなかで、スピード感をもったベンチャーと、制度作りを担う行政が連携してくことで、単なるモノ作りではなく、モノを活用したイノベーティブなサービス作りが促進されていくのではないかという可能性が垣間見えたセッションであった。
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