高校1年生女子B那は、「Twitterだけが本音を言える場所」という。中学までは大人しいキャラだったが、進学と共にキャラチェンジ。高校では、突っ込み役をしている。「せっかくぼける子がいても、突っ込み役がいないと場が盛り上がらない。私がいることでみんなが喜んでくれる。キャラチェンジしてよかった」。
B那は、「中学では居場所がなかったが、キャラチェンジしたおかげで高校では毎日が楽しい」という。やはり彼女も裏アカウントを複数持ち、そちらで落ち込んだりしたことをツイートしてバランスを取っているという。ネットだけの付き合いの人たちに慰められてほっとすることも多い。
彼女たちは多かれ少なかれ、周囲に求められるキャラを自ら演じている。バランスを考えてグループに足りないキャラを演じたり、キャラが他のメンバーとかぶる時はキャラチェンジもする。それは、彼女たちにとって居場所を得るための方便だ。日々が学校と家の往復の繰り返しの彼女たちは、世界が狭い。学校の友人関係がすべての彼女たちにとって、居場所がなくなることは何よりも怖いことなのだ。
大人も相手によってペルソナを使い分けている。たとえば、家庭での顔、会社での顔、恋人の前での顔、友人間での顔はすべて異なるという人は多いだろう。大人はごく自然に、それらの顔を使い分けて生活をしている。しかしSNS、特に実名で利用するFacebookでは、会社の上司や同僚、昔からの友人、家族などともつながってしまい、何を投稿していいのか分からないという話はよく聞く。
高校生たちは口をそろえて、「リアルのコミュニケーションもSNSのコミュニケーションも同じ」と答える。リアルもSNSも同じととらえているからこそ、大人がリアルでの顔を使い分けるように、高校生はSNSで顔を使い分けているのだ。そして、使い分けがうまくいかない時に悩みが生まれる。
高校2年女子C美は、誰にも本音が言えず、キャラを使い分けることに疲れているという。「リアルでもキャラを作り、SNSでもキャラを作っている。キャラを作るとその場は何となくうまくいくけれど、言いたいことは言えないし、段々苦しくなってきた。でも今更キャラ替えできないし、悩んでいる」。クラスなどで一度キャラを作ってしまうとそういうものとして理解されてしまい、「途中でのキャラ替えは難しい」とC美は言う。このような悩みを持つ高校生は少なくはない。
誰にも自分が出せないで苦しいのなら、ネットでもリアルでもいいので、小出しに出して様子を見るといいだろう。反応によって、受け入れてくれる相手かどうかが分かるはずだ。逆に本音を見せてくれる人がいたら、受け止めて自分も本音を出してみるといいのではないだろうか。
彼女たちは自分をそのまま出しても受け入れられないと信じているが、思い込みに過ぎないのではないか。役割も自分が思い込んでいるだけで、多くの場合、本当は必要ないのかもしれない。
リアルでもネットでも、キャラクターを演じ続けていたら疲れるのは当たり前だ。もし周囲の子どもがそのようなことで悩んでいたら、キャラを作らなくてもいい場があることを伝えてほしい。同じ目的意識を持つ仲間、つながれる仲間が見つかれば、“キャラ”がなくても居場所ができる。いずれ複数アカウントが必要なくなる時がくるように頑張ってほしいと願う。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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