東南アジア新興企業の中国進出を支援する「VentureCraft」が始動

 東南アジアのスタートアップ企業にとって、巨大な中国市場への門戸が開いたかもしれない。シンガポール拠点の投資会社「Singapore Health Tech(シンガポール・ヘルス・テック)」が2015年1月、同国拠点のハイテク系新興企業の中国進出を支援する新たな枠組みである「VentureCraft(ベンチャークラフト)」を発足した。

 この枠組みは、選出されたスタートアップ企業に対して、年内に総額400万シンガポールドル(約3億5000万円)相当の資金の提供や融資を含む、さまざまな援助をするもの。目玉は、Singapore Health Techの株主であり、また中国のハイテク市場においてビジネスの実績がある著名人がメンターとして企業の育成や指導をすることである。

 メンターとして名を連ねるのは、中国アリババの創業者の1人で傘下タオバオの前社長Sun Tongyu氏、中国大手通信会社の傘下でアプリなどITサービスを提供するXiamen Meitu Technologyのエグゼクティブチェアマンでエンジェル投資家のCai Wensheng氏、上海拠点のベンチャーキャピタル Healthy Capitalのマネージングパートナー Zhong Xinghua氏。

 VentureCraftが支援するスタートアップ企業の選定はすでに始まっており、約10社が支援先として選ばれる見込み。支援を受ける企業は、Singapore Health Techの株主らに対して3度のプレゼンテーションをする。主に、モバイル系、IoT系(Internet of Thing:モノのインターネット)、医療技術系の企業が候補に挙がっているという。

医療系スタートアップへのメリットが大

 支援先に選ばれた企業は、拠点を置く場所をシンガポールもしくは中国から選ぶことができる。シンガポールならばVentureCraftが運営するサービスオフィス内、中国ならば浙江省杭州市にある企業集積地「Science and Technology Park(サイエンス・アンド・テクノロジー・パーク)」になる。


「サイエンス・アンド・テクノロジー・パーク」(ソース:開発会社アセンダスのウェブサイト)

 今回の枠組みは、特に医療技術系の企業と相性が良さそうだ。同集積地にはオフィススペースのほかに医療分野の実験室も備わっており、そこでは米国やシンガポールなどの国と比べて、安価で動物を使用しての医療実験をすることができる。

 さらに、医療機器の輸出入の手続きもサポートされるほか、中国政府が外国人科学者を集め、育成することを目的として策定しているスキーム「1000 Talent Plan」を利用して、資金の借り入れや補助金の支給を受けることも可能。

 VentureCraftは、中国市場に進出したいスタートアップ企業への支援を強化すべく、中国のベンチャーキャピタルやメンターらの協力を得て、追加で3億米ドル(約350億円)規模のファンドを組成したという。

 また、シンガポール拠点の有望なスタートアップ企業を発掘すべく、シンガポール国立大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)が共同で運営するプログラムとも提携した。中国にあるその他の企業集積地とも同様の取り組みをするための交渉を進めているとのこと。

 シンガポールを筆頭に、東南アジアのいくつかの国や都市は単体では市場規模が小さい。よって、そこを拠点とするスタートアップ企業の、海外、特に中国のような巨大市場に進出することに対する需要は大きいが、今回の取り組みはそれに応えるものだろう。

 近年では東南アジアのスタートアップ企業に投資したいと考えるベンチャーキャピタルなど投資会社も増えているため、Singapore Health TechやVentureCraftを他と差別化し、支援を受けたい企業を惹きつけることにもつながるだろう。

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