VAIO株式会社になってから初めて、ソニー時代からの継続ではない新機種が登場する。以前よりモバイルの最上級シリーズとされてきたVAIO Zだ。新しい“Z”は性能はもちろん、液晶を回転できる「フリップ機構」を採用。ペンも付属し、ペンタブレット的な使い方もできるPCとなっている。
VAIO type Zを含むVAIO Zシリーズは従来、クラムシェル型のノートPCにハイスペックを詰め込み、それでいてモバイルを重視しながら薄型や軽量化を目指すシリーズとなっていた。ドッキングステーションの「Power Media Dock」に外付けグラフィックボードを内蔵するなど、どちらかというとオーソドックスなスタイルながらパワーで勝負しているPCだった。
ところが今回は、液晶を中央のラインからひっくり返してタブレット風に使うギミックを搭載してきた。最新の第5世代 インテル Coreプロセッサファミリを搭載し、性能は十分。タブレット的な要素をプラスアルファすることで、より多様な使い方ができるようになっている。
搭載の13.3型液晶は2560×1440ピクセルの高解像度仕様で、タッチパネルを内蔵する。付属のデジタイザースタイラスペンで、手書きメモや図や絵が書ける。ディスプレイは視差を軽減するため、液晶とガラスの間に特殊な光学樹脂を充てんすることで、ペン先の触れた位置と実際に線が描写される位置の誤差を最小限にしているという。
液晶サイズは13.3型と持ち運びにも大きすぎず、操作にも小ささを全く感じないサイズで、出先の長時間作業でもちょうどいいサイズだ。また、液晶をひっくり返してタブレットスタイルとして、画面を見せながら対面の人に説明するというシーンでも小さすぎるということもない。この液晶サイズのおかげでキーボードのサイズにも余裕があり、キーピッチ19mmというゆったりとした配置という点もキーボード入力にはプラスだ。
インターフェースは映像出力のHDMIとUSB 3.0が2ポート。さらにSDメモリカードスロット、ヘッドセット対応のヘッドホン出力を本体に内蔵する。有線LANやアナログRGBポートがないのは残念だが、アナログRGBの使用頻度が減っていることや、無線LANが高速な802.11acに対応していることなどから大きな支障にはならないのではないだろうか。
さて、VAIO Zを見ていて思い出した機種がある。2013年の秋から発売されたVAIO Fit Aシリーズである。13.3/14/15.5型と最終的には11.6型もラインアップされたこのシリーズ、液晶のスタイルは今回のVAIO Zと同様なのである。
この機種は操作性があまり話題にならないうちに終息してしまったが、今改めて見てみると非常に良いスタイルだったことがわかる。クラムシェルのノートPCが備えるキーボード操作のしやすさ、上下ボディの重量バランスのよさ、膝に乗せでも安心して使えるボディ構造などをすべてを持ちながら、タブレットモードの閲覧性のよさもしっかり備えている。
いわゆる2 in 1スタイルだが、液晶を360度回転させる機種に比べると、本体を持ち上げずにスタイル変更ができる点、タブレットモード時にキーボード側が隠れ、キーボード側が底面にならないため傷や汚れの心配が少ない点がメリットとなる。
13.3型で1.34kgと決して重くないボディの構造は非常にしっかりしており、変形時にもどこかの関節が弱いという印象も全く受けない。アルミのひんやりとしたボディは上下ともにがっしりとしており、持ち上げたときもたわんで弱々しいという印象は全くない。
以前のVAIO Zは外付けになった時期もあったがディスクリートグラフィックスが選択できるパフォーマンスが非常に高いモバイルノートPC。ところが今回はインテルIrisグラフィックスを採用している。
Irisはディスクリートグラフィックスというわけではなく、従来からあるインテルHDグラフィックスの最上位仕様と理解すればよいだろう。今や内蔵グラフィックスといっても進化しており、3D CADやゲームにも対応できるほどのパフォーマンスを持っている。さすがに高性能をうたうディスクリートグラフィックスにはかなわないが、ほとんどの用途で十分満足行く性能を持ち、しかも省電力だ。
超高解像度表示にも対応しており、搭載の13.3型2560×1440ピクセルの表示に全く問題ないばかりか、HDMI出力では4K(4096×2160ピクセル)の解像度にも対応している。
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