SpaceX、テスラモーターズ、ソーラーシティなどを創業し、現在もCEOを務める起業家イーロン・マスク氏が1月5日、掲示板「Reddit」の「Ask Me Anything(AMA)」に登場して一般ユーザーからの質問に答えた。航空宇宙、自動車、再利用エネルギーなどの分野で知見を持ち、これまでの起業の成功から幅広い業界でビジネスリーダーとして一目置かれるマスク氏に、どのような質問が寄せられ、どう回答したのだろうか。
ちょうど、米航空宇宙局(NASA)とのプロジェクトでSpaceXのロケット「ファルコン9」の打ち上げ前日(延期されて10日になった)だったこともあり、ロケット技術、宇宙旅行などSpaceXに関する質問が多くを占めた(マスク氏が「ロケット企業のCEO/CTO、イーロン・マスクだ。AMA!」とタイトルをつけたことも関係ありそうだ)。マスク氏には1万件以上のコメントが寄せられ、30近くの質問に答えた。
SpaceXに関するものでは、「現在SpaceXは古いロケット技術を利用しているが、英国で開発が進んでいるSABRE(Synergistic Air-Breathing Rocket Engine)のようなハイブリットクラフトやGoogleとNASAのような宇宙エレベーターについて考えたことがあるか?」という問いには、「軌道やその先に到達したいのであれば、純粋なロケットがよい。Von Braun(ドイツのロケット科学者Wernher von Broun)とKorolev(ロシアのロケット科学者Sergei Korelev)は航空機について無知だったのではない。彼らは実に聡明だった」とコメントした。
これに対し「イーロンが安価で高速な再利用可能分野に成功すれば、von BraunとGoddard(米国のロケット研究者Robert Goddard)に並ぶ存在になる」など賞賛の声もあれば、「イーロン、次の提案だ。脳手術に革新を起こすBrainXはどう?」という提案も寄せられた。
次に、テスラについての質問を見てみよう。開発中の電気自動車「モデル3」に向けてお金を貯めているという人は、「モデル3について、知られていない情報をシェアしてほしい」と尋ねた。マスク氏の答えは「他の車とは違うものになるだろう」だ。
シンギュラリティ(Singularity:コンピューターの知能が人間を上回る地点)については、「ハイプなのか?」という問いに次のように答えている。「タイムフレームが目の前に迫っているという訳ではないが、懸念しておくべきだろう。AI(人工知能)の安全性について、現状以上の作業が必要だ」――ここまで書いた後、マスク氏は「それから」として、サメの着ぐるみをかぶった猫がロボット掃除機「ルンバ」に乗ってアヒルを追い回すYouTubeビデオのリンクを貼り「これは懸念ではない」とユーモアを披露した。
気になる人生観や起業家精神に重なる質問と回答を見てみよう。「逆境にある人に対して、なにかアドバイスはある?」という質問に、マスク氏は「Churchill(英国の政治家、Winston Churchill)の格言がある『もしも地獄のまっただ中にあるのなら、そのまま突き進むがよい(If you are going through hell, keep going)』」と記している。
「自分の学校は(ロケットが打ち上げられるケープ・カナベラルのあるフロリダ州)オーランドにあり、あなた方のロケット打ち上げをいつもみんなで見ています」という教師は、「生徒に何か大きなことを達成してほしいと思っている」と綴り、「学生時代、先生がやったどんなことがあなたの考えやアイデアを奨励する助けになったのか?」と聞いた。
これに対し「最高の先生は、小学校の校長」とマスク氏。算数の先生が辞めたためにこの校長先生が代役を務めることになり、シラバス(学習計画)を大きく加速したという。「授業の前半はむちゃくちゃ勉強しなければならず、宿題もあった。でも、校長先生が第2次世界大戦で兵隊を務めていた時の話を聞くことができた。もし勉強をしなければ、話は聞けなかった。(だから)みんな一生懸命に勉強したよ」と子ども時代を振り返った。
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