スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2014年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は山根康宏さんに、今年注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。
まずはアジアを中心とした新興メーカーの躍進です。シャオミ(小米)を代表とする中国メーカーがスマートフォンの販売を大きく伸ばし、大手メーカーの存在を脅かすまでの存在になりました。先進国のスマートフォン需要はほぼ一巡しているので日本ではあまり実感はわかないでしょうが、新興国ではまだまだ伸びており存在感は急激に高まっています。
新興メーカーは低価格なだけではなく製品品質も日常的に使う分には問題ないレベルのものを投入しており、サムスン電子やアップルなどのシェアを奪いはじめました。価格は1万円でSIMフリーのものもあり、中国ではLTE対応でその価格の製品も出てきました。またヨーロッパやアメリカのプリペイドスマートフォンの一部にもこれら新興メーカー品が増えており、低価格化の動きは先進国にも少しずつ広がる兆しを見せています。
2つ目はスマートフォンの大画面化です。iPhoneも6 Plusは5.5インチとなりましたし、ファーウェイは同じ本体サイズで6インチのモデルを投入。今や5.5インチ以上の通称“ファブレット”はどのメーカーもラインアップを持っています。その下の製品も5インチや5.2インチのモデルが増えました。
その結果、タブレットの新製品もファブレットと大きさがかぶる7インチよりも8インチ台のものが増えたようです。各タブレットメーカーは今まで7~8インチと10インチの2つのモデルを作り分けていましたが、今後は8~9と10~12のように、大型化が進む動きが見えています。とはいえ本体サイズは薄型軽量となりまたベゼルの幅も狭まるので物理的な大きさは極端に大型化はしないでしょう。
3つ目は日本市場の外国人への開放。といっても難しいことではなく、外国人でも買えるプリペイドSIMカードが増え、訪日客が手軽に日本でデータ通信環境を利用できるようになったことです。私も12月の日本一時帰国中に大手量販店に行きましたが、外国人がプリペイドSIMカードを買って店員がその対応をしている光景を何度も見かけました。
日本は無料Wi-Fiも増えていますが、プリペイドSIMカードのメリットは移動中でも自由に通信できることです。ソーシャルサービス全盛の今、ホットスポットを探してそこで通信する、という使い方は時代遅れです。日本の高速な通信環境を体験できるプリペイドSIMカード製品の拡充は日本滞在の魅力を大きく高めるものにもなるでしょう。
サムスン電子の「GALAXY Note Edge」です。側面にもディスプレイ(Edge Display)が配置されており、フリップカバーを閉じた状態でも情報を見ることができます。まだまだこのEdge Displayで利用できるアプリやサービスは少ないのですが、今までにはなかったスマートフォンの新しい使い方の可能性を垣間見ることができる、一歩先を行く製品だと感じられました。
アジア各国ではセルフィー(自分撮り)ブームですが、気が付けば自分も取材先の国々でセルフィーをよく撮るようになりました。ただセルフィー棒はまだ使っていません。2015年は海外に行くときに持っていくようになるでしょう。また「Uber」やタクシー配車アプリはようやく年末に使い始めました。カタールのドーハを訪れたときは街中でタクシーを捕まえるのは難しく、Uberがあったからこそ自由に街中を移動することができました。今後海外出張時には利用する機会が増えそうです。
一方、使わなくなったというか利用頻度が極端に減ったのが海外出張中の携帯電話回線を使った音声通話。ソーシャルサービスでも音声通話が可能なものが増えていますから、現地での通話はそちらを使うようになりました。もちろん現地ではデータ通信定額プリペイドSIMカードを買うことが前提になります。
LTEとWi-Fiデータオフロードの普及による常時“高速”接続の世界が広がったことで、スマートフォンの使い方に変化の兆しが起きています。たとえば音楽の利用もダウンロード型サービスからストリーミング定額サービスへの人気が高まりました。ソーシャルサービスでもビデオの利用が増えています。またスマートフォンを買い替えるたびにバックアップデータをコピーしなおす必要もなく、クラウドに個人データを置いてもストレスなく利用できるようになりました。スマートフォンのシンクライアント化の兆しが見え始めた1年だったと思います。
「Apple Watch」がいよいよ発売となり、スマートウォッチを取り巻く環境が激変するでしょう。Apple Watchは2015年最も売れるスマートウォッチになると思います。とはいえ実用性は現時点では何とも言えませんが、利用者が増えることでスマートウォッチに対する消費者ニーズがはっきりとしてくるでしょう。恐らくアップルが考えていることと、消費者が求めていることの間にはまだ大きなギャップがあるように思います。グーグルのAndroid Wearもさらに参入メーカーが増えて製品バリエーションが増え、利用者増につながるでしょう。
とはいえ腕時計には長い歴史があり、ロレックスを捨ててスマートウォッチをはめるようにはまだならないでしょうね。2013年のSF映画「エリジウム」には、ブルガリのスマートウォッチ型デバイスが登場するのですが、高級腕時計メーカーとスマートウォッチのコラボ製品が出てくるにはまだ時代は早すぎるでしょう。2015年は低価格品から高級品までさまざまなスマートウォッチが発売され、そして淘汰も進むと思われます。その過程の中でスマートフォンとの提携や、あるいはスマートウォッチ単体で利用できる新しいアプリやサービスが生まれてくるでしょう。
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