DeNA、“世界観”あるキュレーションで「衣食住」を網羅--新たに編集者を採用へ

井指啓吾 (編集部)2014年12月22日 12時00分

 10月に住まいやインテリアに特化したキュレーションメディア「iemo(イエモ)」を運営するiemoと、女性向けファッションに特化したキュレーションメディア「MERY(メリー)」を運営するペロリを傘下に入れたディー・エヌ・エー(DeNA)が、“食”に特化したキュレーションメディア「CAFY(カフィ)」を12月19日に公開した。

 CAFYは、iemoとMERYの知見を活かして立ち上げられたメディアで、3社が共同開発・運営する。主に想定読者層が近いiemoがコンテンツ編集を、MERYがサイト構成を担当し、iemoとMERY同様に“世界観”を重視したメディア作りにこだわっている。

 当初は外部ライターが執筆した記事を掲載していくが、準備が整った段階で、こちらもMERYやiemoと同様、一般ユーザーにキュレーターとして記事を作成してもらう形をとる。インセンティブを導入することも考えているそうだ。

 マネタイズの方法と時期は未定。iemoとMERYは“産業構造の変革”を目標に、iemoは不動産のマッチングサービスでの収益化を視野に入れており、MERYはECに取り組んでいるが、「(CAFYは)検討しているものはあるものの決定はしていない。今後ユーザーの声を聞きながら詰めていく」(DeNAキュレーションプラットフォーム推進室室長の牛尾正人氏)という。

 「CAFYのバックにあるのは『衣食住』で、日々の生活を送る上で必要不可欠な領域。市場規模も当然大きい。iemoとMERYのように“産業構造の変革”を目指し、その結果としてのマネタイズを目指す」(牛尾氏)。

 牛尾氏が言うように、DeNAはこれで衣食住の3つのライフスタイル領域をカバーしたことになる。しかしDeNA執行役員でiemo代表取締役CEOの村田マリ氏によれば、この3メディアで打ち止めにするのではなく、周辺にあるより専門的な領域までメディアを広げていく予定という。「衣食住の『ライフスタイル』を基軸とし、その周辺に段々と広げていく。今回のCAFYの反応を見ながら、2015年もキュレーションプラットフォーム事業にはかなり力を入れていきたい」(村田氏)。

 また、キュレーションプラットフォーム事業を本格化させるにあたり、DeNAがこれまで手を付けてこなかった「編集者の採用」も開始する予定という。


DeNAキュレーションプラットフォーム推進室室長の牛尾正人氏(左)と、DeNA執行役員でiemo代表取締役CEOの村田マリ氏

2カ月半が経ち「思ったほど混乱はなかった」

 iemoとペロリはDeNAの傘下に入ったことで、人材・資金面でサポートを受けている。iemoは10月1日に8人だった社員が約20人にまで増えた。村田氏によれば、必要に応じて人を増やしたり、入れ替えたりといった最適化がスピーディにできており、DeNA側とiemo、ペロリ側で、業務を進める上での“一番いいポイント”を探り合っているという。

 また、iemoとペロリそれぞれの自主性が重んじられており、「DeNAに合わせようとするよりも、今までの延長線上で好きにしていい」(村田氏)という環境だそうだ。

 「中川(ペロリ代表取締役の中川綾太郎氏)と『思ったほど混乱はなかったよね』と話す。この2カ月半で、たとえば社員が辞めてしまったり、トラブルが続出するといったことは、iemoとペロリともになかったと認識している」(村田氏)。

 一方でDeNA側も想定通りことを運べているようだ。牛尾氏は「CAFYに対して、iemoとMERYの知見を初期から投入できたのはとても大きい」とし、CAFYのチームが発足した10月1日から、村田氏と毎日のようにCAFYの話をしていることなどを教えてくれた。「3社が分かれている感覚はなく、DeNA社内のさまざまな部署と連携するのと全く同じに感じる。サイト公開までを振り返ると、不思議なくらいにマッチしていたと感じる」(牛尾氏)。

◇10月1日、買収時の話
キュレーションで産業構造を変革--DeNAに買収されたiemoとペロリが目指す高み

村田氏が重視する「メディアの世界観」とは

 iemoはサービス開始から1年で150万MAU(月間アクティブユーザー)、MERYは1年半で1200万MAUを超えた(いずれも9月時点)。キュレーションメディアとして急激な成長を続ける秘訣はなにか。村田氏は「キュレーションメディアはニュートラルなものになりがち」とし、一方でiemoとMERYには世界観(コンセプト)があると語る。

 「iemoとMERYの何が受けたかは複合的な要素がありわからないが、両者に共通するのは、媒体に対して思い入れの強い創業者がいて、それに対してコンセプチュアルなものを最初に作ったこと。いわゆる“まとめ”と言われる記事に比べると、iemoとMERYは雑誌的に、メディアの世界を重視している。それが1つの成功要因だと思い、CAFYでもその方針を踏襲した」(村田氏)。

  • CAFYのコンセプト

 CAFYのコンセプトは同サイト下部「CAFYについて」で読める。その場の景観が目に浮かぶような文章だ。CAFYの立ち上げに際し、キュレーターや読者にCAFYの世界観をより正確に伝えるため、よく練って定めたそうだ。

 コンテンツ作りにおけるもう1つのポイントは「共感力」。これは『いいね!』『リツイート』などSNSでの記事の拡散にも関係する。「いまの時代、スマートフォンなどを通して見るインターネットメディアに求められているのは、読者に共感してもらえるようなコンテンツだと思う。さまざまな思い、考え方、好みがあるなかで、ターゲットとするどこかのゾーンに引っかかったらいいなと思う。全体的に薄く引っかかるというよりは、特に主婦層や料理好きな人達に訴求できれば」(村田氏)。

 キュレーターとして一般ユーザーが多く参加する場合、世界観は揺らいでしまうように思える。これについて村田氏は「しっかりとした芯がありながらも、その周辺はやわらかく変化できるような作り方をしていく。キュレーターや読者の求めるもの、また読者が共感してくれたかというKPIに沿って変わっていけるはず」と話す。

 牛尾氏も「テイストの揺らぎにキュレーターの個性が反映される。多くの人が記事を書くことで、集合体として軸のぶれない世界観ができていく。多くの人が関わっていることによって、カチッとはせずにゆるゆると時代に合わせて変わっていけるのかなと思う」と話し、CAFYの今後に期待を膨らませていた。

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