ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)は12月11日、パートナーとなる17の企業・団体と共に、訪日外国人向けの無料Wi-Fiサービス「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」を開始すると発表。外国人向けサービスに至った経緯や、具体的な仕組みなどについて説明した。
Wi2の代表取締役社長である大塚浩司氏は、「これまではWi-Fiのエリア整備に関する議論が中心であったが、TRAVEL JAPAN Wi-Fiは参画するパートナー企業に最良のおもてなしをしてもらう、価値提供のフェーズに大きく変わるものだと思っている」と説明。TRAVEL JAPAN Wi-Fiがネットワークだけでなく、付加価値やサービスを強く意識した内容となっていることを明かした。
さらに大塚氏は、TRAVEL JAPAN Wi-Fiは3つの要素で成り立っていると話す。1つ目は、Wi2が整備した全国24万カ所のWi-Fiスポットを、外国人に解放すること。同社が訪日外国人にアンケートをとったところ、どこにスポットがあるのか、どのSSIDに接続してよいのかが分かりにくい上、接続時間に制限があるなど、Wi-Fiを満足に使えていないことが分かったという。そこでTRAVEL JAPAN Wi-Fiでは、専用のアプリを使うことで、全国24万のWi-Fiスポットを、無料で簡単に接続できるようにしたのだそうだ。
もっとも初期状態で使用できるWi-Fiスポットは、スターバックスや一部自治体の無料Wi-Fiスポットなど、ごく一部に限られている。すべてのWi-Fiスポットを利用できるようにするには、パートナー企業や自治体などから配布されるプレミアムコードを登録する必要があるとのことだ。またプレミアムコードの使用期限は2週間となっており、期限を過ぎた場合は再度プレミアムコードを取得する必要がある。
2つ目の要素は、パートナー企業が提供する、旅行に役立つレコメンド情報を案内すること。TRAVEL JAPAN Wi-Fiに参画するパートナーには、日本航空やJCB、ドン・キホーテなどの企業だけでなく、京都市や神戸市などの自治体も含まれている。それぞれのパートナー企業・自治体が提供する情報を配信すると、それらが専用アプリのタイムライン上に表示され、旅行者が役立つ情報を入手しやすくなる。
そして3つ目の要素は、TRAVEL JAPAN Wi-Fiを利用した外国人の行動を収集して解析し、パートナー企業にそのデータを提供することで、サービス改善に役立てる仕組みを整えていること。Wi-Fiスポットの接続情報と、スマートフォンGPSから利用者の行動を取得し、アクセンチュアと開発したビッグデータ解析エンジンを用いてこれを分析。どの国から来た観光客が、どの時間帯に、どういった所に多く訪れているかなど、利用者の行動を確認して、それをサービスの改善に生かし、“おもてなし”を進めるのが大きな目的となっている。
そうしたことからTRAVEL JAPAN Wi-Fiは、パートナーに対して行動分析データを提供する代わりに、手数料を取る形でビジネスを進めていくようだ。なおユーザーの情報取得に関しては、あらかじめその旨を規約に明記しておき、利用者から同意を得たうえで取得するとしている。
訪日外国人に向けたサービスとしては、すでにNTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)が「Japan Connected-free Wi-Fi」を提供している。大塚氏は両サービスの違いについて「(Japan Connected-free Wi-Fiは)接続ツールという位置付けだが、我々は利用者を喜ばすインバウンドの仕組みを設けており、捉え方が違う」と話しており、無料Wi-Fiのインフラを提供するだけにとどまらない仕組みを作り上げていることが、優位点であると説明している。
なおTRAVEL JAPAN Wi-Fiは、あくまで訪日外国人に向けたサービスであるため、海外から訪れた人や海外在住の日本人は利用できるが、日本在住の人は利用できない。日本在住かどうかは、アプリ側でスマートフォンやSIMなど複数の情報を元に判別しているとのことだ。
日本人が利用できないようにした理由について、大塚氏は「外国人は旅行中の通信環境としてフリーのWi-Fiスポットを求める声が大きい。日本の顧客はLTEなど携帯電話のネットワークをメインに使用し、Wi-Fiはそれを補完する存在となっているため、重みが違う」と話している。ただし、日本でも同種のプログラムを提供して欲しいという声があれば、前向きに検討していくとした。
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