企業の知的財産(知財:IP)をめぐる国内外の動きに対する理解を深め、議論することを目的としたイベント「IP2.0シンポジウム ~未来の”モノ”・”コト”を創出する新パラダイムへの提言~」が、11月27日に開催された。
シンポジウムのクロージングとして開催されたパネルディスカッション「国家と企業そしてルール ~今後知財をドライブするものは何か~」では、慶應義塾大学総合政策学部の國領二郎教授をモデレータとして、日本インダストリアルデザイナー協会理事長の田中一雄氏、SF作家の藤井太洋氏、KADOKAWA・DWANGO会長の川上量生氏、KADOKAWA 取締役会長の角川歴彦氏が登壇し、知的財産をめぐる今後の動きとモノづくりの在り方について議論を交わした。
ディスカッションは、「IPをめぐる動向で気になることは?」という國領教授からの提起に対して各登壇者が意見を述べるところから始まった。
工業デザインの専門家である田中氏は、「デザインの定義が広がり、ビジネスモデルの中にデザインが組み込まれるようになってきた」とデザインを巡る最近の動きを紹介。3Dプリンタに代表されるように製品の生産方法に変革がもたらされたことによって、同じものを大量に生産する時代から個々の個性に合わせて製品がカスタマイズされる時代になってきたと語る。その上で、技術とデザインの融合によって、「量産される個」の時代が到来していると述べた。
一方、SF作家の藤井太洋氏は「生み出された写真、文章、音楽などは、それを制作した制作者が著作権を持つが、もしもこれを機械が生み出したとき著作権は誰に帰属するのか」という議題を提起した。藤井氏は、人工知能をめぐる動きが活発である現状を挙げたうえで、その背景として「人工知能が今まで成し得なかったディープラーニング = コンピュータが人間の脳内で行われるさまざまな処理や価値判断を実現するようになり、それがコモディティ化してきた」と指摘する。
また、コンピュータの低価格化やクリエイティブなソフトウェア(CAD)の浸透、技術文化の平準化などによって、人間の英知はデータ化して低価格のコンピュータで扱えるようになり、そのデータを取り扱う手段も平準化していると説明。企業だけでなく個人もこうした手段を活用して簡単にモノづくりや創作活動ができるようになったと述べた。
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