トランスコスモスとジーニーが広告新会社で東南アジアに進出--霜田代表に狙いを聞く

 トランスコスモスとジーニーは11月3日、共同出資の新会社Simba Digital(Simba)をシンガポールに設立した。ASEAN10カ国において「Simba SSP」を共同で提供し、同地域におけるトップシェアを目指す。SSP(Supply Side Platformの略。媒体社の収益最大化のための広告プラットフォームのこと)提供事業者の東南アジア市場への参入加速の皮切りとなるか、注目が集まる。

 両社は2013年5月に業務提携し、トランスコスモスが提供する広告代理店機能とジーニーが提供する国内最大規模のSSP「Geniee SSP」との連携に取り組んできた。そして今回、Simbaと同時にマレーシア、インドネシア、タイに営業拠点を設け、いよいよこの市場へと本格的に参入する。設立間もないSimbaのマネージングディレクター 霜田健二氏に戦略や手応え、展望を聞いた。

――東南アジア進出の経緯は。

  • Simba Digitalのマネージングディレクター 霜田健二氏(トランスコスモスからの出向)

 トランスコスモスはアジア地域を中心に世界126拠点(国内44拠点、海外16カ国82拠点)でコンタクトセンターやインターネット広告サービスをはじめとするビジネスプロセスアウトソーシングを展開しています。中でも東南アジアは特に注力している地域です。ASEAN地域ではタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアに進出し、現地およびグローバル企業向けにビジネスプロセスアウトソーシングサービスを提供しています。また、アパレルやコスメ、電子書籍などのASEAN市場トッププレーヤーや大手財閥とも資本・業務提携を行い、ASEAN地域でのサービス拡大に努めてきました。

 グローバルビジネスの実務経験者の人材リソースが確保されたこと、東南アジアの市場の成長性が著しいこと、競合企業の進出がいまだ限定的であることから、本格的に展開を強化することになりました。そのタイミングが、ジーニーが海外展開を積極的に拡大したいと考え始めた時期と重なり、実現にいたりました。

――グローバルビジネスの実務経験者とはまさに霜田氏のことですね。

 トランスコスモスには2013年12月に入社しましたが、それまで約12年間、デジタルマーケティングに携わってきました。ヤフーに勤務していた頃は広告の海外営業を3年弱担当、前職ではイスラエルに拠点のあるアドテクノロジ系の企業に勤務し、日本市場でのセールスディレクターを務めていました。その他の会社でも事業の海外展開の経験を積んできました。

――両社がお互いをパートナーに選んだ理由は。

 ジーニーは国内のSSP事業者として最も成功しています。それを実現しているのが優れた技術力です。例えばインフラですが、アプリ、ミドル、ハードの各レイヤーでチューニングを行うことで超低コストでの広告配信を実現しています。これについては社内外からの定評があります。また国内事業者としては最大級の開発部隊を擁しており、すでに海外にも開発部隊を展開しているところも強みだと思います。

 一方、トランスコスモスについては、東南アジアにおける他事業での実績、顧客企業やパートナー企業、大手財閥など強固なネットワークがある点を評価いただいたと考えています。ジーニーも日本国内では順調にビジネスを拡大していましたが、対海外については人材、拠点などさまざまなリソースを通じて補完し合えると考えています。

――SSPにとって重要な媒体社とのリレーションは、トランスコスモスの中にすでにあったのでしょうか。

 そこまで多くはありませんでしたが、これから関係を構築していく上で、東南アジアにおける他事業での実績は活かしていけると考えています。

――すると今後は媒体社とのリレーションがある人材を採用するのでしょうか。

 東南アジアにおいては、媒体社とのリレーションの有無に限らず、デジタルマーケティング領域の優秀な人材は引っ張りだこといった状況で、採用はなかなか容易ではありません。どちらかというと向上心の強い人を採用し、着実にリレーションを構築していきます。

――ジーニーは今後どこで開発を行うのでしょう。

 ジーニーはベトナムにも拠点がありますが、開発をどこで行うかは彼らに委ねます。

――各拠点の役割は。

 シンガポールに本社、マレーシア、インドネシア、タイに営業拠点を設け、ASEAN10カ国をカバーします。想定している直近の人員計画は、マレーシアが3人、インドネシアが2人、タイが2人。マレーシアの拠点はシンガポールとマレーシアを、インドネシアの拠点はインドネシアとフィリピンを、タイの拠点はタイとベトナムをそれぞれカバーします。ASEANの残り4カ国は問い合わせベースでマレーシアから対応します。

――直近で注力することを教えて下さい。

 1つは、上記の6カ国での営業活動。2つめは、大手だけでなく中堅の媒体社ともリレーションを構築し、サービスを導入してもらうことです。特に、東南アジア全体として不足していると感じる、エンタテインメント関連のコンテンツを配信する媒体社がこれから伸びてくると思われるので、今のうちからアプローチしていきます。サービスのローカライズは、英語対応を行った上で、必要に応じて多言語化を行っていきます。

――競合の進出の状況、SSPの認知度はどれほどでしょう。

  • 「Simba Digital」のウェブサイト

 担当者が出張ベースで営業を行っている競合企業はいても、弊社のようにオフィスを構えて本格的に進出しているところは極めて少ないため、これから地域に根ざしていくこととフットワークの強みを活かしていきたいです。

 SSPの認知度は、先進国のシンガポールでは高いですが、その他の国々は横一線で低い状況。先行してタイで行った営業活動では、媒体社からサービスが好意的に受け入れられている印象を受けました。どの国も共通して、マネタイズの効率化が図れる点を評価いただいています。これから市場を啓蒙し、媒体社のサービス理解を深めていきます。

――短い期間で行った営業活動で特に印象に残ったことは。

 シンガポール、タイ、インドネシアを出張でまわりましたが、スマートフォンとPCの普及の度合いが進んでおり、想定よりもマーケットは大きいと感じました。

――この市場の勝敗を決する鍵は何だと思いますか。

 グローカル=グローバルの目線を持ちながらもローカルに根付けるか否かです。そして技術力。その点、ジーニーのテクノロジーは世界トップクラスと自負しています。

――今後の目標や展望を教えて下さい。

 ASEAN地域におけるナンバーワンSSPを目指します。また媒体者の数だけではなく、ユニークユーザー数やインプレッション数など規模、そしてニュースサイトなど信頼性の高い媒体における導入率にもこだわっていきたいです。今後、フィリピンにも営業拠点を設ける予定です。

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