クックパッドは9月1日、料理雑誌やレシピ本に掲載されている約1万品のレシピが月額360円(税別)で見放題になるサービス「プロのレシピ」の提供を開始した。ユーザーは今後、従来の生活者からの投稿に加えて、出版社や料理研究家のレシピも閲覧できるようになる。
プロのレシピでは、「オレンジページ」や「レタスクラブ」など、料理雑誌やレシピ本を発行する主要出版社13社と、栗原心平さんや浜内千波さんなどテレビでも活躍する料理研究家11人のレシピを検索して閲覧できる。各社の約1万品のレシピが、同一のフォーマットで見られることが特徴だ。気に入ったレシピは3000件まで保存できる。なお、無料ユーザーは毎月3品まで閲覧できる。
トップページでは、各雑誌の最新号や旬な食材などの特集が切り替わって表示される。クックパッドでは“食材”からレシピを探すのに対し、プロのレシピでは“ムード”から探すことを意識しており、カメラマンが撮影した綺麗な料理写真を前面に押し出している。各紙のバックナンバーを閲覧できるほか、最新号のレシピも一部閲覧できる。レシピページから掲載されている雑誌を購入することも可能だ。
クックパッドは月間4000万人が利用し、約180万品のレシピ情報が投稿されているが、「生活者の料理実態に目を向けると、雑誌やレシピ本を見ている人はまだまだ多く、より幅広いシーンを網羅したかった」と、同社執行役員の加藤恭輔氏は新サービスの狙いを語る。料理の腕が上がりクックパッドの必要性が下がった“上級者”向けの受け皿がないという課題もあったことから、プロのレシピに挑戦する新たな楽しみを提供したいという。
実はこれまでも、20品500円で雑誌のレシピが見られる「レシピストア」を提供していたが、都度課金の形式のため、思うように利用者が増えなかったと加藤氏は振り返る。一方で、ここ数年は雑誌や動画の見放題サービスが急増していたことから、月額360円で見放題になるプロのレシピの提供を決めたのだという。当初は雑誌の売上の減少を懸念して難色を示した出版社が多かったというが、粘り強く交渉し最終的には主要13社が参画することとなった。
加藤氏は、プロのレシピによってウェブ市場だけでなく、出版市場の拡大にも寄与したいと語る。「紙からウェブへ移ること自体が正解とは思わない。紙でのシズル感や思わず店頭で買ってしまう感覚は、少なくともここ数年はウェブでは勝てない。その思わず買ってしまったレシピを、(プロのレシピを通じて)シームレスにウェブにストックして日常使いできるようになる。また横断検索も提供することで、自分にあった雑誌がカジュアルに分かる」(加藤氏)。
実はクックパッドも、3月に宝島社から書籍「クックパッドの大好評レシピ」を発売している。約60万部のヒットとなりレシピ本へのニーズの高さを実感したのだという。プロのレシピを提供することで、料理雑誌やレシピ本の利用者が多い高年齢層の獲得を目指す。その一方で、クックパッドのメインユーザーである若年層の雑誌や出版社への認知拡大や販売ページへの誘導によって、見込み顧客を相互に流せる仕組みを作る。
プロのレシピでは、より多くのレシピ情報を提供する出版社ほど支払額が上がるレベニューシェアモデルを採用している。クックパッドでは現在、レシピを人気順に検索したり、管理栄養士が提案した献立が閲覧できたりする月額280円(税別)の「プレミアムサービス」と、「広告」の2つを収益の柱にしている。ここに「プロのレシピ」を加え、“3つの柱”にしていきたい考えだ。今後も順次、提携出版社や料理研究家を増やしていくほか、アプリ版も提供するとしている。
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