ソーシャルメディアと著作権 ~歌詞のつぶやきはOK?利用規約には要注意?

福井健策(弁護士・日本大学芸術学部 客員教授)2014年07月25日 11時00分

 連載折り返しを過ぎると同時に、夏がきました。いいですね、夏は!!

 さて、「18歳からの著作権入門」。今回から、実際に学校や社会生活、ネット上などで出くわす個別の著作権の問いに答えていきましょう。

 最初は、ずばりソーシャルメディアです。ソーシャルメディアとは、つまりLINEやTwitter、Facebookなど、ユーザー自身が発信者にも受け手にもなるネットの各種サービスです。広くは、YouTubeやニコニコ動画のような投稿サービスもソーシャルメディアです。つまり、ネットは多かれ少なかれ、どれも多少はソーシャルです。

 このソーシャルメディア、まさに著作権やプライバシーをめぐるトラブルの頻出分野で、トピックもあまりに多いので、以下、駆け足で注意点のみ説明しましょう。

何をつぶやいて良いのか?

 最初の疑問は、「ソーシャルメディアで好きな歌詞をつぶやいたり画像をアップするのは、どこまでOKか?」です。ここでの考え方の順番は、「(1)人の著作物を使っているか」「(2)引用の条件を充たすか」「(3)その他の例外にあたるか」です。

 つまり、(1)たとえば歌詞でもとても短かい部分だけなら著作物ではありませんから、許可なく自由につぶやけます(第2回)。「Let it go, let it go~♪」とか「世界にひ~とつだけの花♪」とか、恐らく大丈夫です。これに対して、もっと長い小説の名台詞をつぶやいたり、好きなアニメの一コマをアップする場合、理論上は著作物の利用です。この場合、つぶやく/投稿するという行為は著作物の「複製」「公衆送信」ですから、無断ならば著作権侵害になりかねません。実際、多くのソーシャルメディアの利用規約で禁止していますね。

 ただし、(2)「引用」ならば大丈夫です。つまり、コメントするとか出来事を報じる目的で対象作品の一部を紹介する場合は、以前説明した「引用の条件」を充たせばOKです(第9回)。それから、(3)建築物や屋外の美術作品は、撮影してアップしても適法でしたね。画面の端にポスターやキャラが写り込んでしまった場合も、大丈夫でした(共に第10回)。

 著作物のほか気をつけたいのが、「肖像」などの拡散です。人のプライベートな姿を撮ってアップするのは、肖像権という別な権利を侵害する可能性があるので要注意です。「アップしていい?」と聞くとか、明らかに公開されるとわかった上で相手が写っている場合でなければ、気をつけましょう。

 著作権でも肖像権でも、「つぶやきや投稿の公開範囲」は重要な要素です。著作権法では、ある程度の人数が見たりシェアできる以上、どんな範囲で公開しようが権利侵害になる可能性は一緒なのですが、現実には、広く一般に見られる場へのアップではより慎重さが求められます。逆に、数十人の友達しか見ない場では、多少は自由にふるまう人が多いでしょう。

 つまり、ソーシャルメディアと著作権などの関係を考える時に、前提としての法律知識は無論重要ですが、同時に鍵になるのは「どの程度やると相手の迷惑か」「怒られそうか」という常識というか間合いの取り方でもあるのです(少し意味は違いますが、「ネチケット」という言葉を使う方もいます)。正しい知識を持ちつつ、この間合いをきちんとはかれるユーザーになりたいですね。

 最後に「リンク」です。例えば、誰かが無許可で映像などをアップしている動画サイトにリンクを貼って、何かつぶやくだけならば、一般的には必ずしも違法ではありません。なぜなら自分はリンクで動画の場所を教えただけであって、自ら複製や公衆送信はしていないからです。とはいえ、悪質なサイトにわざわざ他のユーザーを誘うようなことをすると、不法行為といって責任が生じることもあります。やはりここでも「常識と間合い」が大事ですね。

 なお、こうした常識と間合いを間違えますと、しばしばネット上で「炎上」します。炎上は色々な文脈で起きますが、特に違法の疑いが強いアップをすると、炎上に対して言い訳のしようがなくなり、事態が拡大しやすいので、気をつけましょう。

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