通勤中の誰かに届けてもらうEC向け宅配サービス「CROSSTRACK」

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 この連載では、シンガポール在住のライターが東南アジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、東南アジアにおけるIT市場の今を伝える。

 ここ数回は、アジアのスタートアップシーンを紹介するウェブメディア「Tech in Asia」が5月に開催したカンファレンス「Startup in Asia」で取材したスタートアップ企業を断続的に紹介している。

自宅~職場の移動中に配達を依頼

 一人、もしくは少人数でEコマースサイトを運営している人の中には「荷物を送りたいが郵便局まで行く暇がない」、もしくは「宅配業者に依頼すると料金が高すぎて困る」と感じている人がいるかもしれない。そんな悩みを解決しようとするスタートアップがシンガポールにある。

 「CROSSTRACK」は荷物を手軽にかつ安く送りたい人と、空き時間や移動時間を使って収入を得たい人をマッチングするサービス。元々は生活に苦しむ貧しい家庭を助けるために、彼らの自宅から職場までのいつもの移動をうまく活用できないかという思いから生まれたアイデアだ。


「CROSSTRACK」

 荷物を送るには、まず氏名や電話番号、住所などを入力し会員登録をする。次に、依頼したい配送の緊急度を3種類から選択(2時間以内に集荷・配達したい「Urgent Job」、その日のうちに行いたい「Same Day Job」、明日までに行いたい「Next Day Job」)。続いて、送り主と配達先の氏名や電話番号、住所を送信する。

 次に、配送したい荷物の詳細を記入する。サイズは運ぶのに必要な車両のタイプで指定し、その他に重さや荷物の名称、価値、必要に応じてコメントを記述。最後に支払う希望の報酬金額と、決済方法を選択すれば、オーダーの内容がCROSSTRACKのサーバにアップロードされる仕組みだ。

 CROSSTRACKには、クーリエと呼ばれる配達人が100名強登録している。彼らのプロフィールは、タクシー運転手や外回りの多い営業マン、フリーランスの配達人や配達業者、仕事をすでにリタイヤした人などまちまち。配達の依頼者はクーリエを選ぶことはできないが、システムが評価の高い人を選んでくれるそうだ。

 一方で、自分がクーリエになるためには、同じく個人情報を入力する。こちらの方が提供を求められる情報は多く、配達に使う車両のタイプや番号なども記入しなければならない。さらにスタートアップの担当者から連絡があり、短いインタビューが行われる。そうしてようやく仕事を請け負うことができる。クーリエは専用のモバイルアプリで仕事を探すことができる。

月100件のオーダー、2014年には他国にも進出

 料金は荷物の内容やクーリエとの調整次第だが、午前9時~午後9時までの時間帯、区間が居住区内であれば概ね10~30シンガポールドルで配達してもらえる。深夜や早朝の時間帯は50%増しの料金となる。配達の代金は依頼する際に支払われる。支払い方法は事前に購入したクレジットを使用するか、もしくはPayPalを通じて行われる。

  • CrossTrackの共同創業者 Kay Ong氏

 万が一、配達の途中で荷物の破損などトラブルが生じた場合は、クーリエがCROSSTRACKに預けているデポジットによって補償される。預けるデポジットが大きければ大きいほど、クーリエはより大きな仕事を任せてもらいやすくなるそうだ。

 CROSSTRACKを通じて月におよそ100件強の配達が行われているが、サービスと同名のスタートアップは、新規の顧客をさらに獲得すべく電話での営業活動やプロモーションに力を入れている。今後は、収集した顧客データに基づいたリターゲティングの施策も検討する。一方で、クーリエを増やす手段としては対面でのスカウトもしている。信頼できる人を見つけるためには、それが一番有効なのだそうだ。

 同社によれば、東南アジアマーケットで同様のサービスを展開する企業は数社存在し、そのほとんどが同じくスタートアップだそうだ。スピーディに拡大し、いずれはシンガポール以外の国にも進出したい考えだ。2015年中にもう1カ国でサービスを開始する計画があるという。

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