美しさの基準は、「Photoshop」クリエーターたちの眼の中にあるともいえる。ラジオジャーナリストのEsther Honigさんは、美意識に対する文化的な違いを調べるため、世界中のグラフィックアーティストに依頼してPhotoshopを使った実験を行った。元になったのは、Honigさん自身を写した1枚のセルフポートレートだ。ノーメイクでスタイリストたちの手を一切借りていない、彼女自身を素の状態で写した写真だ。
Honigさんは、25カ国から40人のグラフィックアーティストを雇い、「私を美しく加工して」という簡単な指示を添えて、その画像の修正を依頼した。Honigさんは、「Fiverr」などのプラットフォームを利用してデジタルアーティストを探し出し、提供された画像ごとに5~30ドルの報酬を支払った。プロジェクト名は、「ビフォア&アフター」だ。
依頼されたアーティストの中にはプロもいればアマチュアもいる。出来上がった写真は、自身の美の基準を当てはめるように依頼された個人の作品だということを念頭に置いておくといいだろう。Honigさんは、「作品は、それ自体が魅力的で洞察に満ちている。1つ1つがクリエイターならではの個人的、文化的な美意識を反映したものになっている」と記している。
結果は、実に示唆に富んでいる。中には、Honigさんの元の画像にほとんど手を加えていない作品もある。ウクライナのアーティストは、彼女の肌を滑らかにして、うっすらと明るく加工したが、大体においてナチュラルな仕上がりになっている。一方、フィリピンのアーティストは、Honigさんの髪をおろしてボリューム感を出し、風になびいているような黒髪にし、さらに真っ赤な口紅とダイヤモンドのイヤリングを付け加えた。
米国のグラフィックアーティストの1人は、Honigさんを大きな青い目に変え、眉を整えて、頬紅をつけ、さらにミスコンの女王風のゴージャスな肩まで伸びる髪型に修正した。対照的に、モロッコ人アーティストの作品は、つつましくも色鮮やかなスカーフを頭に被っている。
Honigさんの実験は、Photoshopで過度に加工された雑誌の表紙の画像に対する私たちの見方を変えることにつながるかもしれない。こうした画像が実際にはありえない、非現実的な美を作り出していることが、これまでにさまざまな議論を呼んでいる。米国人が美しいと考えるイメージが、よその国の人や異なる文化的背景を持つ人にも印象的に映るとは限らないのだ。
Honigさんは次のように記している。「Photoshopによって、私たちは手に届かないような美の基準を達成することができる。しかし、こうした基準を世界的規模で比べてみると、理想の美を達成することにはまだまだ、捉えどころがない部分が多い」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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