UPDATE Amazonが音楽ストリーミングサービス「Prime Music」を提供開始した。「Spotify」やAppleが買収で取得する「Beats Music」などの競合サービスと同等の楽曲数を取りそろえるのでなく、米国にて年間99ドルで提供する「Prime」サービスにオンデマンドの音楽サービスを追加する戦略により、新規会員を獲得したい構えだ。
米国時間6月12日に提供開始されたPrime Musicは、3大レコード会社のうちの2社であるWarner Music GroupとSony Musicに加えて、複数の大手独立系レーベルの楽曲を100万曲以上取りそろえる。世界最大のレコード音楽会社であるUniversalの楽曲は扱っていない。
Amazonのワールドワイドデジタルミュージック担当バイスプレジデントを務めるSteve Boom氏は取材に対し、「この種のサービスの多くは、利用しきれないほど多くの楽曲をそろえている」と述べた。「利用者は、決して聴くことのない大量の楽曲にお金を支払っている」(Boom氏)
音楽サービスをPrimeサービスの一部として提供するというのは、独創的な試みだ。この試みは、競合各社がサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの適切なビジネスモデルをいまだに模索している現実を改めて浮き彫りにしている。Primeプログラムでは、Amazonで購入した対象商品の2日以内の配送、Netflixに似たビデオストリーミングサービス、そして、Amazonのタブレットおよび電子書籍端末シリーズである「Kindle」端末用の電子書籍レンタルというサービスを既に提供している。
各サービスが謳う提供楽曲数は「煙幕」だとBoom氏は述べた。Amazonでも、音楽ダウンロードストアでおよそ3000万曲を提供するが、そのうちの「かなりの数」がまったくダウンロードされないと同氏は述べた。
Prime Musicでは、新しくリリースされた楽曲が直ちに配信されるとは限らない。Amazonによると、一部の楽曲はリリース後すぐに配信できる契約を交わしているが、配信時期がずれる楽曲もあるという。「Windowing」(ウィンドウイング)として知られる戦略がとられるためだ。どの楽曲提供者とも、6カ月以上配信が遅れることはないように契約しているとAmazonは述べた。
このようなウィンドウイング戦略に同意することで、Amazonはライセンス料を抑えている。
提供楽曲が限られていることを考えると、音楽ストリーミングサービスの価値だけでAmazonが新規Prime会員を獲得する可能性は低い。しかし、音楽とビデオの両方に加えて、配送スピードと電子書籍がパッケージ化されており、他社で個別にこれらのサービスを申し込むより年間利用料が安いことが、Amazonの強みである。BeatsとSpotifyはそれぞれ、月額10ドルでサービスを提供する。Beatsは、99ドルでの年間登録も提供しているが、これは他の多様なサービスが含まれるPrimeの年会費と同じ価格である。Netflixの月額利用料は8ドルだったが、9ドルに値上げしている。
Prime MusicによってAmazonは、音楽ダウンロードとサブスクリプションの両方を提供する数少ない企業の1社となる。Beats MusicやSpotifyといったほとんどのサブスクリプション型サービスは楽曲ストリーミングを定額で提供しているが、SpotifyとPandoraはそれぞれ、広告収入型のストリーミングサービスを利用者に無償で提供している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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