ドコモ・ドットコムによる、モバイルビジネス・マーケティング情報誌「スマートフォンレポート」の最新号(Vol.12)より、スマートフォンの購入状況の一部をお届けする。
携帯電話業界において、毎年3月は1年で最大の商戦期と呼ばれており、入学や就職など4月から新生活を送るユーザーを中心に多数の携帯端末が購入され、市場が最も活性化する月である。直近半年において、各月のスマートフォン購入数を比較しても、3月はクリスマス商戦がある12月を上回り、全体の約4分の1を占めるほどである。この結果からも、3月の商戦期が各キャリアにとって最も重要な月ということがお分かりいただけるだろう。特に今年は4月からの消費税増税に伴い、例年以上にユーザーの需要が高まったことが推察される(図:1)。
注目すべき3月の端末購入動向は、調査結果から機種ごとの購入状況を見てみると、TOP3は引き続き各キャリアから発売されている「iPhone 5s」が占め、相変わらずの人気の高さを示した。ただし、これまではドコモのiPhone 5sがトップを守ってきたものの、3月においては僅差ではあるがソフトバンクモバイルがドコモを初めて上回り、トップとなっている。その一方で、1月までiPhone 5sに次ぐシェアをキープしていたiPhone 5cはシェアを落としている。発売から半年が経過し、廉価版であるiPhone 5cの人気が徐々に低下している傾向が顕著になったと言えよう。そのiPhone 5cに代わって人気を集めたのが、ドコモの「Xperia Z1 f(SO-02F)」や「ARROWS NX(F-01F)」、KDDIの「Xperia Z1(SOL23)」などのAndroid端末で、iPhone 5sに次ぐ結果となった(図:2)。
続いて端末購入傾向をキャリア別で見ると、2、3月ともにドコモが4割前後でトップシェアを獲得し、KDDIが3割前後、ソフトバンクモバイルが2割強という結果となった。年代別で見ると、20、30代ではドコモのシェアが高い一方、10代と50代においてはKDDI、ソフトバンクモバイルがシェアを伸ばすといった傾向が見受けられた。その要因としては、複数回線のMNPによる高額キャッシュバック施策に惹かれて、学生とその両親といった家族単位でキャリアを乗り換えたケースが多かったのではないかと考えられる。
実際、TCAの発表から契約者数動向を見ると、3月においてはドコモが9万3800件の流出、KDDIが5万2300件、ソフトバンクモバイルが4万6100件の流入となっており、ドコモから他キャリアへMNPを行ったユーザーが多かったことが証明されている。すなわち、ドコモにおいては端末購入者が多かった一方で、KDDI、ソフトバンクモバイルにおいては他キャリアからの乗り換え購入が多かったことが想定される(図:3)。
3月までのスマートフォン市場を振り返ると、キャッシュバックを目玉に押し出した異様な市場が形成されたように感じられる。端末の機能や販売価格、通信料等といったキャリアのサービスに大きな差異がないことが結果として価格競争を呼び、キャッシュバックという販売促進施策が、あたかもキャリアが提供するサービスとしてユーザーに受け止められていたのではないだろうか。
キャッシュバックはあくまで販売促進施策であり、一時的な効果しか生み出さないようにも感じられ、やはり利用し続ける上でのサービス面でいかに他社と差別化を図れるかが鍵になるのではないだろうか。実際、4月に入って、ソフトバンクモバイルから音声定額とパケット定額をパックにしたプランが、ドコモからは通話定額やデータ通信量の家族間シェアのサービスがそれぞれ発表され、大きな話題となっている。今後は各キャリアがキャッシュバックの金額を競うのではなく、サービス内容を純粋に競い合う市場が形成されることを期待したい。
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