Wearable Tech Expo

ウェアラブル技術はセンサとソフトの連携で多大な価値を生み出す--米Plantronics

  • Plantronics イノベーション&ニューベンチャー シニアディレクター/PLT Labs ヘッドのCary Bran氏

 東京港区で開催された、ウェアラブルテクノロジを考えるイベント「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」で、ウェアラブルデバイスメーカーの米Plantronics(プラントロニクス)のシニアディレクターで、開発部門“PLT Labs”のヘッドでもあるCary Bran氏が、「ライジングウェアラブル」との表題で、ウェアラブルの進化にまつわる課題と、その解決のために必要なテクノロジについて説明した。

 Plantronicsは、ユニファイドコミュニケーション対応の有線、無線製品を取り扱っている。音楽やエンターテインメント、ゲームからモバイル通信、インターネット通話、VoIPまでと適用範囲は広く、各種ヘッドセット、スピーカーフォン、電話機などをそろえている。同社ではこれらのソリューションにより、企業はIP通信を活用しやすくなり、ビジネス通信や効率性の向上につながるとしている。

 コンピュータは「ムーアの法則」効果などにより、形状は小さく、安価になってきた。電気通信の機器も、家庭や企業などに固定されていたものがモバイル化している。そしてインターネットが出現し、仕事のやり方や生活様式も大きく変わった。Bran氏は「コンピュータやインターネットがウェアラブルの根底にある。これからはウェアラブル技術を産業にしていかなければならないが、現状はさまざまなデバイスのデータが単体のまま散在し、サイロ化している。2020年には数千億個のデバイスが、インターネットで接続されるようになるとの予測がある。膨大なデータ、情報が生成されるが、それらがサイロ化していては意味がない。だが希望はある。既存の技術を活用することで、ウェアラブルを産業にすることはできる」と語り、その可能性に期待している。

 ウェアラブルが産業として育つには、3つの要素が必要だとBran氏は話す。「1つはインターネットが普遍的になり、どこからでも接続できること。2つ目は、仮想化技術の進展。これによりコンピュータのストレージはオフロードされ、ウェブ上でいわば無限の容量を持つことができる。さらに、コンピュータのパワーが仮想化されることの意義はたいへん大きい。CPUパワーもクラウド化されることで、端末のバッテリ駆動時間を延長できるからだ。3つ目は、大量なデータの解析だ。非構造化データをも分析することにより、新たな洞察が得られ、企業はそれらを活用できるようになる。従来、このような分析されたデータを用いるのは企業が中心だったが、今後個人も使えるようになり、個人が情報の軸になっていくだろう。1人1人、データ分析を活用できるようになる」。

  • 産業という視点でウェアラブルを捉えるPlantronicsが考える“方程式の解”

 Plantronicsは「製品という発想ではなく、産業という視点で、ウェアラブルを捉えている」(Bran氏)とする。「ウェアラブル技術は、それを使用する人に価値をもたらすものでないといけない。さまざまなセンサを組み込んだデバイスは、エンドユーザーの抱える問題を解決できなければならない。スマートセンサは、データを集め、ソフトがそれをクラウドに送る。ウェアラブル技術、センサ、ソフトの3つの基盤が、変革を促進する。今後はここにコンテキストが求められる。コンテキストは、ほかのベンダーから提供されるものだ。位置情報など多様だが、これを活かすには、高度なユーザーエクスペリエンスが必要であり、それが方程式の解」(同)となる。

 同社はスマートセンサを搭載したヘッドセットをすでに供給している。例えばウェアラブルデバイスからの距離が遠いか近いかを検知できる機能がある。また、PCや携帯電話など、どの機器とつながっているかも、ウエアラブルデバイス側で認識できる。このような技術をCRM(顧客管理)と連携させ、企業は顧客に必要とされる商品を勧められるという。

センサ技術の進展で、プライバシーへの高い配慮がいっそう必要に

  • プラントロニクスがデバイスを製造する場合の基礎となる要素

 同社がデバイスを製造する場合の基礎となるのはセンサ、アプリケーション、処理性能、相互運用性など情報の輪と呼ばれるものであり、ほかのベンダー、パートナーなどと共有する。「優れたウェアラブルのエクスペリエンスは単独のメーカーが提供できるものではなく、複数のデバイスが複数の企業から出されることでしか、成し得ないから」(Bran氏)だ。

 さらに、この情報の輪で重要になってくるのは、プライバシーであるという。たとえば、あるウェアラブルデバイスが、雨量、湿度などを計測できるとする。それらのデータは、パブリックなウェブサイトで公開しても良いが、そのデバイスがユーザーの心拍数や発汗量なども計測できるとすれば、これは個人情報であり、本人だけが管理できるようでなければならない。Bran氏は「ウェアラブルテクノロジでは、データがどこにあり、誰がそれを所有するかという、プライバシーへの配慮が非常に重要になる」と話す。

 また処理性能では、バッテリの駆動時間、消費電力の抑制が要点となるとともに、相互運用性、接続性を支える標準規格なしには、M2M(Machine to Machine)や、ウェアラブルデバイスの連携はおぼつかない。小型化も不可欠だ。

 これらのほか、Bran氏が「このようなデバイスを作る際、見落とされがち」と指摘するのは、Ergonomics(人間工学)だ。どんな利便性を備えたデバイスであっても、使いにくくてはどうにもならない。同社の場合、ヘッドセットを製造する際には「耳にフィットするよう多数の人々の耳型を採り、標準偏差を算出して90%の人々の耳にフィットするようにしている」(Bran氏)という。

個人の課題に、ウェアラブルデバイスが解答を出す

 Bran氏は、クラウドにある情報を活用していく上での重要な指針に言及した。「デバイスは相互連動できなければならない。デバイスはクラウドにつながっていなければならない。またそれらにかかわるコンテキストをつながなければならない」とする。

 ウェアラブル技術による、より良いユーザーエクスペリエンスとして、次のような例があるという。医師と相談して、健康の目標を設定したとする。プロフィールはクラウド上にある。さまざまなウェアラブルデバイスを身に着け、それらは心拍数、歩数などを計測する。あるいはベルトがどれだけきついかを測ることもできる。これらのデバイスが連動し、何歩歩いたか、どれくらいカロリーを消費したかもわかる。ウェアラブルデバイスはプロフィールに基づき、必要な情報をクラウド、あるいはSNSなどから探し出し、健康状態をみながら摂取すべきカロリー、フィットネスの目標などについて答えを出してくれる。

  • オフィス用ヘッドセットの「Voyager Legend」

 同社は、Bluetooth対応のオフィス用ヘッドセットの「Voyager Legend」を販売開始している。固定電話、携帯電話への接続ができ、「Smart Sensorテクノロジー」により、耳に装着するだけで自動的に着信に応答できるほか、携帯電話とヘッドセット間で自動的に着信が転送される。

 この製品のコンセプトモデルは300個制作したとのこと。加速度計などをセンサとして備え、装着者の頭部の動きを検知する。装着者が倒れたとしたら、その状況が認識され、危機的状態であれば、それを知らせることも可能だ。

 ウェアラブルのソリューションは「インフォテインメント、医療、産業分野で、より安全な作業ができるような仕組み。あるいは、年老いて、離れて暮らしている肉親の安全確認にも応用できる。ビジネスの現場では、ウェアラブルのGPS機能などを活かし、会議室に入った時点で、すでに会議室のさまざまな準備ができている、などということも可能だ」とBran氏は述べ、ウェアラブル技術の多様性を強調した。

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