Wearable Tech Expo

コイン型デバイス“Shine”が目指す究極のウェアラブル--楽しくファッショナブルに

齋藤公二 (インサイト)2014年03月28日 08時00分

 3月25~26日に開催されているウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」。Misfit Wearables(ミスフィット・ウェアラブル)でコミュニケーション・リードを務めるAmy Puliafito氏が登壇した。

Amy Puliafito氏
Amy Puliafito氏

 「ナチュラルに楽しく、ファッショナブルなウェアラブルのススメ」と題し、同社が展開するコイン大のアクティビティモニタ「Shine」の開発コンセプトやWearableコンピュータとファッションの関係、ヘルスケア分野での取り組みなどを語った。

 Puliafito氏は、Misfit Wearablesが展開するWearableデバイスShineについて、「これまでのWearableデバイスは、プラスチック製で、テクノロジ中心。皆がなぜ身につけるのかという視点が欠けていた。シリコンバレーには優秀なエンジニアがたくさんいるが、ユーザーの存在やソーシャルな視点が忘れられがちだ。われわれは、ユーザー中心のアプローチで、ユーザーがなぜWearableデバイスを身につけるのかという視点から製品を開発している」と説明した。

 Misfit Wearablesは、医療ベンチャーAgaMatrixの共同創設者だったSonny Vu氏、同CTOのSridhar Iyengar氏、元アップルCEOのJohn Sculley氏らが2011年に設立したスタートアップ。Misfitという社名は、アップルの有名なCM「The Crazy Ones」の冒頭のセリフ「Here’s to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers.」に由来している。

「Shine」
「Shine」

 Shineは、オールメタル製で円盤状のデザインのアクティビティモニタだ。円盤状の本体にアクセサリを取り付け、ネックレスやリストバンド、クリップ(クラスプ)として身につけて利用する。iOSやAndroidアプリとBluetooth経由で同期し、ランニングやウォーキング、スイミングなどのアクティビティを記録する仕組みだ。

 電池内蔵式(CR2032)で4カ月間稼働し、水深50mまでの耐水性を備える。本体をダブルタップするとその日のアクティビティへの到達度が時計の文字盤のようにランプ表示されるなど、使いやすいインターフェースも特徴だ。日本では2013年から販売を開始しており、アップルストアで購入することができる。

 Puliafito氏は、他社製品と差別化する大きなポイントとして、シャツ、ブローチ、ブラ、腕、リスト、ヒップ、シューズなど「どこにでも身につけられること」、ランニングやスイミングといったスポーツ時だけでなく、通勤時やフォーマルなシーンなど、「あらゆるシーンで身につけられること」を挙げた。

3人の共同創設者
3人の共同創設者

 「ふだんから身につけてもらうために、デザイン、ファッション性、ユーザビリティにこだわった。これは、ちょっとだけWearableというのではなく、究極のWearableでなければならないということ。どんなシーンであってもデバイスを外さず、また、外すことができないほどに、身につけるのが楽しく、ファッショナブルで、かかわりをもっていたいと思えるようにすることだ」(Amy Puliafito氏)

 そこで、ユーザーが苦痛に感じるような点を極力なくすために、アルミを円盤状に削りだすフリクションレス(摩擦のない)のデザインを採用した。また、楽しさやファッション性を出すために、ネックレスやクリップなどのアクセサリ、カラーバリエーション(4色)を提供した。

六本木のミッドタウンで行われた「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」
六本木のミッドタウンで行われた「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」

 こうしたデザインはユーザーからのフィードバックが元になっている。たとえば、ネックレスは、クラウドファウンディング「Indiegogo」で資金を募る際にユーザーから寄せられた意見を採用したものだ。「アクティビティモニタをどこにつけるか?」という質問に対し、最も多かった回答がネックレスだったという。

 「アクティビティモニタ市場ではわれわれは後発。先行するたくさん製品を利用したユーザーから多くの話を聞けたことが製品開発での大きなメリットになった。ユーザーをよく観察し、プロトタイプをつくり、それに対するフィードバックを得てさらに開発を進めた」という。

 耐水性を高めたのは、「アクティビティモニタをなぜ外してしまうのか」という点をヒアリングしたところ、「スポーツのあとシャワーを浴びるから」「洗濯してしまうから」といった声があったことが理由だ。また、充電が必要なことに対する不満が多かったことから、電池式にして、ほとんど何もしなくてもよいようにした。製品開発の多くのシーンで、このような顧客のフィードバックが生かされているという。

 Puliafito氏は、従来の“Wearable 1.0”と、これからの“Wearable 2.0”の違いについてこう説明する。Wearable 2.0で求められるのは、「デバイスの存在が自分のファッションとぶつからないこと」「環境に溶け込んでいること」「常に身につけたいと思うこと」「家に忘れたときに取りに帰ろうとすること」「コストがかからないこと」「洗濯したり簡単に捨てたりできること」「PCやスマートフォンなど既存のデバイスと共存できること」という。

 「たとえるなら、Wearable 1.0は、映画「トロン」に登場するような機器を装着した“Iron Man”。これに対してWearable 2.0は、機器の存在感がなくネックレスをつけた“Fashionable Man”。われわれが追求するのは、ファッション、色、アクセサリといった見せ方、楽しさだ」とアピールした。

 またPuliafito氏は、新たな取り組みとして、ヘルスケア分野でのデータ収集や分析を挙げる。ヘルスケア分野では、患者のセンサから得られるデータを医療に生かそうとする取り組みや、それらデータを用いた遠隔医療の取り組みが進んでいる。だが、それらのデバイスでは「楽しく、ファッション性があり、人々を巻き込んでいく」という視点が欠けていたという。今後は「そうしたヘルスケア分野で、楽しく、ファッション性がある、美しいモノを作っていきたい」と講演を締めくくった。

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