3月25~26日に開催されているウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」。25日の「ウェアラブルはIoTの夢を見るか?メイカーズが創造する新時代」と題したセッションでは、IoT(Internet of Things : モノのインターネット)の流れの一つであるウェアラブルの盛り上がりと現場の取り組みについて、TelepathyCEOの井口尊仁氏とCerevo代表取締役CEOの岩佐琢磨氏が語った。
井口氏は、米国のテキサス州で行われる音楽の祭典であるサウスバイサウスウエスト(SXSW)において、クラウドファンディングサービスのKickStarterに日本のベンチャーがプロジェクトを掲載し、資金調達を行うことが一般化し始めたことで、日本のものづくりベンチャーへの注目の高まりを世界的に感じているという。
ウェアラブルデバイスを含めたIoTの盛り上がりの中で、岩佐氏は「ウェアラブルというワードはバズワードにすぎない」と指摘。Google GlassやNike FuelBandなどの登場により、それらを総称したものをウェアラブルと名づけて盛り上がっているにすぎないという。「業界全体が盛り上がることはいいことだが、あまり大きな期待をしすぎないように注意が必要」と語る一方、ネット環境の充実やテクノロジの進化によって、ものづくりに取り組むハードルは下がったと語り、だからこそバズワードにもなってきたと話す。
「起業のきっかけに、ネットで世界を変えたいという思いがあった。すでに、ネット上には誰もが思いつくサービスは山ほど存在する。しかし、ハードウェアでこんなものがあったらいいよね、といったものは少ない。例えば、天候によって傘立ての色が変わる『IoTの傘立て』。傘立てと天気予報の情報が連動しただけの簡単なものだが、こんなちょっとした便利なものやニッチだけどニーズがあるものを、画面の中だけではなくハードウェアで解決したい」(岩佐氏)
メイカーズの盛り上がりでさまざまなベンチャーが誕生することで、将来的には自分の趣味や趣向に合わせてハードウェアを選択する時代が来るのではと岩佐氏は語る。
「街を歩く人と自分の服がほとんどかぶらないのは、産業革命によって誰でも簡単に洋服が作れるようになったから。ハードウェアの敷居が下がると、個々人の価値観に合わせたハードウェアを持ち歩くようになるかもしれない。それくらい敷居が下がってきてほしい」(岩佐氏)
現在Telepathyを起業して一年を経た井口氏は、メイカーズの難しさについて指摘する。
「メイカーズは2つの課題を抱えている。それは製造・流通と販売。特に資金獲得や事業計画は、ITベンチャーと違い工場などのステークホルダーが多く、見積りや業界の慣習といった文化を知ることがまず大事になってくる」(井口氏)
メイカーズを支える方法として、VC(ベンチャーキャピタル)からのファイナンスの機会を作ることが大事だと岩佐氏は語る。
「製造・流通と販売はVCも必ず聞いてくる質問。しかし、販売は正直言ってわからない。みんなが売れると思ったものはすでに誰かが製品化しているので、創業者の思いなどで補完するべきかもしれない。大事なのは、製造という問いに対してどう対応していくか。アイディアではなく、モックやプロトタイプがあることが大事」(岩佐氏)
華やかなイメージで語られがちなメイカーズだが、最後に大事になるのは泥臭いビジネスの部分だと岩佐氏は指摘する。中国の工場や部品屋事情、メイカーズ独特の資金繰りなどは、経験者でないとないとわからないものも多い。
「Telepathyを起業した時から、メーカーの方々や、岩佐さん含めた多くの人たちに日々アドバイスをいただきながらやってきた。半導体メーカーや工場の人は一般的に出会えないからこそ、紹介やツテが重要になる。彼らが持っている知見はこれまでほとんど外に出ていないが、これからはこうしたノウハウが活きてくる。日本発のものづくりで世界に発信できるものは多い」(井口氏)
工場などの情報をオープンにすることは、結果的に業界全体としても盛り上がるきっかけにもなるという。中国の工場がクライアントとして日本企業をこれまで以上に相手にすることで、求められているクオリティを理解し、精密な製品を作れるようになってくることが予想されると岩佐氏は語る。
「半導体メーカーや工場の人とベンチャーのマッチングはとても重要。日本企業と中国の工場をマッチングさせることは、業界全体を大きくサポートできる。これまで自分たちが苦労の結果得たノウハウをもっとシェアし、日本発で世界に誇れるものを多く作ることに貢献していきたい」(岩佐氏)
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