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Internet of Things

ITやM2M、クラウドで農業を変革--ルートレック・ネットワークスの挑戦

別井貴志 (編集部)2014年03月20日 10時00分
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 ITが社会に浸透していく中で、これまでネットワークとは無縁だったさまざまなモノが、ネットワークにつながっていく「Internet of Things(IoT、モノのインターネット)」の広がりは、あらゆる業種や産業のビジネスを変革すると期待されている。

 そこで、今回は農業を考えたい。日本の農業の課題、問題点は数多くあるが、その中でも深刻なのは、「高齢化による農業衰退と農業就業人口の減少、肥料による環境汚染だ」とするのは、ルートレック・ネットワークスの代表取締役社長である佐々木伸一氏だ。実際に農業就業人口は2007年の311万人から、2012年の251万人へと19%減少しており、平均年齢は同64.6歳から65.9歳へと高齢化している。また、過剰施肥により窒素は地下水に硝酸の形で溶脱して、環境汚染につながっているとも指摘されている。

 ルートレックはもともと2001年に創業したが、2005年にMBO(経営陣による買収)のかたちで新たに出発した。ネットワーク技術、無線技術、センサー技術、M2M(Machine to Machine)技術、クラウドなどを活用して、ネットワークツールや管理ソリューション、M2Mプラットフォームなどを開発、提供している。そして、農業クラウドシステムやICT養液土耕・施設栽培(ビニールハウスなどの構造物の中で野菜や果実、花卉などを管理栽培することで施設園芸ともいう)支援システム「ZeRo.agri」の農業分野、事業も本格化しつつある。

 こうした、いわゆるIT企業だが、そもそも「エコロジーとビジネスの両立を実現する」という企業理念がある。IT技術の革新により便利で住みよい社会が築かれ、自動車やPC、インターネット、モバイル機器など身の回りにはIT技術が浸透してきている。しかし、この便利さの影には地球資源の減少やエネルギー問題、森林の減少など大きな課題も山積みになっており、IT技術をさらに活用する事で、地球に優しい技術革新とビジネスの継続を両立させることは、未来の企業価値の証になるというわけだ。

農業の変革にかける熱い想いを語ってくれたルートレック・ネットワークスの代表取締役社長である佐々木伸一氏 農業の変革にかける熱い想いを語ってくれたルートレック・ネットワークスの代表取締役社長である佐々木伸一氏

 また、佐々木氏自身は明治大学工学部を卒業後に日本モトローラ、ウェスタンデジタルなどIT畑を歩んできたが、1990年代にはアイシスという企業を設立し、米カリフォルニア・クパチーノを拠点に、いまでいうインキュベーション事業を展開した。10年間でスタートアップ20社を担当し、IPOやM&Aを手がけるなど、ベンチャースピリットやインキュベーターの能力も併せ持つ。

 佐々木氏は、「その頃に米国のITに対するみんなの思い入れを学んで、これは自分でやった方がおもしろいと思い、今のルートレックを創業した」という。そして、農業分野については、「農業の方々は休日がない。IoTやM2Mを活用することで農業に携わるみなさんにも土日は休んで欲しいと思った。工学部出身者がその視点で農業に挑戦することによって、今まで農業の人達にはわからなかったことも、改良や改善の余地が出てくるのではないかと考えた」という思い入れだ。

 しかし、最初からこうした農業への考えを実行したわけではない。「IoTがようやく現実味を帯び始めてきたのが、2006年から2009年くらいだったと思う。そのころは、ネットワーク構築から障害対応までをワンストップで対応するネットワーク運用管理ソリューション『RouteMagic』を主力に、組込みWi-Fiモジュールによるリモート管理ソリューション『ワイヤレスM2M』を手がけ始めたときだった。最初は年間で100を超えるようなものすごい引き合いがあった」と佐々木氏は振り返った。ワイヤレスM2Mは、リモートで機器の稼動を監視し、各機器からのデータ情報を収集してネット経由でその情報をサーバに蓄積する。

 たとえば、自動販売機を例にすると、従来手法ではスタッフが自動販売機を定期巡回して在庫管理と製品補充をし、その集計データなどを営業所に戻って手入力していた。自動販売機にワイヤレスM2Mを組み込めば、定期巡回の必要はなく、各自動販売機の在庫データをWi-Fiとインターネット回線で営業所などのサーバへ送るといったことが可能になる。

 しかし、実際には佐々木氏によると、「最初のすごい引き合いは、興味本位というか、とりあえず使って見るかという面が強く、結局量産化にいたった案件はきわめて少なかった。よくよく聞いてみると、たしかにデータは吸い上げているが、それが目的化しており、何に使ってどう活用したらいいかわからないということだった。それと、もう1つは当時産業界の方がたはネットワークやサーバにうとい面もあって、システムを組めたとしても、なかなか機器と機器がつながらない、サーバにデータが届かないといったこともあった」という。

  • Wi-Fi活用のM2Mプラットフォーム「ZeRo」の概念図

 そこで、これはクラウドも活用してさまざまな部分を自動化しなければならないと考え、Wi-Fi活用のM2Mプラットフォーム「ZeRo」の開発につながった。ただし、これでもなかなかうまい具合には進まず、「これは事例をつくらないと難しいと考えた。インターネットとかクラウドとか、あまり馴染みのない方々でも、IoT、M2Mというものをこんなに簡単に使えて便利に活用できますよと。そこでいろいろ考察し、農業が一番入りやすい市場ではないかと思った」(佐々木氏)のが、農業分野を手がけるきっかけとなった。

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