確かに、「Pono」は響きのいい名前ではないし、新しい音楽ファイル形式ではない。だが、遂に提供が開始される。何年も前から憶測が流れ、延期が繰り返されてきた「PonoPlayer」が2014年3月、ようやくKickstarterで公開された。
Neil Young氏のPonoエコシステムは、2つの異なるプラットフォームで構成されている。ハードウェアのPonoPlayerとウェブストアの「PonoMusic」だ。
「MP3プレーヤー」はオーディオマニアの間では禁句のようなものだが、PonoPlayerは本質的にMP3プレーヤーである。ハイレゾ音源(24ビット/192kHz)を再生できるように設計されているが、FLAC、ALAC、MP3、WAV、AIFF、AAC(DRMフリー)フォーマットとの互換性もある。ほかの多くのMP3プレーヤーにもこうした機能はあり、一部のプレーヤーはハイレゾ音源の再生にも対応する。
「iPod」の類似製品が溢れるなかで、PonoPlayerのデザインは間違いなく異彩を放っている。高さ5インチ(約12.7cm)、幅2インチ(約5.08cm)、厚さ1インチ(約2.54cm)の小型デバイスだ。iRiverは2000年代中期、PonoPlayerによく似た三角形のプレーヤーシリーズ(「T60」「T50」など)を販売していたが、こうした「Toblerone」のような形状のプレーヤーはもう生産していない。その決定には使い勝手が関係しているのかもしれない。
デザインは過去に目を向けたものかもしれないが、PonoPlayerは決して「レトロ」なデバイスではない。タッチスクリーンと計128Gバイトのストレージを搭載する(64Gバイトの内蔵ストレージとmicroSDスロットに装着された64Gバイトのカード)。興味深いことに、「PonoMusic公認の楽曲」を聴いているときに光るライトも備えているが、これが何を意味するのかは今も謎だ。単に24ビットのファイルを検知しているだけなのだろうか。
PonoMusicは「この形状」について、「フラットなバッテリよりはるかに効率的な円筒形の大型バッテリ」の搭載が可能になるなど、いくつか利点があると述べている。同社によれば、片手で持ちやすく、それでいてデスクトップやホームステレオシステムの上に平らに置くことができ、その状態でもディスプレイを確認できるという。PonoMusicはまた、「一切妥協することなく」最高音質のオーディオ部品を搭載できたとしている。
Digital Audio Reviewによると、PonoPlayerはESS Technologyの「Sabre 9018」DACを搭載するという。これはOPPO Digitalのハイエンドプレーヤー「BDP-105」に搭載されているDACと同じものだ。PonoPlayerはヘッドホンとラインアウトの2つの出力端子を備えている。ハイファイ機器と接続するときに役立つだろう。
PonoPlayerは標準でブラックとイエローの2色が用意されるが、急げば今からでもアーティストのサイン入りの限定版を入手できるかもしれない。限定版はKickstarterのページから400ドルで購入でき、Neil Young氏自身はもちろんのこと、Willie NelsonやArcade Fireといったアーティストのサイン入りモデルが用意されている。
同プレーヤーはMicro-USB接続経由で、PCや「Mac」のPonoMusicアプリと同期する。アプリでは、音楽を整理できるほか、24ビットのFLACフォーマットの新しい楽曲をウェブストアから購入することも可能だ。
Neil Young氏は当初、Meridianと共同でPonoPlayerを開発すると発表したが、開発作業はAyre Acousticsに引き継がれたようだ。
2014年10月の発売後、PonoPlayerが成功するかどうかを予測するのは難しい。しかし、筆者個人としては、この小型デバイスがインクジェットプリンタやゲーム機のようにトロイの木馬としての役割を果たすかもしれないと考えている。つまり、デバイスを(比較的)安価で提供し、それを購入した人が消費財にたくさんのお金を使う。Neil Young氏とその友人たちがレコード会社を説得し、丹念なマスタリングを施したデジタル音楽をPonoMusicで「独占的」にリリースしてもらうことに成功すれば、人々はどんなプレーヤーを使っているかに関係なく、そうした音源に喜んでお金を払うだろう。
ソニーからサムスン、DTSまで、多くの企業がハイレゾ音楽のメインストリームへの普及に期待している。それが実現すれば、ハイファイ機器を売り込むことができるからだ。そして、Neil Young氏のような影響力のある人物の力を借りることができれば、それらの企業にも実際にチャンスがあるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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