ビズリーチ南社長に聞くアジア有料転職サイト「RegionUP」の手応え--日本市場との違いは?

 有料会員制の転職サイト「ビズリーチ」を運営するビズリーチが2012年10月に立ち上げた「RegionUP」が好調のようだ。RegionUPは、シンガポールや香港を中心としたアジア太平洋地域に特化した有料会員制の転職サイトで、年収10万ドル以上のビジネスパーソンと企業・ヘッドハンターをつなぐプラットフォームとして、β版の時期も含めると2年弱サービスを提供してきた。

 RegionUPのこれまでの歩みやアジアにおける転職市場の現状を、ビズリーチ代表取締役の南壮一郎氏にシンガポールオフィスで聞いた。


ビズリーチ代表取締役の南壮一郎氏

サービス開始から2年--アジアならではの特徴は?

――1人でシンガポールオフィスを立ち上げ、「RegionUP」のグランドオープンまでに約400人のヘッドハンターを集めたそうですね。

 立ち上げ期だった2010年は1年のうち7割をシンガポールで過ごしました。最初は企業やヘッドハンターに対してテレアポや飛び込みで営業をしていて、1日に7社回ることもありました。また、優秀な人材を採用するために100人以上の面接をしましたね。

――ビズリーチの特徴ともいえる「求職者課金モデル」はアジアでも受け入れられたのでしょうか。

 日本でビズリーチを始めた時もそうでしたが、このビジネスモデルを話した相手は口をそろえて「求職者がお金を払う訳がない。不可能だ」と言いました。しかし、人それぞれ価値観は異なりますし、新規事業に限らず全員に賛同してもらえるビジネスはありません。

 ビジネスにブレイクスルーする瞬間なんてものはなく、ただ波を待つしかありません。波がきた時にしっかりとした準備ができていることが重要です。RegionUPには、まだその波はきていません。しかし、私1人でシンガポールオフィスを立ち上げて、今は10人規模のチームにまで拡大してます。数字は言えませんが、皆さんが驚くような成果も出てきています。

――日本と他のアジア諸国で転職に対する考え方は異なるのでしょうか。

 日本と比較するとアジアの人たちはキャリアアップやキャリアチェンジに積極的です。求人に対する応募数なども日本と比較すると多いのではないでしょうか。

 日本の転職市場は求職者のデータベースが企業に可視化されていませんでした。そこをビズリーチが可視化してブラックボックスをなくすことで、転職市場のルールを変えました。アジア、特にシンガポールの主要転職サイト「JobStreet」ではすでに可視化されているので、そういう意味では、シンガポールの方が日本よりも先を行っています。付加価値を作るポイントが日本とは異なるということです。

 現状、RegionUPのようなハイクラス特化型のサービスはとても少ないため、会員の質と案件の質の両方を担保していきたいと思っています。特に、良質な案件を獲得することを重要視して活動をしているところですね。

――これまでの活動で得た教訓は。

  • 「RegionUP」のトップページ

 アジアのビジネスは、マーケットを一番理解しているアジア人と一緒にやらなくてはいけないということです。RegionUPのチームは、JobStreetからチームごと引き抜いたマレーシア人、シンガポール人、フィリピン人で運営しています。現地の人たちが自分たちで考えてアウトプットできるように、チームのローカライズをしているんです。

 また海外でビジネスを展開する時は、グローバルな人材を送らなければいけません。ソフトバンクの孫さんも、楽天の三木谷さんも、ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場さんも、全員海外の大学を卒業したグローバル人材です。バイリンガルで英語が話せることも大切ですが、バイカルチュラルであること、つまり異なる文化に踏み込んでそれを理解したいと思えることが重要なのです。ビズリーチの場合は、それが私でした。

――海外に進出したからこそ、日本市場について感じることはありますか。

 日本の転職市場は予想以上に大きいですよ。以前、シンガポールの官僚の知人と話をした際に「お前はバカか」と言われたことがあります。「日本は中国と比べて人口は10分の1だけど、経済規模では負けてない。さらに日本語という強烈なバリアがある。まずはそこで成功するべきだ」と。その言葉の通り私はすぐに東京に戻り、1年で売り上げを倍にしました。

 経営者は日本にはまだまだ伸びしろがある、ということを理解した方がいいでしょう。また、自社のビジネスは本当にグローバルで展開すべきなのかを改めて考えるべきです。ビズリーチが海外進出を検討していた時は、アジアのローカルIT企業が不動産と人材で成功していました。そうした先行事例もあり、海外でも通用するという確信がありました。つまり、“ファッション感覚”なら海外進出すべきではないということです。

――最後に「RegionUP」の今後の目標を教えて下さい。

 毎月続いている猛烈な成長をさらに加速させたいと思っています。

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