楽天が「Viber」を、Facebookが「WhatsApp」を買収するなど、競争が激化しているモバイルメッセージアプリ市場。日本では「LINE」が圧倒的な支持を得ているが、韓国では「カカオトーク」が人気だ。
カカオトークの共同創業者 兼 CEOのLee Seok-woo氏は、2月末にスペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2014」でスピーチし、同社の成長戦略を語った。Lee氏は、カカオトークの戦略を「We(我々)」と表現する。ここで言う“我々”とはコンテンツや通信事業者らパートナーを指し、共同でモバイル市場を成長させていきたいという思いが込められている。
Lee氏はまず、カカオトークの経緯から話しはじめた。シンプルなテキストメッセージサービスとして2010年3月に誕生したカカオトークは、4人のメンバーによって約2カ月で作られた。その後サービスは急成長し、現在は世界約25カ国14言語で利用されているという。ユーザー数は1億3000万人にのぼり、毎日55億件のメッセージが送られているそうだ。
中でもお膝元の韓国では、73%という高いスマートフォン普及率に支えられ、カカオトークユーザーは網の目のように広まっていった。カカオトークは韓国で最も使われているメッセージアプリで、2013年末時点で同国のスマホユーザーの93%に利用されているという。その数はFacebookをも超える。「マーケティングをせずにユーザーを獲得した」と話すLee氏は、今ではカカオトークが「韓国語で“keep in touch”(連絡を取り合う)を意味する言葉になった」と胸を張る。
ユーザーの増加にともない、カカオトークはメッセージサービスからモバイルソーシャルプラットフォームへと進化した。カカオユーザーは平均して180人の友達とつながっている。「このネットワーク(=ソーシャルグラフ)を通じて新しいコンテンツやサービスが発見される」とLee氏は述べる。ソーシャルグラフはカカオトークの重要な事業土台となり、この上に新しいサービスを次々にローンチしてきた。
たとえば写真共有サービス「KakaoStory」は公開から9日間で10万人を集めた。現在は5500万人が利用している。「これがソーシャルグラフのパワーだ」とLee氏。モバイルゲームもヒットしており、売上げは10億ドルに達しているそうだ。韓国の「Google Play」のゲームカテゴリでは上位40位中30タイトルがカカオのゲーム、「App Store」でも上位40位中20タイトルを占めているとのことだ。
ここでLee氏は西と東の文化の違いについて語った。西洋では個人が強く“相手と自分(You and I)”であるのに対し、東洋は“我々(We)”であるとし、カカオトークのサービスの基本精神も“We”にある、と続ける。「1人のYouではなく、複数のYouが結びついてグループとなる。このグループが価値を生むには、また人々をコネクトすることで価値が生まれるにはどうすればよいか。これでビジネスを定義している」(Lee氏)。
先述のゲーム、そして絵文字、音楽、ギフト、送金などのサービスの拡充はそれに基づくものだ。ゲームでは200人以上の開発者によって400以上のタイトルが提供されており、絵文字では300人以上のアーティストが参加している。本、音楽、動画などのデジタルコンテンツでは、900社以上がカカオユーザーにコンテンツを提供している。これらのパートナーと売上をシェアする、というのがカカオトークのビジネスモデルだ。
「新しいイノベーション、新しい技術を使ってどうやってユーザーやパートナーと価値を共有するのかを考えている」とLee氏。そのため新機能はユーザーの意見を重視して開発しているという。
“We”という考えのもと、カカオトークは通信事業者ともパートナーとして事業に取り組んでいく。現在、東南アジアの通信事業者とデータプランの提供で協業しているとのことだ。通信事業者からすれば、自社の無線ネットワークの上でメッセージや音声通話サービスを提供するカカオトークは脅威になりかねない。しかし、Lee氏は「通信事業者はデータの利用者を増やしたいというニーズがある。我々は一緒にビジネスを作っていく」と協業の姿勢をアピールする。
カカオトークのようなメッセージサービスは、業界にとってDisruption(既存の崩壊)なのか、Innovation(革新)なのか――「答えは両方だ。DisruptionとInnovationは共存できる」とLee氏は語る。「Disruptionなしには変化は起こりえない。新しいサービスを作るInnovationを信じている」(Lee氏)。
最後にLee氏は「スマートフォンがモバイル新時代をもたらした。我々はその入り口にある」と語り、カカオトークでは引き続きパートナーと共同でイノベーションを起こし、ユーザーに価値を提供していくとした。
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