2013年のモバイル業界

山根康宏が振り返る2013年のモバイル業界--MSのノキア買収に衝撃

 スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2013年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は山根康宏さんに、注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。

――2013年のモバイルニュースを3つを選ぶとしたら何ですか。

 マイクロソフトによるノキアの買収が最大の衝撃でした。スマートフォン業界ですっかり存在感を失ってしまったノキアではありますが、低価格モデルを中心にLumiaシリーズの販売量は上向いています。

 製品ラインアップも往年を思わせる多機種展開を始めており、2014年以降が楽しみだったのですが、Windows Phone OSのスマートフォン事業の立て直しを図りたいマイクロソフトにとって、同社の買収こそが唯一の生き残りの道だったのだと思います。

 これでノキア、エリクソン、モトローラというGSM時代の御三家メーカーすべてが事業形態を変更することになります(モトローラはグーグルの端末部門という位置づけ)。長年海外市場を見てきた筆者には一抹のさみしさもありますが、マイクロソフト傘下となったノキアやLumiaブランドがどのように進化していくか期待したいです。

 2つ目が、チャイナ・モバイルがTD-LTEサービスを開始したことです。3Gでは独自規格にこだわったあまりサービスの開始が遅れ、国家的イベントに合わせてサービスインするという強引な戦略を取ったために、消費者から支持されずにスタートダッシュに失敗。その反省を大きく生かし、4Gでは十分なテストと端末の準備をそろえてからのサービス開始となりました。

 2013年末のカバレッジはテストサービスも含めまだ20都市以下ではあるものの、商用レベルの通信品質が提供されることで、TD-LTEは中国の消費者に受け入れられていくと思います。また端末はTD-LTEとFDD-LTEのデュアルモード対応品が中国メーカーからも多数登場する予定で、LTE端末をグローバルに展開するメーカーがこれから育っていくのではないでしょうか。

 そして3つ目が、アップルが「iPhone 5s」「iPhone 5c」のSIMフリー版を日本で発売したことです。事業者による端末販売が主流の日本で、まさかSIMフリー版が発売されるとは思いませんでした。グーグルのNexusシリーズや、独自に海外製品を日本向けに投入している例はあったものの、そのほとんどは特定の消費者をターゲットにしたものでした。しかし、日本で人気ナンバーワンのiPhoneがメーカーから直接SIMフリーで販売されることで、MVNO回線への注目、MVNO事業者の競争激化、SIMフリー端末需要の喚起など、これまでにない動きが起きそうです。

――今年購入した端末で一番のお気に入りは。

 レノボのスマートフォン「Lenovo K900」です。中国メーカー製とは思えぬ高級感のあるボディ、そしてIntelのCPUによって動きも滑らか。実用性が高いだけでなく、持つことの喜びを感じられる製品だと思います。グローバルでも通用する品質だけに中国国外の先進国でも発売してほしかったですね。

――今年よく使ったサービスやアプリは。

 サムスンの「GALAXY Note 3」と「GALAXY Gear」を組み合わせて使い始めてから、GALAXY Gearのカメラで撮影した写真をアルバムにするために「Tumblr」を本格的に使い始めました。またGALAXY Note 3の「スクラップブック」アプリはウェブページを手軽にクリッピングでき、元URLも保存できます。なので、スクラップブックで気になる情報を切り抜いて、後で読み直しています。また、保存する場合は「Evernote」か「Tumblr」へシェアすることで、スマートフォンでの情報収集がより楽になりました。

――2013年はモバイル業界にとってどんな1年だったと考えていますか。

 OSやアプリそのものの活用から、ソーシャルサービスの利用やスマートホームとの連携など、スマートフォンはIT製品から「生活の中心に位置する情報家電端末」という存在に変わり始めました。ネット上のコンテンツだけでなく、自動車や家電製品が高速回線で常時つながる時代を迎え、スマートフォンを中心にあらゆる業界の連携の兆しが見え始めた1年だったのではないでしょうか。通信系の展示会でも自動車、家電、医療、放送といった異業種からの出展が大きく目立っていました。

――2014年は「コレがくる」という端末やサービス、トレンドなどがあれば教えて下さい。

 高画質なビデオ配信やリッチなウェブコンテンツが増加し、スマートフォンの画面サイズはより大型化が進むと思います。5.5インチあたりが中心となり、ベゼルレスで細身の製品も増えるのではないでしょうか。大画面化によりマルチウィンドウやマルチタスクなど、PCライクな使い方も普及すると思います。

 また、スマートフォンコンパニオンとしてのスマートウォッチは多数の製品が登場するほか、スマートグラスやスマートリング、スマートペンダントなどの派生製品も多数出てくると思われます。これらのウェアラブルデバイスに加え、スマートフォンも中国メーカーが台頭する年となるのではないでしょうか。

山根康宏(やまね やすひろ)

香港在住の携帯電話研究家。1年の3分の1以上を世界の携帯電話市場の取材に費やしている。コレクターでもあり所有する海外メーカーの携帯電話は1200台を超える。

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