CNET Japan Live 2013

より良き価値体験は高機能に勝つ--オウンドメディア戦略

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 朝日インタラクティブが12月10日に開催した「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」では、トライベック・ストラテジーの取締役COO 後藤洋氏が「オウンドメディアによるグローバルブランド戦略 ~生活者×企業のコミュニケーションは"伝える"から"伝わる"へ~」との表題で講演し、マーケティングに新風を吹き込むオウンドメディアの活用術について解説した。

顧客との接点として、企業のウェブサイトは重要な存在

トライベック・ストラテジー株式会社 取締役COO 後藤洋氏

 オウンドメディア(Owned Media)とは基本的に、ウェブサイト、印刷物、店舗など、自社が保有する情報媒体(メディア)のことだ。この考え方では、他のメディアを、テレビ、新聞、雑誌の広告などからなる、ペイドメディア(Payed Media)、ソーシャルメディア、ブログ、新聞、雑誌の記事、テレビ番組などのアーンドメディア(Earned Media)というように分類し、この3つの連関を考慮しながら、オウンドメディアをうまく活用することで、効率的なマーケティングを実行しようとの意図がある。

 後藤氏は「オウンドメディアは、企業がコントロールできる、唯一のメディアであり、顧客の反応や顔が見える。また、生活者にとり、信頼できる情報源であり、企業と直接、コミュニケーションできるものとして、重要性が高まっている」と話す。経済産業省の「生活者購買動向調査(2010年)」によれば、生活者が製品・サービスを選択するときの「信頼できる情報源」として、企業のオフィシャルホームページが55.5%で2位。テレビの56.8%に次いでいるという。


 オウンドメディア、ペイドメディア、ソーシャルメディアの3つは、互いに影響し合っている。例えば、エンドユーザー、一般消費者は、テレビCMなどを見て、商品、サービスに関心を持つと、Googleなどで検索し、それらを提供している企業のウェブサイトを訪れ、気に入れば、ソーシャルメディアにより、その好感を伝え、拡散されていく、という流れがある。

 後藤氏は「ある自動車メーカーでは、好感度の高いテレビCMを放映しており、視聴者は、その企業のウェブサイトにアクセスしたものの、そのサイトのどこに何があるかわからず、結局、すぐにサイトから離れてしまった。一方、アディダスでは、テレビCMをきっかけに検索すると、自社サイトのトップペ-ジに、そのCMで示される情報をさらに詳しくしたコンテンツが置かれていた」と指摘、「オウンドメディアの強化により、企業のブランド価値を最大化することができる」と強調する。

「モノからコトへ」の変化、発想の転換が必要

 バブル経済が崩壊して20年、その間にはリーマンショックなどもあった。この20年で、さまざまなものが変化したが、マーケティングも大きく変わったという。「かつては、高い機能をもった製品が勝つのが当然だった。しかし、モノからコトへと、価値の見方が変化している」と、後藤氏は語る。数年前、ソニーのプレイステーション3と任天堂のWiiは、ゲーム機の覇を競い合った。以前であれば、グラフィック処理などの点で高性能である、プレイステーション3が先行するのが自然だったであろうが、実際には販売台数でWiiの圧勝だった。後藤氏は「企業には、脱"モノ"の発想、モノからコトへという視点が求めらられる」と主張する。この例では、Wiiが目指したのは、モノそのものの価値(高機能)ではなく、Wiiというゲーム機により、家族みんなが楽しむ。要するに"コト"の価値だったという。「モノからコトへ」の変化とは、機能をはじめとする、商品自体に内在する価値から、生活者が、商品を使うことで得られる、価値体験が重要になる潮流ということだ。

 インターネットの進化と普及で、もう一つの変化が始まっている。ウェブネイティブという動きだ。「誰もがいつでも、どこからでも情報を取得できる時代になった。Googleグラスのような、ウェアラブルコンピュータも登場するようになり、この流れは止められない」。だが、一方で、生活者は、情報量が多くなるなか、どれを選べばいいのか、どの情報が信頼できるか、どう操作すればいいのか、商品の違いが分かりづらい、といった状況に陥る。

 ここで重要になるのは「らしさ」であると、後藤氏は説明する。「『らしさ』とは何か。自分であったら、あるいは友人のことであったらと考えても、即答できるかといえば、結構難しい。企業も同様だ」。後藤氏は、東京都と、米国のワシントンDCのウェブサイトを比較、東京都のそれは、東京らしさがわからないが、ワシントンDCのサイトは「伝わりやすさを示しており、来訪する人々の気持ちになって表現している」と評価する。

 「『らしさ』とは、ブランドそのものであり、伝えるではなく、伝わるでなければならない」と後藤氏は語る。従来のカタログのようなメディアにより情報を「伝える」ということではなく、メディアから、企業の「らしさ」、ものつくりの姿勢とか思いが伝わるようにすることが必要だという。オウンドメディアを洗練すれば、それが実現するわけだ。後藤氏は「オウンドメディアは、企業にとって、重要なコンタクトポイントの一つである」と述べ、オウンドメディアを考えるには、伝えるから伝わるへ、重点を変えることが求められると強調した。

 オウンドメディアの進化をグローバルでみると、「4つのM」がキーワードになるという。(1)Meet First。直感的な好印象で記憶に残す。(2)Mega Navigation。ホットな瞬間を逃さず案内する。(3)Movie。よりリッチによりリアルにに体験してもらう。(4)Multi Entrance。どんなデバイス、どんな場所からでも入れる。このような発想への展開に際し、日本企業はグローバル企業の後塵を拝している。日本企業(ユーザビリティランキング上位100社)と、グローバル企業(インターブランド社ブランド力上位100社)を比較すると、たとえば、Movieに対応している日本企業は54社、グローバル企業は92社。Meet Firstに至っては、日本企業は5社、グローバル企業は42社といった状況だという。

 後藤氏は「企業側の視点で、あれもこれもというように、ウェブサイトに詰め込んでも、テキストやバナーだらけのウェブサイトになるだけ。そんなサイトなど、消費者は見飽きている。彼らにとって、必要な、重要な情報が、そこにあるのかどうか。そこを見極めると、生活者の視点で、新たな価値体験をもたらすことができる。そのためには、これだ、という単純な解はないが、方法論はある。自社の強さとともに、他社のことも知り、自社の『らしさ』、価値を再定義し、その伝え方を工夫する。まず、これらを見直し、5年、10年後のあるべき姿を導く」ことが重要であるとの見解を示した。

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