ゲーム実況はゲームの楽しみ方を変えるのか--その魅力と問題点

佐藤和也 (編集部)2013年11月08日 15時51分
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 11月1日、サイバーエージェント・ベンチャーズにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(十参)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。

 今回のテーマは「ゲーム実況者たちに訊く…」。数年前から盛り上がりを見せるゲームの実況動画をテーマに語られた。登壇したのは、動画配信サイトの実況プレイヤーとして知られるはるしげ氏、ガッチマン氏、ゲーム実況グループ「最終兵器俺達」の実況者:ヒラ氏。さらに、かねてからゲーム実況シーンを取材をしているニュースサイト「ねとらぼ」の記者である、アイティメディアの池谷勇人氏が加わって進行した。

左から、池谷勇人氏、はるしげ氏、黒川文雄氏、ガッチマン氏、実況者:ヒラ氏
左から、アイティメディアの池谷勇人氏、はるしげ氏、黒川氏、ガッチマン氏、実況者:ヒラ氏

 そもそも黒川氏が今回ゲーム実況をテーマにしようとしたのは、東京ゲームショウ2013におけるインディーズゲームコーナーで行われた、インディーズゲームとゲーム実況を融合させた「インディーズゲームフェス2013」の盛況ぶりを見てから。黒川氏も実際にステージに立ち、自らプレイするのではなくゲーム実況を見ることに、しかもその大半が女性であることに驚いたことがきっかけだという。このトークセッションでも、これまではあまり見られないような実況プレイヤーのファンと思われる女性が来場していた。

ゲーム実況の根底にある「みんなで楽しむこと」と問題点

 冒頭では池谷氏からゲームプレイの投稿動画やゲーム実況の成り立ち、現状に関する分析が説明された。現在のところ一個人の投稿だけではなく、プロモーションとしてメーカーが公式でゲーム実況を行ったり、ゲーム実況プレイヤーを使っての番組配信も増えてきている。またそれを公式の形で請け負うプロ実況プレイヤーも誕生。さらにメーカーが公認してプレイ動画の投稿を許可するタイトルも出てきている。そしてPS4やXbox Oneでは動画のシェアが標準機能として搭載されている。このことから、ニコニコ動画を中心にした狭いムーブメントだったのが、より広がっている状態にあると分析。

 では、ゲーム実況の楽しみとはなにか。その原点にあるのは「友達の家でファミコンを一緒に遊ぶこと」だと池谷氏は語る。必ずしも全員がずっと遊べるわけではなく、遊んでいるのを見ている状況があるわけだが、その他人のプレイを見ているのが面白かったり、ちゃちゃを入れることまで含めて楽しいということだ。これはゲームセンターでうまい人のプレイを見る、そのプレイヤーにギャラリーができるといったことにもあてはまる。さらに「ゲームセンターCX」などの番組が、ゲームプレイをエンターテイメント化できることを示しはじめる。そしてインフラの充実やウェブサービスとして動画サイトが普及し始めて、ゲーム実況が広まっていたとしている。

 そもそもゲームというのは、自ら遊んで楽しめるものだという考え方が強い。一方で池谷氏は吉田戦車氏のマンガのセリフ「やらずにすむゲームはないか?」を例えとして挙げ、ゲームの進化にともなう複雑化やボリュームの増大によって、ゲームは好きだけど遊ぶのが面倒になってきたと感じているユーザーの存在、そして自分で遊ぶだけがゲームの面白さではないということを示す。ゲームもプログラム単体では成立せず、ユーザーの操作が入って完成するものであり、なおかつ同じタイトルでも人によってプレイスタイルが異なるため、それだけでも見ていて参考になったり別の魅力を感じられると説明する。

 池谷氏は問題点についても触れた。まず、ゲームのプレイ動画やゲーム実況を見ることによって、ゲームの魅力を消費してしまう点。いわゆる「見ているだけで満足してしまう」「ネタバレになる」ことが該当し、購入意欲を失ってしまうことだ。

  • ゲーム実況動画の問題点

 さらに大きいこととして法的な問題が挙げられる。ゲームタイトルの映像や音楽、音声は各メーカーなど権利者の著作物であり、許可なく勝手にユーザーが動画をアップロードし、誰でも見られる状態にしてしまうのは著作権侵害に該当する。現状でもゲームメーカー側が黙認しているケースがほとんどだが、近年ではスクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストX」のように、一定のルール下において公認する動きも出ている。

 池谷氏はこの問題について、あくまで個人的な意見としながらも、全面禁止や部分的な許可などメーカー側がなんらかのアナウンスをしてほしいという。これはゲーム実況動画が上がることによって、一定のプロモーション効果があるが、それだけを享受して、なにか問題があった場合に責任を負うのはプレイヤー側となるのは、バランスが悪いというのが池谷氏の考え方だ。また、メーカー側が明確に禁止した動画がアップされ、その動画が炎上したこともあるという事例を挙げてユーザーによる自浄効果もあるとしている。

 もっとも前述のように、PS4やXbox Oneでは動画のシェアが標準機能として搭載されているということは、より動画投稿の裾野が広がることを容易に予想でき、だれもがゲーム実況も行える時代がくる。このとき、ユーザーとメーカーがお互いにどういう風につきあっていったらいいかを考えていきたいとした。

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