「あと30年は起業家でいたい」--スマポを楽天に売却した若きシリアルアントレプレナー - (page 2)

岩本有平 (編集部) 江口晋太朗2013年10月18日 15時12分

 スマポにも楽天にもすでに加盟店があります。加盟店側の判断に委ね、スマポはスマポ、楽天は楽天のサービスとして独立してやっていく予定です。加盟店としては、どちらか一方を選んでもらっても、両方選んでもらってもいい。いずれにしてもスポットライトとしては、来店検知プラットフォームを使ってもらえるため、全体のメリットがあると考えています。

 店舗経営者には、来店検知プラットフォームの話をするととても喜んでもらえます。そもそも、店舗からすれば、ポイントサービスの事業者についてあまり気にしていません。結果的に消費者に喜んでもらえるものならばどれでも良いと考えています。しかし、設備の二重投資だけはしたくないという意識を持っているため、スマポのインフラで多くのサービスが使えるようになるのは大歓迎なのです。

--競合になる恐れはないのでしょうか。サービスを楽天と御社のどちらかに寄せるということも視野に入れていますか。

 仮にどちらか一方に統合することになっても、それはそれで時間がかかります。まずは、進んでいるプロジェクトのまま進んでみようという話をしています。長期的には分かりませんが、まずは店舗側からしたら選択肢は増えますし、どれを導入しようか考えてみる機会になればと思います。

 現在、すでにいくつものポイントサービスがありますが、1人勝ちという現象は起きず、ある程度多様なものになっていくと思います。店舗経営者も、改めて自身が利用しているポイント制度のその加盟店で良いのか、それが全体利益につながっているかを見直す機会にもなります。消費者も、それぞれにポイントを選んで使っていますし、消費者に沿った仕組みを事業者側も店舗側も考えていくべきなのではないでしょうか。

--社名やサービス名の変更はありますか。

 社名やサービス名などは、当面は変わる予定はありません。オフィスについても、少し前に増床をしたところだったこともあり、当面は移動しない予定です。

--柴田さんは現在28歳、これまで立ち上げた4社中3社をバイアウトしていると聞きます。他の起業家と比べても早いペースで歩んでいると思いますが、スマポの事業を振り返ってどうお考えですか。

 買収のタイミングを含めて、「ある程度想定通り」というのが率直な感想です。スポットライト自体は、売却だけではなく上場も視野に入れていましたし、周囲からも「上場できる」と評価頂いていました。ですがサービスの観点からすると、自社だけで数千万ユーザーまで大きくするのは難しい。お金があればユーザーが集まるというわけでもありません。

 いろいろなシナリオ、選択肢がある中でもっとも有力なプランとタイミングが今回のケースだったと考えています。市場の立ち上がりや競合の動きなど含めて流れがあり、もちろん運もあったと思います。

--2012年には、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)から出資を受けています。この時期から提携店舗も増えてきた印象があります。

 ITVに出資頂いたおかげで、アパレル事業者とのネットワークも構築でき、小売店と話をする時に、「伊藤忠グループから応援してもらっている会社」ということで信頼関係を築きやすいものでもありました。また楽天とも良い相性だったと思います。

--買収金額を公開されていません。最近は買収額が10億円前後というニュースも増えてきましたが、それより大きい額という認識でいいでしょうか。

 金額は公表していません。確かに最近はそれくらいの金額で買収される会社も多いと聞きますが、それよりは大きな規模です。正当な評価を受けたと思っています。

--ここまでくるのに、一番辛かった時期はいつですか。リクルートやNTTドコモなど、大手も同様の事業に参入してきましたが、プレッシャーになったのでしょうか。

 特に辛かったのはローンチの時ですね。3人で創業して、エンジニア2人がデバイスからアプリまで作り、僕が営業や資金調達をしていました。

 追従するサービスや競合が現れることは想定していましたが、スマポをローンチしてから1年以上経過していたので、「思っていたよりは遅い」という感覚でした。実はスマポと競合が同じ店舗のフロア違いで導入されているという事例もあります。

 しかし加盟店からすれば、実際に店舗へ集客してくれればどの事業者でも関係ありません。実際、前述のケースでもスマポは競合よりも平均して約7倍の集客力があるという実績があります。集客装置として競合に負けているとは思っていません。

 社内では、競合を意識するのではなくユーザーと加盟店のことを考えてサービス開発をしろと常に言っています。どれだけユーザーに対して良質なお買い物体験を提供できるかこそがサービスの本質だと思っています。

--スマポと同様の仕組みを使ったサービスとして、米国ではスマポより先に「shopkick」がありました。以前に手掛けていたショッピッ!も海外で同様のサービスがあったと思います。ご自身の事業が“タイムマシン経営”的だとはお考えですか。

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