コンシューマーからプロデューサーになれ--グローバル時代に問われる個人と企業のあり方

 角川アスキー総合研究所は9月27日、第1回角川アスキー総合研究所シンポジウムを開催した。メディアやインフォメーション、エンターテインメントのこれからを語り尽くすと題した同シンポジウムには、MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏をはじめ、ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏、Rubyアソシエーション理事長のまつもとゆきひろ氏が登壇。それぞれの立場から、未来についてのプレゼンテーションがなされた。

 プレゼンテーションの後、角川アスキー総研主席研究員の遠藤諭氏がモデレーターとなり、会場からの質問を中心としたパネルディスカッションを繰り広げた。

ネット社会における企業のあり方の変化

 最初になされた質問は、ソーシャルを通じたコンテンツ作りや、グローバルな労働環境といったものが浸透する中、デジタルコンテンツを自社で作ることの意義はあるのかというもの。

 これに対して川上氏は、「歴史は繰り返される。あらゆる人が作れる時代だからこそ、共同作業による差別化が必要になる。そうした意味で、会社としてのあり方は今後も必要かもしれない。しかし、会社という枠組みはこれからのネット社会において構造が変わる可能性は大きい」と語った。

 伊藤氏は、そもそも企業が作るコンテンツは、現状多くないのではないかと指摘。「初音ミクなど、ユーザーが自然に作りだしてできた文化も多い。会社は、そうした文化を支えていくものであればよいのでは」(伊藤氏)

 まつもと氏は、ソフトウェア開発における例から、“流通網の形成”という役割を語る。「フリーソフトウェアなど、個人で作ることができるものはある。しかし、お金を集め、さらなる製品を作る手段として企業の役割はある。投資するチャネルとしての機能は大きい」(まつもと氏)

 個人と企業の役割に変化が出てきたと語ると同時に、これまで個人の活動のフィールドであったプラットホームに、企業が進出してきたことによって、大きな変化が現れたという。

 伊藤氏は、米国ではネットが一般的に普及したことによって、ネットとゲームとの融合が図られ、そこからテレビの利用が次第に増えてきているという。「ゲームエンジンを使って、ゲーマーが作るYouTube動画が20億ページビューも集まる例もある。実はその動画はMTVが宣伝費を出している。クリエーターは面白い動画を作ることでお金を得ることができ、視聴者もその動画を見て楽しむことができ、さらにテレビやゲームへの誘導が図られている。YouTubeを使い、ゲームやテレビといった別のプラットホームとの連携がとれる」(伊藤氏)

 川上氏は、ネットのプラットホームにプロが参加することで、プロの制作力の高さが再評価されているという。「ニコ動に、テレビの人やプロのアーティストが参加するようになってきた。そうした時、プロの制作力や実力(が現れているコンテンツ)はやはり人気がでる。テレビ制作者がもっとネットを理解し融合していくことで、新しいチャンスも生まれるし、テレビのあり方やネットの使い方も変わるのでは」と語る。

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