フィギュアメーカーの壽屋は、デフォルメキャラクターのフィギュアシリーズ「キューポッシュ」を4月から展開している。
2.3頭身のデフォルメキャラクターのフィギュアに、多数の可動カ所を設けているのが特徴。第1弾として4月に販売された「アイドルマスター」の天海春香は首、肩、肘、手首、腰、股、膝、足首の可動カ所があり、そのほかのキャラクターもほぼ同じぐらいの可動カ所を持つ。また、足裏のマグネットにより自立しやすいように工夫されている。
今後のラインアップとしては「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」の鹿目まどか、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」の高坂桐乃、「Fate/stay night」のセイバー、「遊戯王デュエルモンスターズ」のブラック・マジシャン・ガールを順次販売する。価格は3675円または3990円となっている。
人の形をした立体的な造形物であるフィギュアは、かつては少数生産によるガレージキットとして、自ら塗装して作り上げるなど特に趣味や嗜好性の強いものとされてきたが、着色技術の向上による塗装済み完成品の精度が高くなったことや量産する体制が整ったことによる販売価格の低下により、徐々に一般向けにも浸透。さらに近年では等身を低くデフォルメされたフィギュアが、その可愛らしさと手ごろな値段で入手できるとあって、ゲームやアニメのファンアイテムとして広く手に取りやすい環境と市場になっている。
製作の中心として担当した壽屋営業企画部の岡島正憲氏は「徐々に市場は広がっていますが、やはりユーザーさんの見る目も肥えてきているのか、等身の高いフィギュアについては多少高価でもこだわりを持って制作したもののほうが販売される傾向があります。とはいえ、ライトなファンの方には手を出しづらいですし、会社としても広く手にとってもらえる製品シリーズとして立ち上げたのがキューポッシュです」と語る。
デフォルメのフィギュアでも、アクションフィギュアのように可動部分を多くしたのには理由がある。非可動のフィギュアの場合、飾ってそのままになってしまうという意見が多く、それだけではない“遊び”の要素を入れたかったという。
「出かけた先で、デフォルメフィギュアとともに写真撮影をしてSNSにアップする例も非常に増えています。最近では作品の舞台となった場所に行く“聖地遠征”として出かける方も多い。家の中でポーズを変えたりして楽しむというのもありますが、出かけた先で、日常に溶け込ませるようにポーズを工夫して写真を撮るといった遊びも提供したかったというのはあります。『キューポッシュ』という名前も、かわいいの『キュート』と、ポケットのフランス語である『ポッシュ』を組み合わせた造語で、ポケットサイズのキュートなフィギュアとして、一緒に持っていて日常の空間に溶け込ませながら楽しんでほしいという思いからつけました」(岡島氏)
製作においては、自立することとポーズを取って見栄えをよくすることを考えた。一方で、さらに可動カ所が多くなると自然と手足を長くとらなくてはいけなくなるが、デフォルメキャラクターとしては短いほうがよく、デザインとしてのバランスをとるために、可動カ所を支える軸と呼ばれる部分をギリギリまで短くするなど、試行錯誤が繰り返されたという。
「細かいところですけど、高坂桐乃のように髪型がストレートロングの女の子だと、髪がつっかえてしまって頭が後ろに傾けられないという、試作してわかる問題点もありました」(岡島氏)
こういった製作過程での試行錯誤はよく聞く話とも言えるが、ほかにも、フィギュアの製作期間は企画から販売までおおよそ1年を要し、1年先を見越したタイトル人気やムーブメントの読みも、フィギュア販売における難しさとしてあるという。そしてこのキューポッシュのプロジェクトも、2012年初めから立ち上げられたのだが、見えない苦労点として岡島氏が挙げたのが、円相場における“円安”。企画立ち上げ当時の円相場はUSドルの為替レートで76円台になっていたほど、かなりの円高状態にあった。
「フィギュアの製造は基本的に中国で行われます。そうすると、円安になればなるほど相対的に製造コストが上がっていくんです。円相場の動向も注意しなくてはいけないのが、フィギュアメーカーのあまり表に見えない苦労点です。1年前は多少コストをかけた製品でも販売価格は抑えて提供することができたのですが、特にここ最近の急激な円安傾向は予測できず、すごく厳しいというのが偽らざる本音です」(岡島氏)
この先の製品のラインアップはコンテンツとしての強さもさることながら、キャラクターの広がりも重視。「やはりひとりだけではなく、キャラクターを並べたくなるものなので」(岡島氏)と話す。すでに「アイドルマスター」の星井美希を発売予定としているほか、初期ラインアップ作品の他キャラクターなどを展開していく。そのほか、女性向け作品の男性キャラクターの商品化も視野に入れつつ、あらゆる方面から意見を集めて検討し、模索しながらもフィギュア市場を広げていきたいとしている。
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