エンジニアやデザイナーに特化したクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」が3月21日に公開から1周年を迎えた。非対面のまま仕事のマッチングから業務の遂行、報酬の支払いまでを一括で行えるサービスで、3月時点で登録ユーザー数は2万2000人、企業数は5000社を超える。募集案件の総額も11億円を突破しており、9月末の決算で契約総額(実際に受発注が発生した案件総額)は10億円を超える見通しだという。
また、1月にはヤフーと提携し両社のクラウドソーシングサービスの連携を開始。3月にはラクスルと提携し発注したデザインをワンストップで印刷できるサービスを始めた。地域活性化にも注力しており、2012年3月には岐阜県との提携を発表。2013年2月には福島県の南相馬市で雇用創出支援プログラムも開始した。
クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は「最近では日本テレワーク協会(総務省所管)のセミナーなど行政主導のイベントでもクラウドソーシングの話題が挙がるようになっている」と語り、この1年で日本におけるクラウドソーシングの認知度が高まりつつあるとの見方を示す。
同社の成長に大きく寄与したのが、2012年12月に提供を開始した不特定多数のデザイナーやクリエイターに、コンペ形式でロゴやバナーなどを発注できる「クラウドワークスコンペ」だ。当初は、発注者のダンピング(不当廉売)行為につながる危険性があるとして提供を控えたが、サービスを運営していく上で、コンペ形式での受発注を求める企業やユーザーが多いことに気づいたという。
「プロジェクト形式だと実績が重視されるため、実績がない人が受注できるチャンスがあまりなかった。また、プロジェクト形式で失敗すると企業に迷惑がかかるため、少しでも自信がない人は気軽に応募できなかった。これがコンペ形式だと、自分なりのテイストで作ることができて、相手が気に入れば採用される。これから実力をつけたい人や、自分の実力を試したい人への敷居を下げることができた」(吉田氏)
コンペ形式の受発注が可能になったことでデザインの案件が増加しており、クラウドワークスに登録されている仕事のカテゴリもデザインが36%で最多だ。以下、ウェブ・モバイル開発が34%、ライティングが21%、タスクが9%となっている。すでに明光義塾(編集部注:明光義塾のフランチャイズ展開をする企業のコーポレートロゴ)やヤマハ、ヤフーなどがコンペ形式で会社やサービスのロゴデザインを募集しており、最近ではテレビ局が番組タイトル案を募集するなど、案件の幅は広がりを見せている。成約率もプロジェクト形式(開発)が約6割なのに対し、コンペ形式は約9割以上と高いという。
では、企業はどのような目的でコンペを利用するのか。同社取締役の佐々木翔平氏は「大企業はプロモーション効果よりも、純粋に低予算で質の高い案が多く集まることに期待している。たとえば、サービス名を変えることを告知していないので表に出せない状態だけれど、コンペを使ってロゴを集めたいという企業もある」と説明する。今後は、企業がより安全に個人と受発注できる機能なども提供する予定だ。
認知度が高まってきたとはいえ、クラウドソーシング=マイクロタスク(単純な作業)というイメージを持つ人も多いだろう。しかし、クラウドワークスが目指すのは、マイクロタスクとは一線を画す“Cloud Labor”(人材のオンライン化)だ。
「我々がインスパイアされているのは、他のクラウドソーシングというよりは、ライフネット生命のように既存の商流をオンラインに変えた会社。目指しているのはリアルの働く場所をオンライン化していくこと。ネット上にいながら、まるで毎日同じ職場にいるような感覚で働ける環境を作りたい。クラウドソーシングはあくまでもそのための手段の1つだと思っている」(吉田氏)
他のクラウドソーシングサービスでは、受注者がプラットフォームを介さずに発注者と直接やりとりする、いわゆる“中抜き”を禁止にしていることもあるが、クラウドワークスではオンライン上での受発注者のコミュニケーションを重視していることから、中抜きを禁止しないスタンスだ。今後は受発注者間でコミュニケーションできる機能も提供する予定だという。
「いまの時代、Facebookなどを使って(受発注者が)直接連絡を取る方法はいくらでもある。規制をしたり縛ることでサービスに人を留まらせる設計は古いと思っているので、クラウドワークスでは中抜きを止めない。これが他社とは大きく設計思想が違うところ。便利だからこそ使ってもらえるサービスにしたい」(吉田氏)
吉田氏はクラウドワークスのユーザーアンケートで「クライアントに感謝された」「新しい出会いがあった」といったポジティブな意見が圧倒的に多かったとするデータを紹介。「クラウドソーシングで提供できることは何かと考えると、やはり新しい出会いや働く喜びだと思う」と語り、2013年は“働くを通して人々に笑顔を”をスローガンに事業を展開していきたいとした。
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