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起業も売却も「サービス拡大のための戦略」--ソーシャルランチを手掛けた2人の起業家

平野武士 岩本有平 (編集部)2012年12月11日 08時00分
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 2011年8月に創業、KDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」の第1期生として「ソーシャルランチ」を成長させていたシンクランチ。Google入社から間もなくして起業の道を選んだ20代の2人は、1年4カ月というスピードで事業の売却を決断した。ここまでの道のりと、これからについて代表取締役社長の福山誠氏、代表取締役副社長の上村康太氏に聞いた。

--起業から非常に速いペースで1つの節目を迎えました。

上村:起業から1年4カ月ほどですが、今回の買収は突然やってきた話だったので自分達でも驚いています。


シンクランチ代表取締役社長の福山誠氏

福山:そうですね。2011年5月頃にテスト的にサービスを立ち上げていましたが、当時は私が個人でやっているような状況でした。

上村:法人化が2011年8月です。ちょうどその頃に∞ Laboの第1期生に採択されました。サービスを正式開始したのが2011年の10月。その後すぐにKDDIオープンイノベーションファンドなど3社から資金を調達しています。

--このタイミングでのバイアウト(事業売却)を考えていたのでしょうか。

上村:バイアウトは当初から強く意識していました。コンセプト勝負のサービスだったので、当初から「サービス開始から1年でどうにもならないようであればやめよう」と話していました。結果的にサービスは順調に育ってきました。

 資金調達をする際にも、あらかじめバイアウトの可能性について相談しており、あまり高いバリュエーション(企業価値)の設定は避けようと考えていました。

 最近よく「バイアウトか上場か」と聞かれていました。ですが、次の資金調達についてはあまり考えてなかったんです。だからこそ、当面の資金を稼ぐためにタイアップなどの商品を積極的に展開していました。

--Donutsはアプリの販売で業績が好調の様子ですね。

福山:(Donuts代表取締役の西村啓成氏は)私がディー・エヌ・エー(DeNA)でインターンをしていた時の先輩で、これまでも事業の相談をしていたんです。ある時、情報交換がてらランチをしていた際に、自分達の事業に興味があると聞きました。

 Donutsは、DeNA創業期の新卒らが立ち上げた会社で、もともとはハウツーサイトや勤怠管理などのシステムを提供してきました。現在はソーシャルゲームが好調ですが、このソーシャルゲームの「次」になる事業を探していたようです。「未来を作る仕事を一緒にやりたい」と言われました。


代表取締役副社長の上村康太氏

福山:私も「アライアンスをできればいいですね」と返したのですが、そこからはトントン拍子に話が進みました。

--シンクランチに出資する株主からすれば、もう少し事業の成長を見たかったのではないでしょうか。

上村:Donuts側の提案を受けて、約1カ月で株主に説明をして回りました。ポイントは「これからの事業をどうするか」という点でしたが、Donuts側はソーシャルランチ事業を大きくしたいという意向があったので、賛同はすぐに得られました。「大成功」と胸を張れるかというと遠いかも知れませんが、まずは成功、というところです。

--それでも提案から1カ月で行動に移すなど、スピード感はあります。

福山:種類株ではなく、普通株で資金調達していたことも、意思決定をスムーズにした1つの要因です。こういった資本政策をしっかり説明してもらえたこともよかったです。

--今後、ソーシャルランチは新たな体制で運営することになるのでしょうか。

福山:法人としてのシンクランチは、Donutsに株式を譲渡し、その後吸収合併されることになります。そこでソーシャルランチのチームを改めて作り、先方にも協力してもらってリソースを強化する計画です。

上村:福山はそのままサービスの責任者として、一方で私は、広報や人材などもう少し広い範囲をお手伝いもするかもしれません。ですがまだこれからですね。

--今回は買収という選択をしたわけですが、増資という選択はなかったのですか。

上村:単に生き延びるための増資は選択肢にありませんでした。シンクランチのメンバーは3人ですし、フリーランスの方に協力してもらって自由度を高くしていたので、単月黒字を達成することもそこまで困難ではありませんでした。

--ソーシャルランチのビジネスモデルは見えてきていましたか。

上村:サービスのコンセプトが目新しかったので、いろいろとメディアに取り上げてもらう一方、実際どういうビジネスをするか考えるのは難しかったです。

 人と人とを出会わせるわけですから、出会い系か、もしくは人材系のどちらかだろうとは考えていました。ですが出会い系をやるつもりはまったくありませんでした。

 ソーシャルランチではユーザーがペアを組む必要があり、またオファーも1日1件です。これはユーザーが爆発的に増加しないネックとなっていたものの、出会い系とならないよう、ストッパーにもなっていました。上場を目指すのであればそっちに振ってでも人を集めるという話もあるかも知れませんが、それはできませんでした。

 ですので、採用にビジネスの方向性を見出しつつありました。実際、企業オフィスでソーシャルランチをするタイアップ企画は非常に人気で、1つの企業に対して100人単位で参加申し込みがありました。

福山:タイアップも順調です。ただ、目指すビジネスモデルはユーザーへの課金だったりしたので、ここはこれからDonutsと一緒にやっていきます。

--お2人はGoogleの出身です。思い切ってGoogleを辞めて起業した一方で、1年4カ月で組織に戻ることになります。この点についてどうお考えでしょうか。

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