海外展開を推進する企業におけるIT部門のリーダーは、一般的なIT部門のリーダーが直面するよりも多くの問題に直面する。そして、そういった問題は必ずしもITに関係するとは限らない。本記事では、国際的な業務を担うITリーダーが直面する問題について解説する。
海外展開を推進する企業におけるIT部門のマネージャーや最高情報責任者(CIO)は、国内に存在する業務部門のみに責任を持つ人たちが抱える問題とは異なる、さまざまな技術的/組織的/人的な問題に直面する。しかし、こういった責任者が海外出張を前にして、国外での業務遂行方法についての研修を公式に受講することはほとんどない。しかも熟考しておくべき事項は数多くあるうえ、多くはテクノロジと間接的にしかかかわっていない。以下は、ITリーダーが国際的な業務を遂行する際に熟慮しておくべきポイントである。
国が異なれば文化的価値観や常識も異なってくる。筆者は数年前に、海外展開を推進する企業のCIO職に就いており、アジア各国への出張準備をしていた際にそのことを経験した。アジアのオフィスにいるほとんどの人々とは、米国本社でともに働く機会があった旧知の仲であるうえ、彼らは素晴らしい成功を収めたプロジェクトの一員でもあった。しかし、彼らの会社の組織図を見た時、女性マネージャーと女性エンジニアには、ふさわしい肩書きが与えられていないことに気付かされた。彼女らは組織図内で「女性」という肩書きしか与えられていなかったのだ。また一部の国では、筆者が女性であるという理由から肩書きにふさわしい扱い(当時は「バイスプレジデント」であった)を受けられないことにも気付かされた。このため本意ではなかったものの、達成しなければならない作業の前に文化的な障壁が立ちはだからないようにするために、男性の上級ITマネージャーを代理として現地に送り込むようにしたのだった。
地球の裏側で仕事をしてみるまで、本社で仕事をする方がどれほど楽なのかは分からないだろう。電子メールとインスタントメッセージが使えるといっても、連絡を取りたい時にその相手が自宅で寝ているという事実を変えることはできない。時差は、普段そういったものを意識していない人々にとって重要な要素となるはずだ。
海外オフィスとのやり取りが多い職場(特に米国企業との連携を密にしている職場)では時差を考慮し、その勤務時間を米国でのそれと一部オーバーラップさせるようにする傾向がある。筆者が欧州のオフィスを訪れた際の経験を述べると、勤務の開始を午前9時30分からにしているオフィスはそう珍しくなかった。というのも、時差が少ない米国東海岸にあるオフィスとのやり取りでも、相手の始業時刻は現地時間で早くてせいぜい午前6時30分であるため、どうしても昼近くになってしまうためだ。また、欧州のオフィスでは夜の7時や8時まで働いている人がいるのも珍しいことではない。このように勤務時間を調整し、米国の勤務時間にオーバーラップさせているわけだ。
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