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マーケターの仕事は「推測」から「知る」へ

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 デジタルマーケティングのイベント「ad:tech Tokyo 2012」が10月30日~31日に開催された。2日目のカンファレンスの中から、ROIトラックの「マーケティング活動成果の基準化と測定方法とは」のセッションについてお伝えする。

 及川直彦氏(電通コンサルティング ディレクター・代表取締役社長)がモデレータを務め、若林純氏(サントリーホールディングス株式会社 広報部デジタルコミュニケーション開発部 課長代理)、江端浩人氏(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 セントラルマーケティング本部長、事業構想大学院大学教授)、加藤通朗氏(株式会社インテージ マーケティングイノベーション本部)、吉永恵一氏(株式会社リクルート住まいカンパニー 住宅カンパニー SUUMOネット推進部)らが、事業推進の中でどのようなデータを指標とすべきか、どのようにデータを見るべきかという観点からディスカッションした。

 サントリーの若林氏は、主にブランドサイトの制作や運用を担当している立場から「ブランドサイトではECサイトのような効果測定・改善はやっておらず、指標もPVとUUしか見てないページもある。キャンペーンのように直接購買に結びつくものは、KPIを設定し測定している」と、社内状況を紹介。

 そして、短期のキャンペーンではなく、長期的なムーブメントにつながったマーケティングとしてハイボールの事例を説明した。若林氏によれば、低下傾向にあったウイスキーの好感度を上げるための一環として行っていたブロガー向けイベントの中から「ハイボール」というキーワードが浮かび上がった。そこでハイボールにフォーカスしたテレビCMを流しながら、イベントを継続し、そこから新聞・雑誌や情報番組に取り上げられることで、大きく認知度が上がっていったと、プロセスを分析。

 「結果論だが、最初にブロガーイベントを行っていたことに意味があった。CMやテレビ番組で知った人がハイボールを検索すると、ユーザーのブログが多く引っかかるという、マスで盛り上がる前にブログで盛り上がっているという状況が作れた」(若林氏)

 続いて江端氏が、以前コカ・コーラに在籍していた際に、数多くのキャンペーンを実施した経験から、キャンペーンの成果を大きくするためには「ウェブの最適化が重要。いかに早く知見を得て、それで改善していくのかを重視した」と発言。

 「例えばシール型キャンペーンなら、ローンチ時にユーザーの導線を複数用意し、効果を見て良い方を残すようにする。キャンペーンをやりながらどんどん変えていった」「コカ・コーラパークというブランドサイトを立ちあげ、そこで自社広告を複数出して反応を見て良い方を外部に出稿したり、複数の媒体をつかったキャンペーンでは広告ごとにユーザーの行動を測定したりして、テレビや雑誌、ウェブがどの行動に寄与したかを測定した」と、徹底的にデータを重視してきたという。

 さらに、マイクロソフトでは、ブランドや商品に対する誤解、ネガティブな意見をサポートやソーシャルメディアなどからいち早くつかみとり、サーチマーケティングやソーシャルメディア上での活動によって変えていくことをしているという。

 一方で、一般的に集められるマーケティングデータのみからでは見えない部分の情報をどうするか、という課題もある。その観点について、インテージの加藤氏は「シングルソースパネル」という取り組みを紹介した。

 シングルソースパネルとは、モニターを募り、その人のネットやリアルでの購買履歴、オンラインやオフライン、テレビ視聴などのあらゆる情報接触、さらにそれによる意識や態度の変化といったところまでをアンケートによって収集することで、立体的に分析する取り組みだ。

 「こういったデータを集積することでて、オンラインで情報を集めオフラインで購入したというようなフローの中で、分断されている部分を繋げて説明できるデータプラットフォームを構築した」という。

 さらに、Googleと共同で調査し、あるキャンペーンのディスプレイ広告に接触した人とそうでない人とで、キャンペーンの前後で商品の購買率がどのように変化したか、オンライン広告への接触によってブランド認知が変化したかといった、従来では測定しづらかった広告効果を明らかにすることができたという。

 リクルートの吉永氏は、ビッグデータを活用した未来予測モデルの構築と、それによるスピーディなPDCAについて語った。

 リクルートでは一部事業について「過去の振り返りから対策を打つのではなく、未来を予測してそれに対してどうするかということに切り替えている」という。

 具体的には、設定したKPIに対して、シミュレーションモデルから打ち手の結果を予測し、それを繰り返すことで最小限のコストで、目標に最大限近づけるかという考え方で取り組んでいるという。そのシミュレーションモデルの構築にビッグデータを利用している。

 つまり、テレビCMやリスティング、外部とのアライアンス、バナー、タイアップなど、様々なマーケティング手法に対して、どのくらいのコストをかけると、どのくらいのリターンがあるのか因果関係のモデルを作り上げたということだ。

 「住宅情報のスーモの場合は、賃貸か分譲か、ユーザーがPCかスマートフォンか、さらに地域や時期などのシナリオを設定することで、キャンペーンの反響を予測する。コストの上限が決まっている場合に、どの打ち手に、どのくらいコストを掛ければ、目標値に到達できるのかが事前にわかる」(吉永氏)

 とはいえ、有効なシミュレーションモデルを作るためには多くのデータが必要となり、また因果関係の推測も困難なため、実際にリクルート内でも導入できている事業部は少ないという。

 各パネリストからのプレゼンを受けて及川氏は「イノベーションだけではうまくいかない。データを使ってアクションを変えていかないと、イノベーションが活用できない」と、測定の重要さを改めて強調。江端氏も「測定は人間に例えれば、暑い、寒いという感覚にあたる。計測せずにキャンペーンをするのは、目をつぶって歩いているようなものだ」と同意した。

 さらに「これからのマーケターの仕事はGuess(推測)から、Know(知る)へと変わっていく。今までは消費者の行動を考えて『こうだろう』というふうに出していたが、今は反応がすぐに分かる。推測してる場合じゃない」と、考え方の転換が必要だとした。

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