日本のスタートアップが海外展開をする際、アジアであればまずシンガポールに拠点を置くというケースが少なくない。米国でのサービス展開や資金調達を目指すのなら、なんとなくシリコンバレーと相場が決まっている。
では、ヨーロッパに進出すると考えたとき、どこにオフィスを構えるのがよいのだろう。ヨーロッパのシリコンバレー「TechCity」に取り組むロンドンか、「シリコン・サンティエ」が形成されつつあるパリか、皆目見当がつかない。
10月上旬、東京では46年ぶりに世界銀行の年次総会が開かれ、世界各国からVIPが訪れていたが、その中にヨーロッパのルクセンブルクで、通信・メディア大臣を務めるフランソワ・ビルチェン氏の姿があった。同氏にルクセンブルクのICTやスタートアップ環境について聞いた。
大きく2つあります。1つは日本を理解するため。我々は常に国外から多くのをことを学ぼうとしています。もう1つは、我々ルクセンブルクがICT業界でどのような活動をしているかを知ってもらうためです。
ご承知のように、ルクセンブルクは非常に小さな国です。人口は約50万人で、面積は約3000平方キロメートルしかありません。しかし、19世紀の建国以来、常に国外の新境地を展望しながら国内の産業を振興してきました。
ヨーロッパで初めて民間の通信衛星事業を始めたのはルクセンブルクのSES Astraで、ヨーロッパ各地にメディアコンテンツを配信してきました。ルクセンブルクには120の銀行があり、あらゆる国々につながっています。国民は、英語のほか、ドイツ語やフランス語、ルクセンブルク語の4カ国語で教育を受けており、多言語に加えて複数の文化が交わる環境にあるため、ヨーロッパ各国向けに多言語でプロダクトを開発する必要があるゲーム産業にとっても都合がよいのです。
国の広さや人口規模の頃合いの良さから、大企業が新サービスを展開する際、本運用前のテストマーケティングの場所として使われることもしばしばです。フランスのモバイルキャリアであるTele2は、新サービスを展開するのに先立ってルクセンブルクでサービスを開始し、消費者の反応を見るようにしています。
スタートアップが拠点を選ぶ上で、2つのことが重要だと思います。1つは投資が受けられること、もう1つはそのスタートアップが展開しているビジネスがあるかということです。
ルクセンブルクに本社を置くSkypeが投資を受けたことに代表されるように、当地は多くの投資資金が集まる場所です(筆者注:Skypeはエストニアで創業したが、ルクセンブルクに本社を開設した。さらにその後、eBay、マイクロソフトに買収された)。これら民間の動きが、スタートアップにインセンティブをもたらしていると思います。
それに、いくつかのアクセラレータもあります。PwC(プライスウォーターハウス・クーパース)が展開しているアクセラレータ「PwC's Accelerator」が代表的です。政府の動きとしては、「Centre de Recherche Public(CRP)」という研究センターが、以前、国の南部の鉄工所があった地域を再開発し、「サイエンス・シティ(Cité des Sciences)」というエリアを作りました。そこにはルクセンブルク大学のほか、研究施設やスタートアップ向けのインキュベーション施設が開設される予定です。
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