日本の自治体も注目する中国版Twitter「weibo」の活用最前線 - (page 2)

イトウハルカ2012年07月25日 08時00分

ユーザー心理を突く効果的なキャンペーン

  • 2011年7月に実施されたモデルも着用!ゆかたプレゼントキャンペーン

 前述で山梨県のプレゼントキャンペーンに関する事例を紹介したが、日本企業でもweiboとキャンペーンを連動させる例は多い。中国人観光客向けナビゲーションサイト「JJ-street.com」は、2011年1月にweiboアカウントを開設し、現在約2万5000フォロワーを獲得している。

 「日本の文化」「季節性」「流行」の3つをうまく組み合わせたキャンペーンを仕掛け、リツイートによる拡散を成功させてきた。過去に実施したキャンペーンの中で、反響の大きかった2点を紹介しよう。

1.日本の浴衣プレゼント【RT5000】

 まず日本の浴衣に関する特集ページを立ち上げ、weiboにて紹介。そちらの投稿をリツイートしてくれた方に、特集ページでモデルが着用している浴衣を抽選でプレゼントするというキャンペーンだ。

 ポイントになったのはキャンペーン実施のタイミング。中国で販売されている日本ファッション誌の多くは6月に浴衣特集を掲載する。浴衣特集をひとしきり目にし、読者の浴衣に対する興味が一番強まるのが7月にキャンペーンを実施したことがよい結果をもたらした。

 日本のファッションに興味をもち、ネットネイティブでもある20代女性ユーザのコミュニティや掲示板で話題になり、短期間で5000リツイートを獲得した。

2. JJ-street.com開設3周年記念キャンペーン!iPod nano&サーモスの水筒をプレゼント 【RT1万5000】

 こちらはJJがweiboアカウントを開設して以来、最も反響の大きいキャンペーンとなった。開設3周年に関する投稿をリツイートしてくれた方にiPod nanoを、JJ内で一番お気に入の記事をweibo上でコメント投稿するという記事投票に協力してくれた方にサーモスの水筒を、それぞれ抽選で3名ずつプレゼントするというもの。これらは計1万5000リツイートを得た。

 このキャンペーンのポイントは、マーケティングによる抽選商品の選択である。3周年記念ということで広告を打つなど大々的なプロモーションを行ったため通常のキャンペーンよりリーチが高かったこともあるが、圧倒的な商品力によるところが大きい。

 アップルブランドをもつことは1つのステイタスであるし、日本の電化製品も依然として人気で、特に「魔法瓶の水筒」はリアルのショッピングでもネット通販でもとにかく人気がある。抽選商品の選択が功を奏したのだ。

 とはいえ「抽選3名」は、プレゼントキャンペーンとして食いつくほどの数字ではない。なぜ超倍率の高いキャンペーンにユーザーは群がるのか? それは中国weiboユーザーの特性に起因すると考えられる。

【weiboユーザーの特性】(出典:iResearch Japan)
  • 広告の影響を受けやすい。
  • ブランドロイヤリティが高い。
  • 生活観はポジティブで前向き。
  • 旺盛な知識欲で自己表現に長ける。
  • 何よりも自分を第一優先する傾向が強い。

 ここから、weiboユーザーには「自分を表現したい!」というポジティブな人が多く、参加型のキャンペーンを好む傾向にあることが読み取れる。注目すべきは「自身がプレゼントを目的にキャンペーンに参加しているわけではない」ということだ。「いかにお得な情報を、自分発信で他者に展開できるか」がリツイートするポイントになっているのだ。

 結果、プレゼント数が抽選3名でも、他者に共有する価値のある投稿内容であれば、リツイートしてくれる可能性が高いのだ。

weiboでの成功のあかし=フォロワーの数ではない

 ここまで、地方自治体の事例や日本企業のキャンペーン成功事例などについて説明してきたが、勘違いしないでいただきたいのが、weiboでの成功の証=フォロワー数、ではないということだ。

 以前はショッピングサイト「タオバオ」で、フォロワーが盛んに売買されていたし、予算をつぎ込めばある程度のフォロワーは集まる。しかし大切なのは、フォロワー数ではなく、発信した情報がリツイートされ、より多くの人に拡散されること。つまりリツイートの数だ。

 理想は、投稿する記事が毎回一定数以上のリツイート数を確保すること。大きなキャンペーンやニュースを投稿したときには、期待通りのリツイート数を得て、広告費用を打たなくても情報がきちんと拡散することだ。

 日本でweiboを使った中国向けPRをする上で重要なのは、ある程度数が集まったらフォロワー数に対する執着を捨てることだ。ただし、全く知られていなければ元も子もないので、開設当初のPRや一定数のフォロワーの獲得は必要だ。

 安定期に入ったこともあり、中国のweiboユーザーには以前のような「weibo熱」はない。SNS機能が次々とリリースされる中、ユーザーは常に新しいコミュニケーションサービスを求めている。

 現在中国では、weibo上で企業に興味を示すユーザーに対し、限定でオフイベントに招待するなどオンラインからオフラインへつなげる動きが流行している。単体のウェブサービスとしてではなく、ほかのあらゆるウェブ/リアルのサービスとうまくマッチングさせ、連動させることに注目が集まっている。

 中国以上に「昨日の発明はすでに古い」と考える国はないかもしれない。サービス提供サイドの人間は常に進化し続けなければならない。中国向けPRをする上で3億人のユーザーをもつweiboを利用しない手はない。要は通り一辺倒ではなく、「それを使って、どう新しくしていくか」だ。キャンペーンでもいい。リアルイベントでもいい。weiboの拡散性をうまく利用し、weiboと「何か」を連動させることが重要なポイントになるのだ。

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