有限会社油忠は4月20日、日本酒の定期購入サービス「SAKELIFE」をオープンした。
SAKELIFEでは、月額3000円と5000円の2つのコースを設定し、毎月同社が選んだ日本酒1本(基本的には5000円で一升瓶1本か四合瓶2本。3000円では四合瓶1本。日本酒の価格によりサイズは変動する)を定期的に送付する。
加えて、隔月でお猪口や徳利、燗つけ器といった酒器を送付するほか、毎週1回メールマガジンを発行し、体に負担をかけない飲み方や、日本酒に関わる各種の情報を配信する。またTwitterアカウントなどを通じたコミュニケーションも行っていく。
日本酒の送付先住所は毎月変更可能なほか、ギフト用のラッピングにも対応する。「毎月一升瓶1本も消費できない」というユーザーが、ある月は友人へのプレゼントに日本酒を送る、といった使い方も可能だ。支払いは現在PayPalのみだが、今後は他の方法も検討いていく予定。
油忠は、室町時代から続く千葉県の老舗酒屋。その25代目となる高橋正典氏と、油忠 SAKELIFE事業部の生駒龍史氏がこのサービスの仕掛け人だ。
2人はもともと大学時代からの友人。家業を継ぐことが決まり、大学卒業後も大学時代を過ごした東京にとどまって経営に関わる勉強をしていた高橋氏。歴史ある酒屋を今後どうしていくのか模索する中で、当然ECを提供することも選択肢の1つとして考えたこともあったが、自身としてはあまり気が進まなかったのだという。
「子供の頃から見てきたが、家業はお客の好みや体調などをマンツーマンで聞き、その中からおすすめの日本酒を紹介するという地元に根を張った商売だった。スーパーに商品が並ぶのと同じようなECには“人の魅力”が感じられなかった」(高橋氏)
そんな中、卒業後独立してECサイトを運営していた生駒氏から定期購入の仕組みを知ったという。「『あなた×お酒をもっと楽しく』というコンセプトを打ち出したいと思っていた。定期購入なら買って終わりでなく、街の酒屋の延長線上として日本酒を提案したり、交流できると考えた」と振り返る高橋氏。生駒氏も「ECは言ってみればいかに安く仕入れて高く売るかだけ。買った向こう側の生活まで提供したいと思った。また、ECをやってきて在庫を持つことの怖さも知っている。定期購入であれば過剰な在庫を持つ必要もないので、これならいけると思った」と語る。
1月に2人でサービスの構想を立て、その後間もなくクラウドファンディングサービスの「CAMPFIRE」にて支援者を獲得。それを元手に、各種のイベントでSAKELIFEが選んだ日本酒を提供するようなタイアップ企画も進め、認知度を少しずつ高めてきた。
「もともとは(可処分所得の多い)40代以上を狙っていたが、やっぱりイベントなどで『日本酒は飲めなかったけど…』と話していた20〜30代といった同年代の人たちがおいしさを分かってくれたら嬉しい」(生駒氏)。「お酒がメインのイベントでなく、いろんなイベントと日本酒の組み合わせはもともとのコンセプトを最大化した姿だと思っている」(高橋氏)。今後は都内のカフェなどで、SAKELIFEがセレクトした日本酒を提供するといった試みも進める。
日本酒の消費量は年々減少しており、現在では1995年の半分程度の量になっているという。SAKELIFEでは、20〜30代にアプローチをすることにより、ひいては日本酒の市場回復に貢献したいという老舗酒屋の若き当主の思いが込められている。「日本酒の技術保護、流通拡大のためにもまずは若い人に伝えていきたい」(高橋氏)。将来的にはSAKELIFE事業部を法人化し、同社で酒類販売業免許の小売り免許取得を進めることで、EC機能を独立させることも検討する。
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