KDDIウェブコミュニケーションズは4月10日、2011年12月よりベータ版として提供していたクラウド電話APIプラットフォーム「boundio」を正式に提供開始すると発表した。
boundioは050番号による電話発信やアップロードした音声データの再生機能、テキストを音声ファイルに変換できる音声合成機能などの機能をネット経由で提供する架電APIサービス。使用料金は月額1575円と別途ポイントによる通信料がかかる仕組みになっており、架電先が固定電話の場合1分15ポイント、携帯電話の場合1分25ポイントと変動する。またポイントは1000ポイント1000円換算で、クレジットカードによる事前購入が必要だ。
ウェブサービス上で電話番号による個人認証をする場合など、boundioの提供するAPIをサービス内に実装すれば、コールセンターなどを経由せずにシステム側からユーザーに電話をかけて認証することができる。
4月10日に行われた発表会の冒頭、KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役の山瀬明宏氏がboundioのコンセプトや市場性について解説。「(競合は)国内では大手が2社。彼らはエンタープライズをターゲットに自動応答システムなどをSIerを通じてソリューション提供している。一方でboundioは個人のエンジニアでもAPIを叩けば使える。私たちがターゲットにしているのは中小零細やスタートアップしたばかりの事業者」と既存プレーヤーとの違いを明確にした。
ターゲットが違えば大きく変わってくるのが価格だ。既存事業者は初期費用で十数万、通信料で1分60円かかる一方、boundioは初期費用無料、月額費用1575円と通信料が1分15円から利用が可能。「資本力の小さい中小零細、スタートアップを支援する目的でこの価格設定にした」(山瀬氏)と、価格面でも利用し易いプラットフォームであることを強調した。
市場性については米最大手Twilioの例を引き合いに「海外では5年程前から事業者が存在している。Twilioは3300万米ドルの資金調達をしていることからも分かる通り、市場からも注目されている」とグローバルマーケットにおける架電APIの可能性について説明。「彼らの開発コミュニティには3年で10万人のデベロッパーが登録している」(山瀬氏)
同氏は今年度中に売上1億円と開発者登録数3000人を目指すとした。「99%の小さな事業者が元気にならないとこれからの日本はだめじゃないですか。この市場に関しては5年も日本は米国に遅れている。今から巻き返したい」(山瀬氏)
続いてKDDIウェブコミュニケーションズSMB事業本部 事業本部長の高畑哲平氏が具体的なboundioの利用方法や、導入が決まっているソフトクリエイトとカヤックのソリューションを紹介した。
オープンプラットフォームのSNS「OpenPNE」を使ったデモでは、ユーザー対してのメッセージで「@」を1つ付けると相手へのメッセージ(メンション)、2つ付けるとメール送信、3つ付けるとboundioのAPIを通じて相手に電話がかかり、書き込んだメッセージが合成音声で再生された。
提供される機能については「シンプルに3つだけ。電話をかける、音声ファイルを再生する、書いたテキストを合成音声で再生する。boundioなら数行のコードだけでシステムから電話をかけることができる」(高畑氏)と説明する。
さらにイベントでは新たに提供される機能や改良点も3点紹介された。1点めは電話転送機能。システム側からかかってきた番号にかけ直す際、設定した番号に転送する、という仕組み。2点めはテキストの読み上げエンジン「VOICETEXT」導入による合成音声の品質向上。3点めは音声合成ファイルの作成をプログラム経由で行うためのAPI提供だ。
高畑氏はこれまでのベータテスト中の出来事として「デベロッパーに紹介すると面白いことを考えてくれる。アイデアだけで新しいことができてしまう」とプラットフォームの可能性に言及、「電話ってみんなもってるじゃないですか。子供からお年寄りまで。そのターゲットにシステムから接続ができるようになる。その可能性を見つけて欲しい」と締めくくった。
またイベントの最後には前半に紹介されていたこの市場における最大手、Twilioとの協業に基本合意したという発表もあった。3月末に基本合意を締結したが、その詳細についてはまだコメントできる段階にないという。今後、Twilioの日本市場における展開は両社の協力によって進められることになるという。
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