都内をはじめとして、全国で立ち上がりつつあるコワーキングスペース。それぞれ特色のあるスペースやコミュニティを作るために日々模索している。そうした中、nomadが運営する東京・西麻布の「NOMAD NEW'S BASE(NOMAD)」、パーティーカンパニーが運営する渋谷の「partyground」、ツクルバが運営する渋谷の「co-ba」の3つコワーキングスペースが3月27日、相互利用プロジェクト「TOKYO NOMAD NETWORK(TNN)」を展開すると発表した。
TNNでは、3つのスペースを自由に利用できる仕組みを用意することで、利用者の流動性を活性化させる。「共通フリーアドレス会員」では、NOMADではA会員(一般会員)と同様のワークスペース、partygroundはオープン席を利用可能。co-baについては、5月オープン予定の「co-ba library」を利用できる。同日より受付を開始しており、利用開始は4月2日から(co-baを除く)。価格は初期費用が3万円、月額利用料が3万円。利用に法人、個人は問わないが、会員登録時にFacebookアカウントが必須となるため、法人でも担当者名は必要となる。すでにいずれかのコワーキングスペースに入居している場合、1日1500円でドロップイン(1日利用)が可能。
今回の取り組みはどのように始まったのか? nomad代表取締役の小笠原治氏は、「『ノマドワーク』や『コワーキング』といった言葉にこだわらず、もっと人が流動する仕掛けがほしかった。もともとnomadを作る前に家入さん(パーティカンパニー代表取締役社長の家入一真氏)に話をもちかけていた」と説明する。その後CAMPFIREを通じて家入氏とツクルバ代表取締役CEOの村上浩輝氏、ツクルバ代表取締役CCO(Chief Creative Officer)の中村真広氏が出会い、それぞれのスペースの入居者が行き来できるような仕組みを考えた。
コワーキングスペースでは、互いに違った価値観や仕事、属性を持つ人たちが利用している。それこそが共創を生む仕組みになっているのだが、1つの場所、コミュニティだけでは新しい刺激もなく流動性が滞る可能性がある。
そうした課題を解決する方法として、ユーザーが1つの場所にとどまるのではなく、いくつもの場所を移動し、違った属性の人たちが乗り入れすることで各スペースをさらに活性化しようというのが今回の提携の目的だ。「それぞれの場所を行き来しつつ、スペースに応じた機能をうまく利用することで、新しい人とのつながりや共創が生まれればと考えている」(小笠原氏)。
ひとことでコワーキングスペースとは言っても、スペースにはそれぞれ特徴がある。それぞれのオーナーに、スペースやコミュニティの状況を聞いてみた。
NOMADの入居者は、ITなどのスタートアップが中心となる。スペースでイベントやセミナー、投資家らとのマッチングの場なども提供することで、起業家の支援も積極的に行う。「フリーランスの人たちやスタートアップはある意味で玉石混交。だからこそ、たくさん集まり互いに磨き上げることでいいサービスやプロダクトが出てくる」(小笠原氏)。起業といった目的を共有したコミュニティを作り、切磋琢磨することが大事だと語る。
「昔からやっていた居候モデルをいまも引き継いでいる形(編集部注:小笠原氏はさくらインターネットの創業者の1人。関西圏でスタートアップの支援なども行っていた)。学歴など関係なく集まり、オフィスを間借りして面白いものを一晩かけて作ってきたという原体験に近い。つねに上を見上げる人たちを応援していきたい」(小笠原氏)
家入氏のpartygroundは、同氏の手がけるカフェ「ON THE CORNER」の2階にある。同じビルには、ON THE CORNERの事務所やギャラリースペースなどもある。当初は家入氏が出資するスタートアップが中心となって入居していたが、現在ではアパレルやデザイン、アートなどに関わる人たちが多く集まる。
「事務所として借りたスペースをうまく活用して、人が集まるところを作ったのがきっかけ。その後、ON THE CORNERや渋谷というカルチャーに近い人たちが自然と集まってきた」(家入氏)
家入氏は、partygroundを含めたこれまでの自身の活動について、「遊び場を作る感覚」と説明する。「partygroundだけじゃなく、ウェブサービスもカフェも作る。そこでみんなが一緒に遊び、自分自身も加わって交流することで新しい何かが生まれる。そしてまた変化し続けながら新たな場所を作っていきたい。いろんな色を持った人たちが混ざると、よりいろんなものが生まれる」(家入氏)
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