ここ数年、「シード期」といわれるごく初期の起業家を支援するインキュベーターやシードアクセラレーターがいくつも立ち上がっている。彼らの多くは数百万円程度のシードマネーを提供するほか、イベントやメンタリングなどさまざまなプログラムを通じて事業に必要な人的ネットワークや知識を提供している。
また節目を設けて、投資家向けのプレゼンテーションイベント――多くは「デモデイ」と呼ばれる――を開催し、次の投資ラウンドなどを探す足がかりとしている。
2月後半にMOVIDA JAPANとサムライインキュベートのデモデイが開催された。それぞれ参加しているスタートアップやサービスの傾向など特色がある。参加各社のラインナップを眺めることは、次にやってくるトレンドを知る上でよい材料となるだろう。本稿では2回に渡ってその概要をお伝えする。
2月24日に開催されたサムライインキュベートDemo Dayに参加したスタートアップは未公開のサービスも含めて14社。代表取締役CEOの榊原健太郎氏によると、参加起業家は、インターン経験のある大学3年生や4年生が3割、IT系サービス企業で2~3年の経験者が4割程度で、その多くが20代だという。2011年9月に設立したSamurai Fund3号ではすでに15社に投資。毎月5社から7社のペースで支援先が増えているという。
これまでの実績としては、2009年6月設立の1号ファンド「Samurai Fund1号」で9社中8社が増資を実施し、1社がエグジット。2011年1月設立の2号ファンドでは10社中4社が増資済み。2社が増資確定で1社についても主幹事が確定している。また3号ファンドも2社が増資済みだという。
今回デモデイに参加した14社のサービスは次のとおり。
アピテムオフはスマートフォンや携帯電話などのモバイル向けアプリ素材を流通させる販売サイト。CtoC型ではなく、ビジョナリーファンが査定して買い取り、サイト上で販売する方式を採用。購入を希望するユーザーはPayPalなどでの決済後にサイト上から素材をダウンロードできるようになる。
everevoはソーシャルサービスと連携するイベント管理ツール。イベントを開催したいユーザーはイベントの作成、参加ユーザーの管理、コミュニケーションから決済管理までイベント開催に必要な参加者管理がひと通りできるようになっている。また、FacebookやTwitter、mixiなどのソーシャルアカウントでの利用が前提になっているので、イベント開催者、参加者双方がそれぞれのソーシャルグラフに対して情報を共有できる。
女性をターゲットにした保険に関する情報サービス。ソーシャルアカウントを使ったユーザー同士のQ&Aでその場で質問をしたり、過去のQ&Aから同じような内容の情報を閲覧できる。プロのファイナンシャルプランナーが運営しており、実際に保険の相談を受けたいユーザーに対してファイナンシャルプランナーのマッチングやセミナーなどを実施している。
近くにいるユーザーとのコミュニケーションを提供するiPhoneアプリ。位置情報から近隣にいる利用ユーザーを検索、「出会いたい」「お手伝いを探している」などコミュニケーションを求めるニーズがあらかじめカテゴリわけされているので、その内容に合わせてコンタクトが取れるようになっている。サービス内でのソーシャルグラフも形成できるので、いわゆるオンライン上でのご近所付き合いといった世界観を作ることができる。
SynapseはCtoCのコンテンツマーケットプレイス。人が持つ情報やノウハウなどを管理、販売、共有できる。販売したいユーザーはテキストや動画、音声などの形式で作成されたコンテンツを用意して価格を設定し、サイト上に登録。ソーシャルメディアなどを使って友人に共有する。購入側はコンテンツを確認して購入したい場合はPayPal等で決済する。決済代金の20%をモバキッズ側に支払う仕組みになっている。
自宅などで管理しきれない書籍などの物理的な場所の問題を解決してくれる書籍預かりサービス。一般的な貸し倉庫サービスと異なり、実際の書籍をウェブ上でデータ管理し、自宅にいながら書庫をオンラインで閲覧できる。段ボール1箱からの預かりが可能で、本を1冊ずつ登録する本棚プランでは、オンライン上にバーチャルな本棚が表示され、1冊毎の出庫も可能。
未公開サービス。ソーシャルメディアでの友人同士で今聞いている音楽を共有するスマートフォンアプリケーション。聞いている曲をフックにコミュニケーションしたり新しい曲の発見をすることができる。主に女性をターゲットに女子大生や読者モデルなどの囲い込みを考えている。2012年3月公開予定。
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