企業の生き残り策を経費削減だけに求めるなかれ--鍵は「カスタマー」にあり

John McKee (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子2011年09月20日 07時45分

 厳しい経済状況が続くなか、経費を削減することで生き残りを図ろうとする企業の数は相変わらず多い。しかし企業幹部向けのリーダーシップコーチである筆者は、そういった対策が長期的な成功への足かせとなっていると考えている。本記事ではその理由について説明する。

 優れた社員が会社を辞めるのは、その社員の価値を会社が認めていないということの強い表れである。その一方で、イエスマンや、社内政治に長けた社員が昇進するのは、おかしな価値感に根ざした企業文化が社内にはびこっている証と言える。ここで重要な尺度となるのが、どれだけカスタマーに重点を置いているかという点である。

 米国の景気後退が始まったのは、公式には2007年12月とされている。西欧諸国のなかでその影響を受けていない国はほとんどないと言ってもよいだろう。その結果、国家や企業が窮地に陥ったり、破綻したというニュースを毎日のように目にすることになっている。このような状況を鑑みれば、ビジネスが以前よりも困難になっているというのは誰の目から見ても明らかだろう。

 では、企業のリーダーのほとんどが、自社に長期的な成功をもたらうえで欠かすことのできない意志決定を下せていないのはなぜなのだろうか?

 企業のリーダーであれば誰でも、自社の成長と持続的な成功を促すために万策を講じようとするのは当たり前のことではないだろうか?とは言うものの、カスタマーのことをないがしろにするような意志決定を下したリーダーの話題は、毎週のように耳に入ってきている。

 過去の事例を見ても、これはシンプルな選択だということが分かる。カスタマーサービスを強化するという道を選んで成長するか、その道を選ばずに倒産するかのどちらかなのだ。

ケーススタディ

 筆者の知人に、フロリダを拠点とする大手ケーブル会社の幹部がいる。彼はカスタマーサービスの責任者なのだが、筆者がこれまでに出会ったなかで最もカスタマーを重視している人物でもある(カスタマーサービスの責任者が皆、カスタマーを重視しているわけではない)。ケーブル業界はサービスの悪さで有名であるが、彼の手腕は非常に素晴らしく、これまでのカスタマー調査においてもそのサービスは高く評価されている。

 彼にとって、カスタマーサービスとは単なる仕事ではなく、心の底から情熱を注ぐ対象となっているのである。実際に彼はZappos.com(靴のオンライン販売で有名となった企業)の創業者が執筆した書籍を購入し、チームの管理者全員に読むよう勧めたうえで、カスタマーを大切にするにはどうすればよいかについて、社外でミーティングを開くようなことも行っている。このミーティングには筆者も招待されたことがあり、その時に彼は以下のような主張を行っていた。

 カスタマーとは社外にいる人間だけを指す言葉ではない。カスタマーは社内にもいるのである。君たち、あるいは君たちのチームにきちんとした仕事を行って欲しいと考えている人は皆、カスタマーなのだ。つまり、社内にいるすべてのカスタマーに対しても、しっかり対応することが大事であるというわけだ。

 彼のような人物が、カスタマーに影響を与えるような立場の責任者として我が国に数多くいたのであれば、米国は今ほど悪い状況に陥っていなかっただろう。

 ところが残念なことに、こういったことを理解している幹部はほとんどいない。あるいはさらに悪いことに、理解はしているものの、そのための投資を惜しんでいるとしか思えない。

 こういった幹部らは、「経費の削減による成功」を目指そうとしている。その結果、素晴らしい企業を破滅へと追い込んでしまっているわけだ。

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