“使われるウェブサービス”を作るときに考えるべき5つのヒント--スタートアップ企業が語る

 ウェブサービスは星の数ほど存在するが、注目を集め、盛んに利用されているものは限られている。幅広い選択肢がある中で、使われるサービスと使われないサービスの分岐点はどこにあるのだろうか。

 8月29日に開催されたイベント「Startup Dating(スタートアップ・デイティング)」では、そのヒントを見つけるべく、「あの有名サービスは何を考えて作られているのか」をテーマにしたパネルディスカッションが繰り広げられた。

 パネルディスカッションに参加したのはkamado代表取締役の川崎裕一氏、クックパッド技術部長の井原正博氏、ロケットスタート代表取締役の古川健介氏の3人。モデレーターはユーザーローカル製品企画・開発担当の閑歳孝子氏が務めた。登壇者らのやりとりから見えてきた「使われているウェブサービスの設計に必要な要素」をここで紹介したい。

ユーザーローカル製品企画・開発担当の閑歳孝子氏
ユーザーローカル製品企画・開発担当の閑歳孝子氏

「どんな人が使うのか?」を具体的に考えて作る

 閑歳氏はまず、最初の質問で各社がサービスを開発した背景についてパネリストに質問した。物々交換サービス「Livlis」を手掛けるkamadoの川崎氏は、そのきっかけが「妻にあった」と話す。

 「息子の子供服をほかの人にあげたいのだけれど、自分のまわりにいるママ友達だと成立しづらい。交換する同様のサービスはゴマンとあるのに、交換が成り立たない」――川崎氏はこんな妻との会話から、Livlisの構想を思い付いたのだという。「万人に受けるサービスというのは難しい。ただ、“この人が使っている”ということが想像できるサービスであることが重要」(川崎氏)と説明。具体的にどんなユーザーが利用するかを想定してサービスを提供することが大切だとした。

いかなるサービスでも、“売ること”を考える

 クックパッドの提供するレシピ情報共有サイト「クックパッド」は、有料会員にならないと人気順でのソートができないという、少し変わった課金のアプローチを取っている。井原氏はその理由について「売るものがなかったから(笑)」と回答する。ただ、その後に彼が指摘した「かならず無料ではなく、10円でもお金を取ることを考えるべき」というアドバイスは今だからこそ大切な考え方に聞こえる。

 基本機能を無料で提供してオプションを有料で提供する「フリーミアム」のような考え方が一般的となりつつある中、1つ1つの機能を追加する際に無料にするか有料にするかを悩むことも多い。しかし、たとえ無料にするとしても、そのコストや価格設定を考え、売れるサービスとして設計することは重要だ。

思想からサービスを開発する

 ハウツー共有サービスの「nanapi」をはじめとして、数多くのウェブサービスをリリースしてきたロケットスタートの古川氏。同氏は、サービス運営のモチベーション維持には「思想からサービスをつくることが大切」と語る。

 思想がなく、“一発ネタ”感覚でサービスを作った場合、たとえ一瞬流行したとしてもすぐに下火になってしまう。「こういうことを実現したい」というアプローチでサービスを提供すれば、モチベーションを保ち続けることができるというのが古川氏の理論だ。

社会的な問題を解決する

 思想ありきでサービスを作ることが、モチベーション維持の秘訣と語る古川氏に対して、井原氏は「問題解決」を意識することこそが重要だと語る。

 たとえばサービスを利用するユーザーにインタビューをしてみると「自分が考えていたこととまったく違う話(問題)が出てくる」(井原氏)ことがある。それを解決したいという想いこそが、次に進む原動力となっているそうだ。

 また井原氏は「社会には解決すべき問題が沢山ある」と指摘。大企業と違って身軽なスタートアップこそが、こういった社会的な問題に対応しやすい。同氏は会場の起業家や起業を志す人たちに向かって「ベンチャーがやるべきことは問題解決。ここにいるみなさんに課せられている」と奮起を促した。

左からクックパッド技術部長の井原正博氏、ロケットスタート代表取締役の古川健介氏、kamado代表取締役の川崎裕一氏
左からクックパッド技術部長の井原正博氏、ロケットスタート代表取締役の古川健介氏、kamado代表取締役の川崎裕一氏

どこまで削ってサービスが成り立つかを考える

 ここまで述べられた話を踏まえてサービスを公開したとして、リニューアルを迎えることになった際は、何を指標にすべきなのだろうか?

 これについて、3者が口をそろえて指摘したのが「どこまで機能をシンプルにするか」という点だった。

 川崎氏はLivlisのスマートフォン版をリリースするにあたり、「どこまで(機能を)削ってLivlisなのか」と考えたそうだ。物々交換というサービスの性質上、出品が重要な役割を果たすため「10秒以内で出品できるかどうかを突き詰めている。残念ながらまだ5分かかりますが……」と語った。

 古川氏はもっと極端な判断をするという。サービスをリニューアルする際、どれだけ削れるかを考え、トップページもなくそうと思ったこともあるのだそうだ。ロゴを削ったり、トップからの導線を考え直したり、サイトを作る上で”当然”と考えるものをまず疑うことからはじめるという。結果として「やっぱりロゴは必要だったり」(古川氏)見えてくるものがあったと語った。

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