CNN DigitalのジェネラルマネージャーのKC Estenson氏は、「それは『アグリゲータ』ではない。『キュレータ』だ」という。
呼び名はともかく、「iPad」用ニュース閲覧アプリを提供する「Zite」のCNNによる買収は、最近筆者が取り上げたNews360のようなニュース閲覧アプリを扱っている企業にとっては、力強く、かつ明るい兆候だ。しかしCNNはニュース記事を生み出すことを業務としており、そのコンテンツを最初に作り出すのにかかる費用に見合う額を、記事上の広告インプレッションから得ている。一方、ニュース自動収集サービスへのトラフィックの料金は、大幅に安くなるだろう(特に現在のZiteは、ほかのニュース制作者の記事に独自の広告を掲載していない)。Ziteのページを制作するための費用も安い。言い換えれば、それは全く別のビジネスだ。ビジネスの連携は行われるのだろうか。
Estenson氏によれば、Ziteは「ニュースを大量に読みたい気分ではない時のため」にあり、「日曜の朝に読む雑誌」のようなものだという。ユーザーはCNN.comのサイトを1日に何度もチェックすることが多いと同氏は言う。Ziteはそういった形では使われないだろう。しかしそれでも構わないという。Estenson氏は「われわれのデジタルポートフォリオは多様化した」としている。読者とCNNの両方にとって、Ziteは別の種類のメディアなのである。
ただしEstenson氏は、CNNがこのアグリゲーション(あるいはキュレーション)という流れに乗る必要があったことは明らかだったと述べている。ニュースを読む方法は今では多様化している。CNNのような大手ニュースブランドはいまでも読者を集めるが、一方でより小規模なニュースソースや、代替的なニュースソースも読者を増やしている。その理由は、ソーシャルレコメンデーションや、高性能化しつつあるアプリケーション(Ziteなど)を利用して、人々が自分の好きなものを見つけるようになったためだ。
Ziteの買収は、現在のところ戦略的な動きだと明らかにとらえられている。CNNがこのような種類の買収を行うのは初めてだが、同社はそこからすぐに利益を搾り取るつもりは全くない。同サービスには広告が掲載されず、今後も掲載の予定がなく、「あからさまな利益化」の様子も全くない。8名の従業員からなるZiteは、カリフォルニア州で独立して事業を続ける予定であり、その経営陣や従業員に変更はない。Estenson氏は、Ziteが「ベンチャーキャピタルの圧力を受けずに」技術開発を行えるよう、離れたところから支援する予定だ。同氏は、ビジネスプランは後からついてくるだろうと述べている。
また、CNNはZiteの技術チームから学ぶことができるのも明らかだ。Ziteの最高技術責任者(CTO)のMike Klaas氏は筆者に、Ziteがユーザー向けにどうやってニュース記事を選ぶかを簡単に解説してくれた。Ziteでは、ニュース記事の「速度」(Twitterのエコシステムにいる人にとっては「トレンド」にあたる)だけでなく、レコメンデーションのソーシャルな「近さ」を利用している。ユーザー向けの記事は、人々のリツイートや再投稿に基づき選定されているが、それらの人々は、ソーシャルネットワーク上で近い関係にあるというだけでなく、公開しているソーシャルネットワーク上での活動から判断して関心が似ている人々となっている。CNNはZiteを独立した事業して存続させる予定ではあるが、同社はその技術の一部をCNNのメインサイトに取り入れようとするだろうと筆者は予想している。
ちなみに、Ziteは強力なiPadアプリであり、インストールすることをおすすめする。筆者はユーザーの1人として、CNNがZiteを存続させることを望んでおり、その技術チームをCNNに単に吸収するだけにならないよう期待している。ただ、それがこの買収の最終結果だとしても、驚きはしないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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