IBMは米国時間8月17日、人間の脳の認識力、認知力、行動力を模倣する新しい世代の実験的なプロセッサを発表した。これにより、人間の脳の働きに似た機能を備えたコンピュータは、これまでよりかなり実現に近づいた。
今回の発表の3年近く前に、IBMおよび同社と提携する大学数校が米国防高等研究計画局(DARPA)から助成を受けて、人間の脳の認知力や認識力、知覚、相互作用、行動能力を再現し、大きさとエネルギー消費の面で脳の効率の良さを模倣する研究に取りかかった。
この助成は、DARPAによる「Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics(SyNAPSE)」プロジェクトの第2フェーズの一環だった。IBMによると、目標は「複数の感覚様相からの複雑な情報を瞬時に分析するだけでなく、環境との相互作用の中で動的に自らの配線もつなぎ換えるシステム、それも人間の脳並みに小型で消費電力も少ないシステムを開発すること」だという。
IBM ResearchのプロジェクトリーダーであるDharmendra Modha氏によれば、DARPAによる助成と、IBMの6つの研究所、5つの大学の研究者による多大な取り組みの初めての具体的な結果を、ようやく世界に示す準備ができたという。
「今話している私の手の中にあるのは、ニューロンのような計算方式と、シナプスのようなメモリ、軸索のようなコミュニケーションを組み合わせた、認識力を持つ初めてのコンピューティングコアだ・・・これは実際にシリコンチップに組み込まれて機能しており、単なる『PowerPoint』を使った紹介ではない」とModha氏は17日に、CNETとの電話インタビューで語った。
新チップ開発の2年前、Modha氏のチームは、大脳皮質と皮質下の部位の結合をすべて調べ上げるためのアルゴリズム「BlueMatter」の開発を終えた。このマッピングは、脳が情報をやりとりして処理する仕組みを真に理解するのに不可欠なステップだ、とModha氏は言う。
新しいチップがどういう用途に利用されるかを述べるのは時期尚早だが、Modha氏は、コンピューティングで最も厄介な問題のいくつかに取り組む可能性があると示唆した。たとえば金融市場をきわめて正確かつ注意深く分析できるプログラム、世界の水供給を監視し、波の高さや潮汐、水温などに関する情報を追跡して報告し、津波警報も発するプログラム、スーパーマーケットで野菜や果物が腐ったときに従業員が瞬時に察知できるプログラムなどをModha氏は予想している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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