台湾のスマートフォンメーカーHTCは米国時間8月10日、ヘッドフォンメーカーBeats Electronicsの株式の過半数を3億ドルで取得することを発表した。BeatsはラッパーのDr. Dreとの提携で最もよく知られている。情報筋が米CNETのGreg Sandoval記者に伝えたところでは、取得金額は最終的に5億ドル以上に相当する可能性があるという。
HTCの最高経営責任者(CEO)のPeter Chou氏とBeats会長のJimmy Iovine氏は、Beatsのサウンド技術をHTC製のモバイルデバイスに組み込むという機会をアピールした。HTCは常に顧客のニーズに訴えることに抜け目のない企業だが、Beatとの提携については的外れといえるかもしれない。何よりも、顧客が携帯電話を購入する際に着目するのは、価格やデザイン、ユーザーインターフェースであり、サウンド機能は重視されないものだ。実際に、かつて携帯電話「RAZR」が人気を博した頃から、オーディオ品質は重要なセールスポイントとされてこなかった。
GartnerのアナリストであるHugues de la Vergne氏は、次のように話している。「モバイルデバイスのオーディオ品質を改良する必要はあるが、その部分を大衆市場に向けた中心的な差別化要因とすることは困難といえるだろう。ほとんどの消費者はオーディオよりもディスプレイの品質のほうに興味がある」
しかし、Iovine氏は、同社を立ち上げた当時、批評家は高性能ヘッドフォンには最低限の市場機会しか存在しないと語り、Beatsには取り合わなかったと指摘した。
Iovine氏は翌11日の電話会議で、「Beatsを起業したとき、誰もがヘッドフォンは日用品だと言っていた」と述べた。「われわれが聞いたのは、今の新しい世代はサウンドを気にしていないということだった」(Iovine氏)
Iovine氏は、懐疑的な目で見ていた人たちが誤っていたことを証明したと言い、同じ品質をモバイルの世界に持ち込もうと今は考えていると述べる。同氏は、複数の端末ベンダーが自社端末の音質と機器のアップグレードを今後3カ月以内に実施する予定だと語り、HTCがその最初になるだろうと付け加えた。
一方、Chou氏は、今回の提携について、HTCにとって自社の差別化に向けた好機と捉えていることを述べた。Hewlett-PackardはBeatsを自社のPCや「TouchPad」タブレットに確かに組み込んでいるが、HTCはBeats株式の過半数を取得することにより、より緊密な独自の提携ができるようになった。
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