スマホの普及と広告市場の拡大、3年前から「確信していた」--ノボット小林氏

 medibaが子会社化を発表して、スタートアップとして1つの節目を迎えたノボット。創業3年、実質的にはビジネスが動き出してからわずか1年ほどで今回のディールを成功させた同社代表取締役社長の小林清剛氏は何を考え、どう動いたのか。バイアウトまでの道のりと起業家観を聞いた。

--まずはひとつの節目を迎えました。おめでとうございます。周囲の反応はいかがでしたか?

 ありがとうございます。予想以上に反響が大きくて驚いていますが、素直に嬉しいです。

--起業からわずか3年と、ものすごいスピード感でしたね。ここまでの経緯を教えていただけますか?

 会社の設立が2009年の4月。当時は私ともう1人での創業でした。最初に支援をしてくれたサムライインキュベートに参加頂いたのが同じ年の9月。サービスの開発が終わり、実質的にビジネスを始めたのは2010年の4月頃ですね。2010年3月にはngi group、2010年10月にはジャフコとニッセイキャピタルから資金調達を実施しました。

--私が最初にお会いしたのは1年半ほど前ですが、その際は社員4人くらいでした。

 そうですね。シェアオフィスの一角で、狭かったですよね(笑)。2010年3月当時、営業は私とインターンの2人だけでした。初めて売上らしい売上があがったのが2010年の7月で10万円ほど。販売方針を変更してから1年で考えられないぐらい成長しましたけどね。

--ものすごいスピードで駆け抜けて、次の調達に進まずバイアウトを選択した理由は?

 アジアを中心に海外での展開を強く望んでいるんですが、まずスピード感が違いすぎる。やはり大切なのは資本で、海外では毎日のように報道されてますが、調達する額が大きい。今回の売却額はいくつか報道されてるようですが、それと同じようなレベルの額を彼らは調達してしまう。なのでパートナーと一緒に歩むことを選びました。

--どうして今のタイミングだったのですか?まだ伸びているのであれば今後評価額も上がるかもしれないとは考えなかったんでしょうか?

 当然ですが、今でも配信のボリュームは増えてます。月間のインプレッションは現在23億ほどですが、毎月2億のペースで伸びてます。だからこそ“今だ”と思ったのです。この伸びてるタイミングを逃せば、相手は話をしてくれなくなる。

--もちろんまずはmedibaとの新しいステップが始まるわけですが、今後の展開についてはどのように考えていますか?

 アジアを強く意識しています。まだ社名などは言えませんが、韓国や香港での展開も進んでいます。medibaでの事業を推進しながら、もっと先についてはやはり海外での事業を視野にいれて考えてます。

ノボット代表取締役社長の小林清剛氏 ノボット代表取締役社長の小林清剛氏

--少し話題を変えます。小林さんの起業家観を教えてください。まずそもそもどうして起業したんでしょうか?

 ノボットは3回目の起業なんですが、やっぱり事業を作るのが楽しくて好きなんです。新規性とどれだけ多くの人に良い影響を与えるかみたいなところが基準です。女の子が彼氏に料理をつくって喜んでもらえると嬉しい、みたいなものかと(笑)

--起業してからさまざまなステップがあって今回の子会社化があると思うのですが、このストーリーはどうやって描いたんですか?

 シンプルに言うと、2年後3年後にどういう未来になるかをできるだけ具体的にイメージしました。そのときに「確実にこうなっているだろう」と自分が思うものがあったのですが、それがスマートフォンの普及だったわけです。で、それが増えたら、広告も増えることは分かっていたので。

 確実に大きくなる市場が見えていて、それを熱く語っていると人や資金が集まってきた、という感じです。(起業当時、数年後こうなることを)確信してましたから。

--スマートフォンが過去のモバイル端末のように一部のユーザーにしか使われないものになるか、今のように大きく成長するか、どうやって予想しました?これは運ですか?

 いや、運ではないです。業界情報を見たらわかることで、さまざまな数値から、キャリアはコンテンツで稼がないと今の規模を維持できない状態になっていくだろうと。端末メーカーも同様です。しかもAndroidに関しては、各社すでに水面下で取り組みを開始していたので、これは「来る」と。

--なるほど。たまに勝負師の勘とか市場の雰囲気とか持ち出す人もいますが、そういった「第六感」みたいなものではなく、地道な情報収集がすべてだと。

 僕はそこがすごく大事だと思っています。まったく新しい価値観を生み出すようなサービスであれば、もしかしたら調査というのは難しいのかもしれません。しかし、広告のようにすでにある市場の変化やシェアの奪い合い――僕は「殴り合い」と言ってますけど――こういう殴り合いビジネスはマクロ経済が重要かと思っています。これは(最初の事業の)コーヒーで痛感しました(編集部注:小林氏は最初の起業でコーヒーの輸入販売などを手がけていた)。

--最後に2つほど。今、久々に起業のトレンドというか、「新しいことを始めよう」という雰囲気を取材などを通して実感するのですが、そういう「雰囲気」をどう感じますか?

 そもそもシリコンバレーだって多産多死。僕は今の日本は世界でも最もスタートアップしやすい環境だと思っています。出口戦略がないのも事実ですが、それは始めた人間の責任だろうと思っています。

--最後に、周囲でサービスのロンーチを頑張ってる起業家仲間に向けて一言。

 起業家は最高に楽しい! ってことですかね(笑)

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