リクルートが2月に公開したソーシャルロケーションサービス「RecoCheck」。foursquareの「foursquare」やFacebookの「スポット」、ライブドアの「ロケタッチ」など競合サービスが乱立する中、後発でスタートしたサービスだが、“リクルートならでは”という特色もなく、ユーザーの注目度も決して高いものではなかった。
しかし6月22日、自社サービス間での連携を発表。「ホットペッパーグルメ」や「ホットペッパービューティー」「ポンパレ」などに掲載された5万5000件のクーポン情報、「じゃらん」の口コミなどをRecoCheck上で閲覧できるようになった。今後は他社サービスとの連携も視野に入れているという。この連携で、いよいよサービスの方向性が見えてきた。
「RecoCheckは、もともとリクルート内のメディア間での事業連携を前提にしていたサービス。しかしスピード感を考慮して、まずは箱だけ用意する形でリリースした」――リクルート 全社WEB戦略室 戦略・投資リサーチグループの高橋和彦氏はRecoCheckの提供に至る流れをこう語る。
リクルートでは、スマートフォン向けの戦略として、自社で持つスポット情報やクーポンのデータなど、さまざまなデータを「ロケーションプラットフォーム」と呼ぶ位置情報をベースにしたサービスプラットフォーム上で組み合わせて提供する計画があった。そのモデルケースとして最初にリリースされたのがRecoCheckだという。
しかし、他サービスとの連携機能を実装する以前にリリースしたRecoCheckは、競合サービスのようにゲーム性を重視したわけでもなければ、チェックインすることによるユーザーメリットを大きく打ち出したわけでもなかった。サービスの発表時の記者会見で自社のサービスとの連携を示唆したものの、具体的な話はまったく出てこなかった。その結果、「(このままサービスをスケールさせることが)難しいという話になっていた」(高橋氏)という。
リクルートは、各事業の独立性が高い。そのことがサービスの横連携を難しくしていたのだと高橋氏は説明する。そして今回、それを解決しようとできたのが、同氏の所属する全社WEB戦略室だという。「今までリクルート全社でネットビジネスをどうするかということを考える部署がなかった。全社WEB戦略室は現在R&D(研究開発)部門という立ち位置だが、ここで横の連携を実現していく」(高橋氏)。
すでに公開されているホットペッパーグルメのAPIや非公開の自社APIを利用して実現した今回のサービス連携。これにより、「サービスの目的がよりシャープになったと思う。位置情報をもとにゲームを楽しむサービスはライバルでない。立ち位置の違いがはっきりした」(リクルート 全社WEB戦略室 アライアンスグループ兼戦略・投資リサーチグループの石飛夏海氏)。今後は、「少額の割引だが、15分で行ける位置にある店舗で今すぐ使える」といったように、ロケーションと割引を軸に、ユーザーの潜在ニーズを補足していくという。
実際、サービスを連携して1週間弱だが、ユーザーの利用動向に変化が見えてきているという。「もともとのページビュー(PV)は少なかった」(高橋氏)ものの、PVは5倍、1人あたりのクーポンへのアクセス数は、ホットペッパーグルメなど各事業部門が展開する単体のサービスに比べて3倍程度になっているという。
「O2O(Online to Offline:オンラインからオフライン在庫を喚起すること)とよく言われるが、位置情報だけでそれを成功したサービスというものは少ない。クーポンと組み合わせて潜在ニーズを掘り起こすといったように、位置情報はサービスの価値を大きくする燃料、油のような存在になる」(高橋氏)
リクルートでは今後、RecoCheckについて、カテゴリごとに店舗を閲覧できるよう検索機能を強化するほか、地図の表示なども工夫。店舗の見つけやすさに主眼を置いたバージョンアップを進めるという。
気になるRecoCheckの収益化については、まだまだ未定。あくまでR&Dの状態だという。「まずユーザーを獲得することを優先しているが、リクルートは“ユーザーとのマッチング”にサービスの重きを置いている。カスタマーを増やして広告を取ったり、企業のキャンペーンを積極的に行ったりするわけではない」(高橋氏)
また将来的には、ロケーションプラットフォームに外部のデータを乗せたり、プラットフォーム自体を外部に提供したりすることを検討している。
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