UPDATE スマートフォンやタブレット向けARMプロセッサの分野で急成長中のNVIDIAは、同社のクアッドコアのモバイルプロセッサプロジェクト「Kal-El」によって実現可能な「Glowball」というデモゲームを公開した。
デモでは、内部が光るボールが盤の上を転がる。「ダイナミックライトニング」という効果によって、ボールの輪郭の影が、積み上げられた樽、怪しいびっくり箱、垂れ下がる敷物、不気味なピエロの顔に映る。ゲームの物理エンジンが、タブレットの加速度センサに接続され、回転するボール、垂れ下がる敷物、ひっくり返る樽の動きを決定する。
NVIDIAはビデオで、「これはすべてリアルタイムにシミュレーションされている。定義済みのアニメーションではない」と述べている。動きはほとんどの場合スムーズだが、ユーザーがタブレットを傾けてからゲームがそれに対応するまでの間にどれだけの遅れがあるかは明らかではない。
同社は、現在の代表的な「Android」タブレットであるMotorolaの「XOOM」とサムスンの「GALAXY Tab 10.1」に搭載されるデュアルコア「Tegra 2」によって、Texas Instruments(TI)やQualcommといった従来のモバイルチップメーカーと比べて特定分野を開拓してきた。Kal-ElはTegra 2の5倍の性能を誇るとNVIDIAは主張しているが、この主張がどのような測定基準に基づくのかははっきりしていない。12コアのGPUを搭載する点も、同プロジェクトの重要な要素となっている。
ビデオの中で、ボタンがクリックされるとゲームは4つあるKal-Elのコアのうちの2つだけを使用するようになる。「これでシミュレーションは2つのコアだけで実行されており、プレイできる状態ではなくなる。フレームレートが非常に低い」とNVIDIAは述べる。
「これはプリプロダクションのチップである」と同社は付け加えている。「製品版はこれよりも25~30%高速になる予定だ」(NVIDIA)
それはありがたいことだ。デモゲームは、ボールが静かに転がっているだけの場合はスムーズだが、びっくり箱に衝突して動きが速くなるとその動作についていくのがかなり難しいようだった。
モバイルプロセッサは成長著しい市場だが、課題も抱えている。スマートフォンユーザーは、スムーズなグラフィックスを伴う派手なゲーム、デスクトップアプリケーションに引けを取らない速さのウェブアプリケーション、軽くタッチするだけで直ちに反応するタッチスクリーンといった高い性能を求めている。しかし、たった1~2時間でバッテリを消耗してしまうような消費電力の高いチップは望んでいない。
複数のコアを搭載することと、数は少ないがより高速なコアを搭載することの間のトレードオフについてはまだ明確になっていない。チップメーカーらは、より高いクロック速度でプロセッサを稼働する場合の消費電力の限界に達したことから、チップが1クロックで実行する処理を増やしたり、複数のコアに処理を分散したりすることによってこれに対処するようになった。
しかし、マルチコア向けのプログラミングは必ずしも容易ではない。Glowballのようなゲームの物理エンジンは、命令の並列実行によってマルチコアを利用することができるが、多くのコンピューティング処理は、命令の単一のシーケンスをチップがどれだけ高速に実行できるかに依存する。
NVIDIAのモバイル分野における勢いは、少なくとも短期的にはAndroidタブレットの成功にかかっている。同社の最高経営責任者であるJen-Hsun Huang氏は、3年以内にAndroidタブレットの販売台数が「iPad」を超えると予測している。またHuang氏は、Androidタブレットが立ち上げ当初に振るわなかった理由として、小売とマーケティング、価格面を挙げた。
同社の顧客は、Kal-Elを搭載する端末の製造を2011年の年末商戦に向けて8月に開始する予定だと、NVIDIAは米CNETに述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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